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数学的実在とは-原論から-1-

2010-01-01 06:45:00 | 数学基礎論/論理学
 NATROMさんの第三掲示板で、次のような問題の議論をしました。
数学は科学か?
自然科学的ではない存在とは何か?
 これから、これらの問題について、次の立場で述べていこうと思います。
  「数学の正しさは観測(経験)に由来する」
  「数学的実在の根拠は自然科学的実在である」

 ここで自然科学的実在というのはいわゆる物理的実在であり、物と現象を指します。実在というと「物」しかイメージしない人もいますが注意してください。

 以下の議論ではユークリッド幾何学を代表とする幾何学を一例として話を進めます。しかし注意すべき点があります。ユークリッドの『原論』の幾何学は公理的方法の代表のようにも言われていますが、実のところは現代的立場からはかなり不完全なものです。従って、冒頭の問いを考えるのに『原論』の幾何学そのものを考察するのは適切とは言えないでしょう。どう不完全なのか、現代的立場からのユークリッド幾何学とはどんなものなのかは後述しますが、ひとまず参考文献を挙げておきます。Ref3に現代的立場からの考察があります。ユークリッド幾何学を厳密に公理的に構成したのはヒルベルトですが、その全貌はRef4で読むことができます。

  1) 中村幸四郎、他 『ユークリッド原論』共立出版; 縮刷版(1996/6/1),ISBN-10: 4320015134
  2) エウクレイデス(著),斎藤憲(訳),三浦伸夫(訳)『エウクレイデス全集-第1巻(1)』東京大学出版会(2008/01), ISBN-10: 4130653016
  3) 溝上武実 『初等幾何入門―公理から考える』日本評論社(2005/09), ISBN-10: 4535784396
  4) D.ヒルベルト(David Hilbert),中村幸四郎(訳)『幾何学基礎論 (ちくま学芸文庫)』筑摩書房 (2005/12) ISBN-10: 4480089535

 また以下のサイトに『原論』の全貌が見られます。
http://mis.edu.yamaguchi-u.ac.jp/kyoukan/watanabe/elements/hyoushi/

 なおここで「現代的立場」と言ったのは「厳密な公理論的方法に従った」というほどの意味で、ヒルベルト以降の数学を指します。哲学的には「現代的立場」とひとくくりにできる立場はなさそうで、次回にちょっとその点に触れます。ヒルベルト以降にブルバキが公理論に基づく数学をあらゆる分野で展開したと言われていますが、現在の数学本流でのブルバキの評価はよく知りません。本流と言える立場があるのかどうかもよく知りません。

   続く

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