泰西古典絵画紀行

オランダ絵画・古地図・天文学史の記事,旅行記等を紹介します.
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世界遺産 ヴェネチア展~コロネリの地球儀

2011-11-23 20:12:35 | 地図・天文の展覧会/東洋文庫

 Vincenzo Coronelli(1650-1718)コロネ(ッ)リの1m級(108cm)地球儀が来ているので,見に行きました.図録を買わなかったので画像はウィキ・コモンズ英語版サイトでご覧ください.そこにはTerrestrial globesとして,テキサス工科大学とポーランド・ニェボルフ博物館の所蔵品が掲載されています.来日している実物の台座は水平環の木部は八角形,ボビン型の四本足です.
 やはりこのクラスだと圧倒的ですね.全周から観察できるので面白いです.木製中空の球に銅版で印刷した図を張っているのですが,よくみると虫食いの穴が沢山開いています.皆さんがよくご覧になっていたのはやはり日本周辺ですが,1688年版とのことで,オランダのデ・フリースによる1643年の探検航海に基づきウルップ島(コンパニースラント;VOCの所属という意味)に続いて,蝦夷から樺太が大陸ロシアに地続きとして描かれてしまっています.これは1658年のヤンソンの日本図に登場していました.また,オーストラリアもやはりオランダはタスマンの1642・44年の探査に基づいて変形して描かれていますが,ニュージーランドはどうなっているのでしょうか.また,当時の風説でカリフォルニア半島は島になっていますね.ユーラシア大陸はまだ実際以上に東西に長いようです.

 コロネリはローマを中心に活躍したと記憶していますが,ヴェネチア出身といわれています.コロネリはゴア(舟形で地図のパーツを印刷したもので,張り合わせて地球儀に仕立てる)も販売し,それらは現代にも伝わっているので,いつ地球儀に仕立てられたのかは不確実であり,コロネリの地球儀を購入するときは注意を要するといわれています.近年ではファクシミリ複写によって現代に複製製作されたものも出回っていますが,それでも欧米のオークションでは天球儀との対で100万円ほどになることもありました.

 ちなみにコロネリの最も有名な地球儀としては,ルイ14世のため世界一のものを求められて,パリで2年がかりで1683年に製作したなんと4m(384cm)大のものです.ベルサイユ宮に置かれていたのですが,修復されて現在,ミッテラン・フランス国立図書館の西口に永久展示されています.これも上記サイトにMarly Globesとして載っています.海は青く塗られ,対の天球儀も星座が青を基調に塗られていますが,ルイ14世の1638年の生誕日の空を再現しているそうです.残念ながら今年の春パリに行ったときは休館日で見られませんでした.

  この展覧会の出展作品の大半はヴェネチアはサン・マルコ広場にあるMuseo Correrコッレール美術館からなので,同館のサイトに今回の主要作品の一部が掲示されています.


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