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someとanyの論理(3) 否定文

2016-10-16 06:37:26 | 数学基礎論/論理学
 前回は疑問文の例を示しましたが、次は否定文です。

A1n) Some boxes are not opened. いくつかの箱は開いていない。
A2n) Any box is not opened. どの箱も開いていない。
A3n) Each box are not opened. 各箱は開いていない。
A4n) All boxes are not opened. 全ての箱は開いていない。
A5n) No box is opened. どの箱も開いていない。

B1n) Some boxes will not be opened. いくつかの箱は開かないだろう。
B2n) Any box will not be opened. どの箱でも開かないだろう。
B3n) Each box will not be opened. それぞれの箱は開かないだろう。
B4n) All boxes will not be opened. 全ての箱は開かないだろう。
B5n) No box will be opened. どの箱も開かないだろう。

C1n) Some boxes can not be opened. いくつかの箱は開けないだろう。
C2n) Any box can not be opened. どの箱も開けないだろう。
C3n) Each box can not be opened. それぞれの箱は開けないだろう。
C4n) All boxes can not be opened. 全ての箱は開けないだろう。
C5n) No box can be opened. どの箱も開けないだろう。

 これも直訳で不便はなさそうです。ただしひとつ注意すべきはA4n)B4n)C4n)の文章です。"アルク"のサイト"HOME > 英単語・英文法 > 英文法FAQ > 15 否定:部分否定、no と not any など"の「15.3 全否定」によれば、これらの文は全否定か部分否定かが紛らわしい言い方なのだそうです。もし部分否定であることを明確にしたければ、次のようにするべきです。

A6n) Not all boxes are opened. 全ての箱が開いてはいない。
B6n) Not all boxes will be opened. 全ての箱が開きはしない。
C6n) Not all boxes can be opened. 全ての箱が開けはしない。全ての箱を開く(という)ことはできない。

 また全否定であることを明確にしたければ、A5n)B5n)C5n)のように"No box ~"を使うのがよいとのことです。

 ところでsomeとanyの論理(1) 肯定文の図で示したように、肯定文で"any"を使うと必ずしも全ての箱が開くとは限りませんでした。ところが否定文のB2n)では、未来で全ての箱が開かないと解釈できます。なぜそうなってしまうのでしょうか?

 それは図で示したように、最初は全ての箱が閉じた状態からスタートすると想定したからです。すると肯定文の場合は、任意のひとつを選べばそれは必ず開くのですが、選ばなかった箱は元のように閉じたままでも嘘にはなりません。ところが否定文では、任意のひとつを選べばそれは開かずに閉じたままですが、選ばなかった箱もやはり元のまま、つまり閉じたままだと普通は想定するわけです。つまり未来ではすべての箱は閉じたままなのです。

 ではなぜ閉じた状態からスタートすると想定するのかと言えば、「開くだろう」「開かないだろう」という文が意味を持つには、そもそも現在は閉じているはずと人は自然に考えるからです。もし現在開いているなら、それがさらに「開くだろう」という予想は一種のナンセンスになるというのが自然な感覚だからです。これがもし「閉じるだろう」という文ならば、逆に現在は開いているはずだと、普通の人なら自然に想定するでしょう。

 以上のことは未来形のみならず可能形でも同様で、「開くことができる」という以上は現在は閉じている箱についての言明だと普通は想定するでしょう。そして「閉じることができる」というなら、それは開いている箱についての言明のはずです。

 それなら現在形はどうなるのでしょうか? 現在形では、開いているか閉じているかわからない状態からスタートする、と考えられます。現在形とは現在の状態を述べる文ですから、述べる前は読み手はその状態を知っておらず、現在形の文を読んだときに知ることができるということになります。すると"any"を使った場合は、読み手が任意の箱を選んでみたときに、その状態がどうなのかを述べていることになります。

 ここで「現在の状態」というものは、人が見ようと見まいとすでに決まっているはずのものです。つまり「どの箱をえらんでも開いている(閉じている)」ということはすなわち「全ての箱はすでに開いている(閉じている)」ということになります。ですから現在形の場合は、肯定文でも否定文でも"any"を使う文は"each"や"all"を使う文と実質は同じ意味になるのです。いや量子力学は今は無視してくださいね(^_^)。

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