稀勢の里(左)を押し出しで下す白鵬=本間光太郎撮影
賜杯の行方を左右しかねない一番で、白鵬が軽々と踏みとどまった。
「久しぶりの追う立場。こんなに気楽なものかと感じた」と横綱。前日の黒星を引きずる様子は、みじんもない。
昨年は、3勝2敗の稀勢の里と新年最初の勝負。館内の空気も、明らかに新大関びいきだった。だが、わずか4秒の攻防で横綱は声援をため息に変え、攻めの引き出しの多さを見せつけた。左おっつけが得意な相手に右を差せないと見るや、すかさず右腕をたぐって崩した。間髪入れずに、ハズ押しで攻める厳しい攻め。稀勢の里が苦し紛れにはたいた時は、もう土俵を割っているくらいの早業だった。
貴乃花と並ぶ22度目の優勝に向けて、連敗は許されない状況。一人横綱になってから終盤戦でトップを譲ったのは、昨年名古屋場所だけしかない。それでも白鵬は、「勝てばいいわけだし、負けても二つ差がつくだけ」。あらゆる場面で重圧と戦ってきた横綱らしい解き放たれ方でもある。
把瑠都と直接対決する千秋楽まで、神経戦はさらに激化していく。初優勝を目指す大関は日々、プレッシャーが大きくなり、白鵬は、それを横目で眺めながら土俵に上がる。横綱が今の境地のままなら、星の差一つも、大きな意味はないように映った。(向井太)
(2012年1月18日22時33分
読売新聞)
関連ニュース
・
上田桃子「今季は頂点に」…沢穂希の受賞も刺激
・
立ち合い変化の看板二番、興そがれたファン
・
こんなに気楽なものかと…踏みとどまった白鵬
・ブラジリアンワックス 大阪