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【読書レビュー】『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』を読む(寄稿)

2018-06-10 20:22:18 | 本の紹介、学習の参考
『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』を読む
講談社現代新書:矢部宏治:2017年8月



日本国憲法に「自衛隊」を書き込むとは一体どういうことなのを知るために是非この本を読んでほしいと思った。
以下の各章のポイントを書き留めた。
これ以外にも日本の戦後に関わる歴史ととりわけ、連合国の天皇利用の推移、大西洋憲章から国際連合形成プロセスの分析による9条成立過程とダレス国務省顧問による憲法下における日本再武装に関する法的トリックに関する検証は、とても説得力のある論説であると思った。
一読をお勧めする。

第1章 日本の空は、すべて米軍に支配されている
●航空法特例法(1952年)
・「前項の航空機(=米軍機と国連軍機)(略)については、航空法第6条の規定(略)は適用しない」
・何を適用しないのか=「離着陸する場所」「飛行禁止区域」「最低高度」「制限速度」「飛行計画の通報と承認」

第2章 日本の国土は、すべて米軍の治外法権下にある
●日米合同委員会公式議事録1953年9月29日
・日本国の当局は、所在地のいかを問わず、米軍の財産について、捜索、差し押さえ、また検証を行う権利は行使しない。
→日本全土で米軍所有の財産(米兵、軍属、基地、航空機、艦船、施設)は治外法権下にある。
●沖縄普天間基地からのオスプレイが6つの日本本土への低空飛行訓練ルートの存在。(パープル・イエロー・オレンジ・ブルー・ピンク・グリーン)
→北海道と山陰を除く全土。(北海道と山陰は攻撃機ルート)

第3章 日本に国境はない
●旧安保条約第1条(1952年4月28日発効)
・平和条約及び安保条約の効力が発生すると同時に米軍を日本国内及びその周辺に配備する権利を日本は認め、アメリカは受け入れる。(基地権容認)
→「その配備の内容は、行政協定で決定する」
●行政協定(1952年4月28日発効)
・具体的な内容は、日米合同委員会で定める。
→基地以外の外でも必要な権力をもつ。具体的には日米合同委員会で協議する。
●日米合同委員会(1960年6月第1回委員会)
・日米合同委員会の議事録と合意文書は、原則として公表しない。
・日米合同委員会で決定した日米合意は、日本の国会での承認は必要としない。(1959年4月密約)
●イラク・アメリカ地位協定(2008年)
・イラクに駐留する米軍がイラクの国境を越えて周辺国を攻撃することを禁ずる」
●日韓相互防衛条約(1953年)と日華(台湾)相互条約(1954年)
・日米安保条約とは同様に「米軍を日本国内及びその周辺に配備する権利」を付与。
→「米軍は、在日米軍という意識はなく、日本と韓国と台湾にアメリカには国境はない」

第4章 国のトップは「米軍+官僚」である
●日米合同委員会メンバー(隔週木曜日11時〜):六本木ニューサンノー米軍センター
・アメリカ:7人(駐日公使以外はアメリカ軍指令官軍人)
・日本:6人(外務省北米局長、法務省大臣官房ほかスタッフ

第5章 国家は密約と裏マニュアルで運営する
●行政協定(第17条3項a)
・「日本の当局は、米軍基地の外での犯罪については、米軍関係者を逮捕することができる。但し、逮捕したあとはすぐにその身柄を米軍に引き渡さなければならない。
●裁判権放棄(1953年10月28日)と身柄引渡{1953年10月22日}の密約
・「日本側は著しく重要な事件以外は裁判権を行使しない。」
・「米軍関係者による犯罪が公務中に行われたどうかわからないときは、容疑者の身柄を米軍に引き渡す」
●在日米軍基地秘密報告
・占領中の米軍の特権をすべて保護する密約。
●3つの裏マニュアル
・最高裁「部外秘資料」1952年9月
・検察庁「実務資料」1972年3月
・外務省「日米地位協定の考え方」1973年4月

第6章 政府は憲法にしばられない
●砂川事件大法廷判決
・飛躍上告
・米軍合憲
・統治行為容認

第7章 重要な文書は、最初すべて英語で作成する
●GHQによる天皇対処の変遷
・「降伏式出席」→「人間宣言」(戦犯訴追回避)→「戦争放棄」(GHQ起案の観閲)

第8章 自衛隊は米軍の指揮のもとで戦う
●米軍による日本軍指揮権確保の密約
・指揮権密約(1952年7月、1954年4月吉田首相とマーククラーク指令官密約)
●旧安保条約原案(マグルーダー陸軍少尉起案)第14条「日本軍」
・「この協定(旧安保条約)が有効のあいだ、日本政府は、陸軍・海軍・空軍は創設しない。但し、それらの軍隊の兵士や種類、編成、装備など、あらゆる点についてアメリカ政府の助言と同意があり、その創設計画がアメリカ政府の決定に完全に従う場合は、その例外とする。
・「戦争の脅威が生じたと米軍指令部が判断したとき、すべての日本の軍隊は、アメリカ政府によって任命された最高司令官の指揮のもとに置かれる。

第9章 アメリカは「国」ではなく、「国連」である
●米軍原案の基地権条項(1950年10月27日案)
・日本全土が、防衛上の軍事行動のための潜在的地域とみなされる。
・米軍指令官は必要があれば、日本政府へ通告したあと、軍の戦略的な配備を行う無制限の権限をもつ。
・軍の配備における根本的で重大な変更は、日本政府との協議なしには行わない(=日本の意向でだけで、拒否できないという意味)が、戦争の危機がある場合は、その例外とする。
・平時において、米軍は、日本政府への通告したあと、日本の国土と沿岸部で軍事演習を行う権利をもつ。

追記 なぜ「9条3項・加憲案」はダメなのか
●ダレスのトリック
・1952年以降の日本の独立は、憲法9条は日米安保条約とセットで存在している。そのなかで米軍は、オモテの条文に書かれていない
(1)日本国土を自由に軍事利用できる権利(基地権)
(2)戦時には自衛隊を自由に指揮できる権利(指揮権)という、信じられない大きな権利を密約によってもっており、
(3)日米合同委員会
(4)最高裁(砂川判決)という二つの聖域化されたアンタッチャブルな機関です。
●憲法で自衛隊を容認することの意味
・この(1)から(4)の問題を解決することなく、憲法で自衛隊を認めれば、その先にまっているのは、朝鮮戦争のさなかに生まれた「米軍による日本の軍事利用体制」の完成だからです。


記:大久保 厚

※『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』(講談社現代新書)は、→こちら


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