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異次元世界へ

2016-03-13 16:33:33 | 架空世界
 この世界の3次元方向とは異なる次元方向にある世界、いわゆる異次元世界とか並行宇宙、パラレルワールド[*1]と呼ばれる世界を舞台としたSFが多数知られています。それはこの3次元空間を通じてでは光速度を幾億倍超えようとも到達できない世界であり、この宇宙とは異なる物理法則さえ仮定できる世界です。物理定数を少し変えた世界といえばスティーヴン・バクスター『天の筏』[*2]がありますが、そうハードにせずとも例えばC.S.ルイス『ナルニア国シリーズ』[*3]のように箪笥の中にちょっと穴が開いていて、その向こうはファンタジックな世界だった、という設定ならいくらでも作れそうです。いや、いくらでも作られていますか。

 異次元世界小説の初期にはたぶん、現実世界の主人公が異世界に紛れ込むという設定が多かったように思いますが、やがて全くの異世界をその中だけで描くという手法もポピュラーになりました。ピアズ・アンソニイ(Piers Anthony)『魔法の国ザンス(Xanth)』などは「ザンスとマンダニアという2つの並行世界が隣り合っているという異世界の物語」とも言えるでしょう。うむ、上橋菜穂子『守り人シリーズ』の世界もそうですね。ザンスとマンダニアは地続きらしいところもあるので3次元方向とは異なる次元方向で隣接しているとも言いにくいですが、守り人シリーズでは2つの世界がまさに3次元方向とは異なる次元方向で隣接というよりも、混じり合うくらいにくっついていますね。

 さて舞台となる異次元世界はひとつという作品が多いのですが、フイリップ・ホセ・ァーマー『階層宇宙シリーズ』ではこの宇宙とはかけ離れた世界が多数登場します。それら多数の世界は、この地球(と太陽系)も含めて天帝と呼ばれる種族(生物学的にはホモ・サピエンスらしい)による人工物だという設定で、人工物だけに想像の限りを尽くした世界が存在するという、いわば遊園地みたいな楽しい世界です。いやストーリーはハードボイルドな冒険ものですが。ただ我々の現実世界の自然法則にとらわれない世界を創造するという点では異次元世界物の可能性を目一杯活用しているといえるでしょう。

 さて週刊少年ジャンプで連載されアニメ化もされている『ワールドトリガー』にも多数の世界(国)が登場します。ただしここでは異次元世界としては近界(neighborhood)と呼ばれるひとつの宇宙だけであり、そこには多数の惑星国家が存在するというものです。惑星国家群はひとつの3次元空間の中に存在するので自然法則は全ての惑星で同じはずです。もちろん各国家の文化等は異なります。この異次元世界がなかなかおもしろい構造をしています。その話を次回にします。


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*1) 昔はSFでのパラレルワールド(Parallel world)という言葉がよく使われていたが、現在では量子力学の観測理論や宇宙論での並行宇宙(Parallel universe)という言葉もポピュラーになりややこしい。英語版ウィキペディアが比較的まとまっていたので紹介しておく。
   a) "Parallel_universe" は曖昧さ回避ページになっていて種々の用法が整理され、"Science","Philosophy","Fiction",の分類が参考になる。
   b) "Parallel_universe_(fiction)" に本記事で意図している作家等による想像上の世界の説明が詳しい。
   c) "Alternate_universe_(fan_fiction)" は小説等の世界をさらに改変した世界の記事である。いわゆるパロディ小説にもありそうだが、パロディ小説というと「正典(元ネタ)の世界を改変し世界を描く」というには少し違うものもある。
 なお日本版ウィキペディアでは歴史改変SFの記事が比較的充実していた。
*2) 大野万紀による解説。「大野万紀 文書館」から。
*3) 岩波書店の紹介

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