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コロナも国により(5):現状

2020-06-20 08:39:10 | 医学
 現時点で世界の状況を見てみましょう。日経新聞の「新型コロナウイルス感染 世界マップ」では各国の感染者数が円の大きさで示され、クリックすると累積感染者数の数値データ新規感染者数の推移のグラフが出ます。

 以下、国名直後の()内では[累積感染者数/千人]/[人口/百万人]=[1万人当たりの累積感染者数]という数値を示しています。なお、人口はグローバルノート(Gloval Note)表示の国連統計を参考にしました。なお当たり前ですが、累積感染者数というものは日毎に増えていき減少することは永遠にありませんので、あくまでも現時点(06/11-20頃)の数値です。


 米国(2005/327=61)とロシア(495/146=34)は推移傾向は似ていて、新規感染者数は頭打ちですがピークアウトには至っていません。それでも少しずつ制限を緩めようとしています。日本基準だと大丈夫かいなと感じるのですが、背に腹は変えられずというところでしょう。NHK-BSのワールドニュースでロシアの報道を見ていると、必死で楽観的ニュースを流しているような印象を受けてしまうのですが、悲観的ニュースが溢れているうちか華だということもあるのでしょうか?

 メキシコ(129/128=10)など中南米諸国も推移は米国に似ています。キューバ(2.22/11.3=2.0)はピークアウトしたらしいですが。カナダ(97/37.4=26)もピークアウトして減少中です。

 ロシア近傍の東欧諸国に目を向けると、スロバキア(1.5/5.5=2.7)とチェコ(9.9/10.7=9.3)、ハンガリー(4.0/9.7=4.1)はピークアウトしましたが、それ以外のルーマニア(21/194=1.1)やポーランド(28/379=0.7)などはロシアや米国同様の推移です。ただし後者2カ国はそもそも人口当たり感染者数はアジア諸国並に低いです。

 インド(276/1334=2.1)は未だ増加中に見えますが、これはインドだけではなく亜大陸3国のバキスタン(114/201=5.7)とバングラディッシュ(75/165=4.5)も似た推移です。そして人口当たりの感染者数は、この2カ国はインドの2倍です。報道ではインドばかりが目立ちますが人口の多さと大国のゆえでしょう。

 アジアではインドネシア(35/264=1.3)とフィリピン(25/106=2.4)も米国やロシアと同様に未だ収まらずですが、地理的には近い?オーストラリア(7/25=2.9)とニュージーランド(1.15/4.93=2.3)はきれいにピークアウトしています。

 なお人口あたり感染者数で、中国(83/1395=0.6)の低さは別として、日本(17/126=1.3)や韓国(12/51=2.4)やインド(276/1334=2.1)など「アジアでは欧米に比べて低いのは何故だ?」という疑問が呈されています。実は上記のようにオーストラリアとニュージーランドも同じような数値ですから、人種による遺伝子の違い説は、旗色が悪そうに思えます。いや両国の正確な人種構成は知らないのですが欧米人種はかなり多いと考えられます。

 中東のイラン(176/82=21.5)とサウジアラビア(112/33=34)は一旦ピークアウトしたものの、明確な第2波に見舞われています。イスラエル(18/9=20)も同様に第2波に見舞われているらしく、人口当たり感染者数も周辺アラブ諸国と似たようなものです。

 南米のブラジル(772/208=37)は大統領の破天荒な態度で感染拡大が放置されていると報道されていますが、実はペルー(208/32=65)、チリ(148/19=79)、アルゼンチン(26/45=5.8)も推移は同様で、人口当たり感染者数はペルーとチリの方がブラジルより大きいのです。

 このように世界を見渡して見ると、人口当たり感染者数に影響する要因というのは、遺伝子構成とか政策とかもあるかも知れませんが、何かしら地理的空間的な近さの影響が強いような印象を受けました。それは確かに、感染源が近ければ強い影響を受けるのは当然かも知れません。

 なお外務省が1万人当たり感染者数の国別ランキングを発表していますが、4月頃はベルギー(63.5/11.5=55)やルクセンブルグ(4.1/0.61=67)といった小国がトップを争っていましたが、今や新興国勢が追い抜いています。
 サイトは更新されるでしょうから、06/20の図を添付しておきます。


 カタール(84/2.8=300)とバーレーン(24/1.64=146)は隣接していて、どちらもやはり小国です。コロナも国により(4):感染率は高いけど(2020/05/16)で取り上げたアイスランド(1.8/0.3=60)もそうですが、小国では国全体の人の交流はなかなか断つことは難しく、一旦感染が広がれば人口あたりの感染者数は高くなり勝ちです。すでに抑え込んでいる中国の累積感染者数は全土では飛びぬ抜けて低いのですが、武漢(50/111=4.5)だけなら全土の数値に比べれば非常に高い値です(参考[関山 健(京都大学大学院総合生存学館准教授)「データで見る武漢の新型コロナウイルス高致死率と医療崩壊」(04/09)])。要するに、1国がひとつの地方としか言えないような小国と多数の地方から成る大国とで人口あたりの数値を比較したのでは、判断が狂うということです。
 ちなみに「感染者数が東京の72倍、ニューヨークは何が悪いのか」JBpress(04/30)からデータを拝借すれば、ニューヨーク州(290/14.5=149)、東京(4/14.0=2.9)です。
 そうなると普通の規模の国であるのに上位に入っているペルーやチリの事態は相当に深刻です。

 ところで西ヨーロッパでは多くの国がピークアウトしていますが、スウェーデン(56/10=56)だけが未だ収まっていませんコロナも国により(2)(2020/04/12)で紹介したように独自路線を行ったスウェーデンですが、さすがに失敗だったと叩く意見もでています[*2]。しかし見方によっては全面的失敗とも言えないのかも知れません[*1,*2]。高齢者施設などで一種のトリアージをせざるを得ない状態というのは日本だったら非難轟々だと思うのですが、たまたまNHK-BS1「市民が見た世界のコロナ・ショック」を見ていたら、スウェーデンの人たちは意外と冷静に見えました。まあ冷静には受け取れない人だっているだろうとは思いますが、まさしく自己責任を伴う個人の自由に価値を置くという国民性なのでしょうか?

 なお札幌医科大学医学部 附属フロンティア医学研究所「人口あたりの新型コロナウイルス感染者数の推移【国別】」のコメント欄で色々な議論がなされていることを紹介しておきます。私もよく読んではいませんが、興味のある人はどうぞ。


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*1)
 NewsWeek スー・キム「「集団免疫」作戦のスウェーデンに異変、死亡率がアメリカや中国の2倍超に」(2020/05/01)
 NewsWeek スー・キム「コロナ独自路線のスウェーデン、死者3000人突破に当局の科学者「恐ろしい」」(2020/05/08)
*2) 「コロナ独自路線のスウェーデン、死者3000人突破?スウェーデンの新型コロナウイルス対策について医師が解説します」(2020/05/22)
*3) 「ロックダウンにエビデンスはあるのか?」
  他にこんな記事を書いている=>メディカル二条河原
  こんな思いを持つ人です=>でしかないことへの不安

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