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10.4kmで8秒差の意味するものは?

2014-06-09 04:23:13 | プロ・ツール

 クリテリウム・ド・ドフィネの第1ステージがリヨンで行われた。10.4kmの個人TTである。昨年は第4ステージで32.5kmの距離で行われ、フルームは勝ったトニー・マルティンから53秒遅れでステージ3位。一方のコンタドールは3分29秒遅れの61位と大きく出遅れる結果になってしまった。
 だが、今年のコンタドールはやはり違っていた。コースプロフィールを見る限りではほぼフラットな印象だったが、実際の映像で見ると、中盤の下りはかなりリスキーで、さほど大きなタイム差はつかないことは十分に予想された。
 昨年のツール・ド・フランス第11ステージでは33kmの距離でフルームに2分以上の差を付けられていたコンタドール。フルームの平均速度が54.27km/hだったのに対し、コンタドールは51.16km/h。平均速度にして3kmもの差があったのである。昨年のドフィネは最悪の状態で、32.5kmでフルーム付けられたタイム差は何と2分37秒、速度差は3.5km/hであった。
 今年は去年の3分の1の距離なので、ここで大きなタイム差がつくことはないと見ていたがが、コンタドールがツール・ド・フランス本番でフルームを破るためには、このTTでのタイム差はできるだけ小さくしたかったはず。もし、このステージでコンタドールがフルームから30秒以上遅れるようだと、本番での逆転は難しいと考えざるを得なかったのである。
Cdd2014_st1_02  しかし、結果は『10.4kmで8秒差』であった。二人の速度差は時速1km以下に縮まった。勿論、かなりトリッキーなコースで平均速度が上がらなかったこともあるのだが、この結果はコンタドールにとって大きなモチベーションになるに違いない。
 身長186cm体重71kgのフルームに対し、身長176cm体重61kgのコンタドール。TTでのパワーウエイトレシオを考えるとコンタドールの不利は否めない。この体型で山も早く登れてしまうフルームがある意味特殊な存在かもしれないのだ。今のままの調子でも、平坦路で距離があればTTでの二人のタイム差は1分近くに開くことは十分に予測できる。
 今年のツール・ド・フランスは個人TTが1ステージしかないが、距離は54kmと長いので、下手をすると3分近い差がついてしまうことも十分にありうるのだ。今年のコンタドールは登坂力は復活傾向にあるので、ピレネーの山岳ステージ終了時にはマイヨジョーヌを獲得している可能性が高い。ただ、ここまでのフルームとのタイム差が3分以下では、マイヨジョーヌ争いは第20ステージの個人TTまで縺れる可能性があるのである。従って、この個人TTの結果に大いに注目していたのである。Cdd2014_st1_01
 ダンシングでグイグイ踏み込んで行くコンタドールに対しフルームは終始シッティングでのパワーペダリング。中間点でのタイムはニーバリがトップでフルームが2番手だったが、結局、ニーバリは終盤に失速し13秒差の8位に終わった。コンタドールにとっては大きく曲がりくねった道が多く、平均速度が上がらなかったことも幸いしたのだが、TTではフルームに勝てないことは明らかとなった。
Cdd2014_st1_03  従って、復調したコンタドールに対しフルームの登坂力がどこまで通用するかがこれからの見所となる。但し、ドフィネに関しては多分コンタドールはフルームには勝てない(勝たないだろう)と見ている。
 というのは、ティンコフ・サクソのメンバーがあまりに手薄だからである。クロイティゲルもマイケル・ロジャースもニコラス・ロッシュもラファル・マイカもサブ・エースクラスの選手が一人もいないからである。対するSKYにはリッチー・ポートとキリエンカがいるのである。
 ティンコフ・サクソとしてはジロ・デ・イタリアメンバーをツール・ド・スイスに回さざるを得なかったというチーム事情があるのだ。一方、SKYはポートがジロ・デ・イタリアを回避したことがここでは幸いするかもしれない。
 このメンバーを見た時、コンタドールはここで無理をするはずないと感じたものだ。目標はあくまで次なのだから。ティンコフ・サクソとしては、多分、クロイティゲルでツール・ド・スイスを勝ちに行くのだろう。ツール・ド・フランスで心置きなくコンタドールをサポートさせるために。
 クロイティゲルにロッシュ、それに今年のジロでステージ2勝を挙げたマイケル・ロジャース、それにマイカも加わればコンタドールにとって本番は万全のアシスト態勢が整えられることになる。Cdd2014_profil2
 さて、今夜はタラール~ペイ・ド・オリエルグからコル・デュ・ベアルの山頂までの156kmのステージとなる。2日目にして早くも山頂ゴールが待っている。今年のコンタドールの傾向としては序盤はライバル達の様子を観察し、隙ありと見れば早目の仕掛けで撃破するパターンが多いように感じている。おそらく、今夜のステージではフルームやポートの調子を見極める手にでると思われるので、大きなタイム差はつかないだろう。
 今年のドフィネの総合優勝の行方は超級山岳を越えて超級山岳でゴールする第7ステージで決まりそうだ。アシストメンバーの薄いティンコフ・サクソとしては、コンタドールが早目に総合首位になるのはあまり望ましとはいえない。 そもそも、総合優勝を狙っているかどうかさえ怪しい状況だと感じているのだが・・・できれば第6ステージまではSKYにリーダーでいてもらって、大いに仕事してもらうというのが理想だろう。そうすれば、フルームのアシスト達の調子が図れるからだ。
 コンタドールもチームもドフィネを勝つことより、フルームとSKYのチーム状況を見極めることに主眼を置いているような気がしてならない。コンタドールの調子は昨日のTTでおおよそ判断できるだろう。登坂力に関してはティレノ~アドレアティコやバスク1周で問題ないことを確認済みのはず。怖いのがケガだけといった状況ではないか。むしろ、ここを勝ってツール・ド・フランスの優勝候補筆頭に躍り出てしまうのは、コンタドールにとって決してプラスには働かないと考えている節があるのである。Vcc2014_7st_01
 今年のコンタドールはカタルーニャ一周でホアキン・ロドリゲスの4秒差の2位という結果がある。ずっとこの4秒差の意味を考えて来たのだが、無理に勝つことをしなかったと考えれば、妙に納得ができるのである。コンタドールがここもできれば秒差の2位表彰台と考えていても不思議ではない。とてももどかしい気がするが、逆転しようと思えば可能なタイム差のまま2位か3位で前哨戦を無事に終えることが出来れば、ツール・ド・フランスの優勝候補筆頭はフルームのままだろう。今、ツール・ド・フランスを勝つことの難しさと怖さを一番良く知っているのがコンタドールだろう。
 これまで優勝候補筆頭で臨みながら、ドーピングスキャンダルやランス・アームストロングとの確執など、メディアに叩かれまくってきた経験から導き出された結論かもしれない。チームもそれが良く分っていて、アシスト選手のローテーションを決めて来た感じがするのである。
 対するフルームは決して絶好調とはいえないものの、徐々に調子を取り戻しつつある。ただ、昨年の総合優勝の立役者リッチー・ポートの調子が戻っていない。コンタドールが勝つ気になれば勝てる状況ではあるのだが、勝つための駒が少な過ぎるのである。これもチーム戦略と考えれば、流石ビャルヌ・リースと云いたくなってしまうのだが・・・

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