社会保障限定か 自治体裁量残すか
政府・与党が目指す社会保障・税一体改革では、消費税の地方自治体への配分も論点の一つとなる。(有光裕、小野田徹史)
国は消費税収を年金、医療、介護、少子化対策の「社会保障4経費」に使うことを法律に明記する方針だが、地方分には使い道が曖昧な部分があるためだ。
4通り
安住財務相は21日の仙台市での一体改革説明会で、「集めた消費税分は国と地方の社会保障にそのまま還元する制度になっている」と増税に理解を求めた。だが厳密には、現時点では社会保障に充てることが確定していない部分が残っている。
政府・与党は一体改革の素案で、消費税率を2015年10月に10%に引き上げる際、うち6・28%分は国の「社会保障目的税」として4経費以外には使えないことを明確にする方針を示した。地方の取り分は残りの3・72%分で、このうち2・2%分は都道府県に払い込まれる地方消費税(現在は1%)、1・52%分は国が地方に渡す地方交付税(同1・18%)とする計画だ。
地方分のうち、地方消費税の増税分(1・2%)と交付税の計2・72%分は「社会保障財源」と位置づけ、社会保障に充てる方向だ。地方交付税法は「国は地方自治の本旨を尊重し、使途を制限してはならない」と定めており、交付税の使い道を事実上、限定する初のケースとなる。
一方、現在の地方消費税にあたる残り1%については使い道を限らず、公共事業や教育など幅広い政策経費に活用できる「一般財源」とすることになっている。
この結果、消費税収は、「国庫に入る分」「地方交付税に回る分」「社会保障に回る地方消費税の増税分」「使途を限らない地方消費税の現行分」の4通りとなる。
現在は、消費税収のうち国の取り分(税率5%のうち2・82%分)が「基礎年金」「高齢者医療」「介護」に充てることを毎年度の予算書で定める社会保障財源で、地方交付税と地方消費税(計2・18%分)は一般財源だ。
脱・一般財源?
増税で、消費税収のうち社会保障財源の割合が増えるが、「一般財源」と位置づけられる部分も残ることになる。地方分が複雑な仕組みになる背景には、法律で裁量を縛られたくない自治体側の強い意向がある。
地方交付税への配分が現行の1・18%から1・52%に増えたのは、地方側が自治体間の格差拡大を抑えるため、財政力が弱い自治体に配分される交付税の増額を求めたためだ。国が定める「4経費」だけでなく、自治体独自の社会保障サービスに交付税を活用する狙いもある。
政府は「交付税の枠組みを残しつつ、使い道を明確にする」(総務省幹部)との見解だが、「社会保障の財源に」とする国の消費増税の狙いと、地方の主張を折衷する苦肉の策と言える。一体改革を担当する岡田副総理は20日の記者会見で、「地方自治の根幹に触れる部分でもあるので、(素案は)微妙な表現になっている」と認めた。
政府は今後、地方側と協議に入り、どこまで消費税収で地方の歳出をカバーするかなど具体的な制度設計を行う。もともと交付税の算定基準は複雑で、適正に配分されているかどうかを巡っては政府内でも財務省を中心に批判が根強い。政府だけでなく自治体にも、消費税収をきちんと社会保障サービスに充てることを示す姿勢が求められる。
(2012年1月24日
読売新聞)
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