翌日、大澤から連絡が入った。
「木田さん、協成から設計費用の見積りが来ました。ウチとしてはこれに対しては一円も乗せませんので、そのままファックスしますね」
大澤はそう言うと電話を切り、事務所にファックスを送って来た。
ファックスは大澤が言うとおり、協成からF社に送られたその物で、なんの手も加えられていなかった。
「おお、七十万円?かなり安い気がするね」
ただ単にCADで図面を描くだけで、この金額は高いと思う人も居るかもしれないが、この製作用の図面には、協成のロボット製作のノウハウが、全て詰め込まれていることになる。
しかもこの製作図面を他のメーカーに持ち込めば、場合によってはかなり格安で同じロボットを造る事も可能になるかもしれない。製作用の図面を描いただけでは、協成にとって利益はほとんど発生しないのだ。製品を造って納品し、初めて会社としての利益が生まれる。
製作用の図面のみを納品するという事は、協成にとってもかなり大きなリスクを伴う事になるのだ。
「そりゃ木田さん、事情を話して、極力安くしてもらう様にしましたから。協成さんにとっても、R社さんはすでにロボットを三台も購入してくれた大事なお客さんですからね」
「うん、いいよ、これで。始めちゃってよ」
私は以前に協成が送って来た、管内ロボットの簡略なA3サイズの図面を見ながら、大澤に指示を出した。
「本当に良いんですか?」
「イイってば、もし工事をやることになった時、ロボットが間に合わない方が問題だからね。やっちゃって下さい!」
「うーん、分かりました。そこまで木田さんが言うのなら、私も付き合いますよ」
「うはははは!何?辞表を用意するの?」
「いや、辞表は無理ですけど、全力でサポートしますから」
「あはは、お願いしますよ」
未だテスト工事すら行っていない状況だが、私はついに管内ロボットの図面製作を開始させた。
大澤との電話を切るとすぐに、事務所の階段を誰かが上って来た。
「こんにちは!」
「おお、川野辺さん!」
事務所の入口に、三菱キャタピラーの川野辺が立っていた。
「木田さん、ありましたよ、耐熱パッキン!」
「おお、ついに見つけた?」
「ええ、驚く事に、キャタピラー製のエンジンの『マリン』のラインナップにありましたよ」
「マリン?海ぃ!?」
「ええ、船舶用のエンジンに使われているガスケット(耐熱パッキンと同意)ですね」
「ほー、船舶用とは驚きだね」
「ええ、道理で建機用の部品リストを、探しても探しても見つからなかった筈ですよ」
「でも、よく見つけてくれたね」
「どこからどう見ても、マフラーの手前までは、完全にキャタピラー製ですからね。もう最後は意地でしたよ」
「うはははは!それは助かるよ、本当に。石綿のパッキンは部品に密着して剥がすのが大変だからね。金属パッキンはその点、綺麗に外せて楽だからね」
私はさっそく工場に入ると、小磯とハルの手を借りて、パッキンと直管マフラーを装着した。昨日、ラジエターの耐熱布パーツも到着し、取り付けは済んでいる。
「さ、いよいよ防音カバーの実力を試す時が来ましたね」
「がはははは、全然駄目だったりして」
「本当に大丈夫よぉ?」
小磯とハルも興味津々だ。
「じゃ、行きますよ!」
私はハスキーのエンジンキーを力強く捻った。
「木田さん、協成から設計費用の見積りが来ました。ウチとしてはこれに対しては一円も乗せませんので、そのままファックスしますね」
大澤はそう言うと電話を切り、事務所にファックスを送って来た。
ファックスは大澤が言うとおり、協成からF社に送られたその物で、なんの手も加えられていなかった。
「おお、七十万円?かなり安い気がするね」
ただ単にCADで図面を描くだけで、この金額は高いと思う人も居るかもしれないが、この製作用の図面には、協成のロボット製作のノウハウが、全て詰め込まれていることになる。
しかもこの製作図面を他のメーカーに持ち込めば、場合によってはかなり格安で同じロボットを造る事も可能になるかもしれない。製作用の図面を描いただけでは、協成にとって利益はほとんど発生しないのだ。製品を造って納品し、初めて会社としての利益が生まれる。
製作用の図面のみを納品するという事は、協成にとってもかなり大きなリスクを伴う事になるのだ。
「そりゃ木田さん、事情を話して、極力安くしてもらう様にしましたから。協成さんにとっても、R社さんはすでにロボットを三台も購入してくれた大事なお客さんですからね」
「うん、いいよ、これで。始めちゃってよ」
私は以前に協成が送って来た、管内ロボットの簡略なA3サイズの図面を見ながら、大澤に指示を出した。
「本当に良いんですか?」
「イイってば、もし工事をやることになった時、ロボットが間に合わない方が問題だからね。やっちゃって下さい!」
「うーん、分かりました。そこまで木田さんが言うのなら、私も付き合いますよ」
「うはははは!何?辞表を用意するの?」
「いや、辞表は無理ですけど、全力でサポートしますから」
「あはは、お願いしますよ」
未だテスト工事すら行っていない状況だが、私はついに管内ロボットの図面製作を開始させた。
大澤との電話を切るとすぐに、事務所の階段を誰かが上って来た。
「こんにちは!」
「おお、川野辺さん!」
事務所の入口に、三菱キャタピラーの川野辺が立っていた。
「木田さん、ありましたよ、耐熱パッキン!」
「おお、ついに見つけた?」
「ええ、驚く事に、キャタピラー製のエンジンの『マリン』のラインナップにありましたよ」
「マリン?海ぃ!?」
「ええ、船舶用のエンジンに使われているガスケット(耐熱パッキンと同意)ですね」
「ほー、船舶用とは驚きだね」
「ええ、道理で建機用の部品リストを、探しても探しても見つからなかった筈ですよ」
「でも、よく見つけてくれたね」
「どこからどう見ても、マフラーの手前までは、完全にキャタピラー製ですからね。もう最後は意地でしたよ」
「うはははは!それは助かるよ、本当に。石綿のパッキンは部品に密着して剥がすのが大変だからね。金属パッキンはその点、綺麗に外せて楽だからね」
私はさっそく工場に入ると、小磯とハルの手を借りて、パッキンと直管マフラーを装着した。昨日、ラジエターの耐熱布パーツも到着し、取り付けは済んでいる。
「さ、いよいよ防音カバーの実力を試す時が来ましたね」
「がはははは、全然駄目だったりして」
「本当に大丈夫よぉ?」
小磯とハルも興味津々だ。
「じゃ、行きますよ!」
私はハスキーのエンジンキーを力強く捻った。
やっぱり肉体労働の時は、肉体労働モードで一日押し切る方が、精神的には楽ですね。