湯治庵の日々

癌・頑強・爺・自律・自由・自在

手術ドキュメントⅡ- 4 . 5

2007年11月23日 | ガン手術・ドキュメント


手術ドキュメントⅡ-4

しかし直感的にこれは治療可能と判断した。実際のアプローチは後で複雑なsimulationを必要とすることになるのだが、とにかくこの時点で治療可能と判断してMさんにそう報告した。
 念のために11月5日にPET検査を行い、この2箇所に他には明らかな異常のないことを確認し(図5)手術のためのsimulationを始めた。


スタッフが誰も居なくなったCT装置の前に座り、マウスを操作しながら、2次元の数十枚の画像から、頭の中で病巣と門脈、肝動脈、肝静脈、下大静脈との位置関係を3次元で構築し、そこまでの到達経路を組み立てていく。

いくつかの選択肢を組み合わせながら、最終的には左側臥位として肝臓を後腹膜から脱転し、下大静脈の前方の右2/3で肝臓を遊離させて2箇所の病巣に後面から迫る経路とした。
そのためには開胸し横隔膜を一部切開する開胸開腹経路とし、数本の短肝静脈を処理することが必要であった。

手術ドキュメントⅡ-5
そして実際の治療はマイクロ波凝固治療とした。肝臓に対するマイクロ波凝固療法は1989年、私が大学で動物実験をしていたときに、当時大阪にあった平和電子という会社に依頼し、実際に前橋まで開発技術者に来てもらい、肝臓病巣を球状に凝固壊死させる電極を作ってもらった。直径3cmの球状に凝固壊死させるために20分以上の長時間出力が必要であった。

最初は電極が解けてしまい失敗の連続であったが、メーカーの熱意で素材を色々と変更して今現在使用している涙的型電極の製作にこぎつけたのだった。(図6)

Mさんの手術は11月8日に決めた。当日は9件の定期手術が予定されていたが、朝になって十二指腸潰瘍穿孔の緊急手術が入った。9件の手術を全て終え、10人目のMさんの手術が始まったのは16時を過ぎていた。持続硬膜外麻酔カテーテルを背中側から留置後、気管内挿管による全身麻酔後、左側を下にした左側臥位をとり、執刀開始。

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