特別養護老人ホーム(特養)などの施設で行われる不在者投票で、高齢者の一票がゆがめられている。不正防止策として有効な「外部立会人」の派遣は広がっていないうえ、施設側からの要請があった場合に限られている。一方、施設側からは「このままでは施設での不在者投票は成り立たなくなる」との声も出ている。
今年7月の参院選後、神奈川県三浦市の特養の施設長(66)や職員(57)ら3人が公職選挙法違反(投票偽造)容疑で県警に逮捕された。3人は起訴され、公判中だ。
「この人は福祉に力を入れている人ですよ」
7月8日、この施設の談話室で不在者投票は行われた。検察側の冒頭陳述によると、立会人を務めた職員が、重い認知症のお年寄り5人に、施設長が支持する候補の氏名を告げた。管理者の施設長はその場にいた。施設長らはお年寄りがうなずいたり、「はい」と声を出したりしたことを投票に応じたと勝手に受け取り、別の職員2人=投票偽造容疑で書類送検、起訴猶予処分=にその候補者名を書かせたとされる。
捜査関係者によると、その候補は自民党から比例区に立候補した全国老人福祉施設協議会の前会長。施設長は当時、県高齢者福祉施設協議会の会長だった。同ホームで不在者投票した入所者は69人。代筆した職員は「5人のほかにも投票用紙に同じ候補者の名前を書いた」と供述したという。県警は、この5人について、医師や施設職員、家族の意見を聞き、意思表示ができなかったと判断した。前会長は当選している。
被告側の弁護士は「お年寄りに投票させたいという善意からやったこと。介護の現場で意思表示できない人に投票させれば犯罪になると周知することが先決だ。意思表示できるかどうかの判断を介護者だけに委ねるのは間違っている」と指摘する。
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