文化遺産としての赤塚不二夫論 今明かされる赤塚ワールドの全貌

赤塚不二夫を文化遺産として遺すべく、赤塚ワールド全般について論及したブログです。主著「赤塚不二夫大先生を読む」ほか多数。

興奮度満点の赤塚版西遊記『そんごくん』

2020-03-29 22:32:00 | 第2章

中国三大奇書の一つ『西遊記』をパロディー化し、少年漫画の王道に根差した、血湧き肉踊るアドベンチャー活劇へと昇華したのが、『おた助くん』同様、学年誌を発表の舞台とし、二年間に渡り連載された『そんごくん』(「小学四年生」64年4月号〜65年3月号他)である。

赤塚自身、新しいキャラクター作りやストーリー作りを存分に楽しんだというだけあり、幾度かに渡り、別冊付録として纏められるなど、初期赤塚ギャグの中でも抜群の人気を博した一本だ。

中国の山奥に住む天才発明家の息子・そんごくんが、仲間達と一緒に繰り広げる冒険譚で、ご多分に漏れず、本作でもスターシステムを採用。沙悟浄にはデカパンを、三蔵法師にはバカ息子・一郎を、猪八戒には、三蔵法師の非常食として連れて来られた単なるブタといった面々をその仲間役として起用するなど、赤塚ファンにはお馴染みの人気者が活躍する、キャラクター漫画としての一面を備えた楽しい作品でもある。

そんごくんは、唯一宝のありかを知る一郎のお守りを兼ねて、勇気を試す武者修行の為、如意棒と、飲むと不思議な力を発揮するという千頭を片手に、デカパン、ブタとともに、宝を求め、東へ西への冒険の旅へと出掛ける。

しかし、その道中には、彼らの行く手を阻もうとする海賊や魑魅魍魎たる魔物達が蠢いていた。

次々と厄難が襲い掛かる旅路の中、苦闘を強いられる彼らは無事、宝を探し出し、帰還することが出来るのか……⁉

古典文学の様式上の理念に基づいた勧善懲悪をテーマ化。様々な謎を解き明かし、出会いや戦いを経験する中、一人の少年が、人間として大きく成長してゆくストーリーラインと、興奮度満点のファンタジックな冒険を包括したその世界観は、現在のロールプレイングゲームの要素を多分に含んでおり、巨大な海賊船や変幻自在なモンスターをドラマのサブジェクトとして捉えたダイナミックな演出の数々においても、当時の読者である子供達のハートを熱く魅了したであろうことは想像に難くなく、今見ても実にスリリングだ。

その後、『そんごくん』は、80年代末期から90年代初頭の赤塚アニメリバイバルを引き金にして起きた赤塚名作漫画復興の気運を反映し、1992年、「デラックスボンボン」誌上にて、前編後編と二話に渡り、再連載される。

宝のありかを求めて旅へと向かった、そんごくん、デカパン、一郎、ブタの一行が、無人島で宝を見付け出すまでを描いたダイジェスト版で、ゲストキャラとして、六つ子、イヤミ、ハタ坊、ア太郎、デコッ八、ニャロメ、レレレのおじさん、ウナギイヌなどの人気スターが続々と登場。現代的にアレンジされたハイテンポなストーリー展開も秀逸で、奇想天外なアクションに貫かれた賑やかな作品世界に更なる色彩を加えた。

因みに、初代『そんごくん』では、『うさぎとかめ』や『かちかち山』、『てんぐのかくれみの』、『すずめのおやど』、『一寸法師』といったお伽噺の世界をパロディー化した「おとぎの国のそんごくん」なるアナザーシリーズも存在し、その肩の力を抜いた不覊の高いディレクションには、どれもおもちゃ箱をひっくり返したようなポップな魅力が満載だ。


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