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学問全般について語ります

0(ゼロ)は自然数か否か -1-

2015-11-07 08:06:53 | 数学基礎論/論理学
 「0(ゼロ)は自然数に含まれるのか含まれないのか」という疑問はネット上にあふれているようで、様々の質問サイトにもよく投稿されているようです。

 この問題には「ゲーデルの定理-2.3- 自然数の公理系」の*2で「一般には0は自然数に含めないとする考え方が多そうだ」と述べましたが、別に統計を調べたわけでもなく根拠はありませんでしたm(_ _)m。要は筆者により、含む場合と含まない場合とがあるということです。まあその時々でどちらが都合が良いかが異なるのでしょうから、都合の良い方を使えばよいのです。ただし、どちらの定義かは明確になっていないと読者を混乱させます。2つの流儀が混在してしまっている以上は、その場で使う概念を明確にすることが一番大切であり、どちらかが正しいと断言しても実用的意義は少ないでしょう。なお、2つの流儀があるのは日本だけの特殊事情ではなく世界的にも同様であることが、ウィキペディア英語版の"Natural number"の記事の冒頭に書かれています。

 歴史的経緯についてのひとつの記事がウィキペディア日本語版の「自然数の歴史と零の地位」項目に書かれています。

 私見を述べれば、0(ゼロ)を含む方が何かと便利なことが多そうです。なにせ含まないとなると0を扱いたいときにいちいち断らないといけなくて面倒そうです。0を使わないというならいいのですが、そんな場合は少ないのではないでしょうか。私の一連のゲーデル関連の記事でも、例えば関数の定義で0値を持つものを自然数の関数として使いたいことがよくあります。すると0を含めておかないと自然数から自然数への関数がひどく制限されてしまいます。

 そもそも現代生活においては負の数も含めて整数を扱うことは非常によくありますが、自然数だけ扱うことなどほとんどないのではないでしょうか? 例えば金勘定などは、黒字も赤字ももちろん0円という値も、まとめて扱わないとやっていけないでしょう。こんな場合は単に「数」と言えば「整数」を指すのは明白です。整数という言葉さえあれば、自然数という言葉を使う必要はまずありません。たとえ正の整数のみ扱うときでも「0円」「0個」といった概念は普通に使いまくるでしょう。自然数という分類が必要なら「非負整数」(「0以上の整数」)とか「正の整数」(「0より大きい整数」)と言っておけば十分です。

 ウィキペディア日本語版には0(ゼロ)を含まない流儀が「数論などでよく使われ」と書かれていますが、この記載の正しさには私は自信を持てません。数論も広くは整数に関する数学であり、自然数は整数の一部でしかなく、必要なら「0以上の整数」とか「0より大きい整数(1以上の整数)」とか言えば、「自然数」という2通りの解釈のある用語など使う必要はないからです。

 結局のところ「自然数」という言葉をどうしても使いたい場合と言うのは現代では、数学基礎論での「自然数を含む公理系」の話をしたい場合に限られるのではないでしょうか? 他の場合は「非負整数」等で間に合いますから。

 結論として「自然数」という言葉は現代生活や多くの数学においては無用の長物と言えるように思います。一応日本の初等教育では0を含まない流儀が教えられているようですが、どちらであるかの知識を問うだけの問題は、数学の本質や数学の力とは何の関係もない愚問であることは確かでしょう。

 そんなものどっちでもいいよ(^_~)。

 アルベルト A.マルティネス『負の数学』青土社(2006/12)という本によれば、ほんの数百年前までは負の数という概念になかなかなじめない人が多かったそうなのですが、現代ではほとんどの人が自然に負の数を含む整数を使いこなしていて、自然数の方が整数より先に来るという根拠はほぼなくなっているというべきでしょう。

 この話の歴史を示す文献があったので次回(11/08)に。

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
自然数は、言葉である。 (カオス ⇔ コスモス)
2020-07-20 15:40:09
≪…「非負整数」…≫を『HHNI眺望』で言語化する4冊の絵本の絵本の紹介です。
「こんとん」夢枕獏文松本大洋絵
「みどりのトカゲとあかいながしかく」スティーブ・アントニー作・絵吉上恭太訳
「ゆうかんな3びきとこわいこわいかいぶつ」スティーブ・アントニー作・絵野口絵美訳
[もろはのつるぎ」(有田川町ウエブライブラリー)

≪…「非負整数」…≫は、『幻のマスキングテープ』に・・・
『かおすのくにのかたなかーど』から・・・
返信する
数は普遍言葉 (レンマ学)
2022-03-24 13:46:07
≪…自然数の方が整数より先に来るという根拠はほぼなくなっている…≫は、十進法の基にをける西洋数学の成果の[π][e][i] [∞] と 【1】【0】のレンマ学的知性で、【離散的有理数の組み合わせによる多変数関数】と[形態空間(ニッチ)]での数量量化の文脈命題とを無矛盾性に観たい。

 この根底は、ロゴス的知性がカタチ(〇▢△)と点線面の[分化・融合]をヒフミヨ(1234)が担っていると観たい。

 [離散](算数)と[連続](数学)の【ニュメロイド】は、【数の核(ジャーゴン)】に[眺望]したい・・・

 【数の核(ジャーゴン)】は、
  ピストン運動的な【数の核(ジャーゴン)】
(1/(exp[n]))(exp[n+1]-exp[n])(e-1)/(e-2)
 オイラーの等式(ー1)を入れた回転運動的な【数の核(ジャーゴン)】と観たい。
 
 回転運動的な【数の核(ジャーゴン)】を【ニュメロイド】と観れば、四則演算符号(+ ‐ × ÷)と数学符号(e i π)と[1][2]だけの単純表記(n=0 の時)になる。 

【ニュメロイド】は、「レンマ学」中沢新一著からの用語で記載内容はレンマ学的視座で・・・

 1とπ〇▢のなぞり逢

 ヒフミヨは△回し▢なる

 √6〇÷▢如来蔵
返信する

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