映画鑑賞

昔の名画から最近上映の映画まで、国内外を問わず幅広く楽しんでいます。別世界へ連れて行ってくれる作品が好み(本棚6)。

字幕翻訳者、戸田奈津子

2018-08-12 14:09:45 | TV放映
熱中世代 大人のランキング「女性字幕翻訳者の先駆者!戸田奈津子
2016.10.30放送、BS朝日



戸田奈津子”という文字を映画の字幕で見たことがない人はいないと思います。
どんな人物なんだろう・・・昔録画して置いた番組を視聴しました。

翻訳関連の仕事で私の頭に思い浮かぶのは・・・通訳、翻訳(書籍)くらい。
あえて「“字幕”翻訳者」と表現するのは、その特殊性にあることがわかりました。

映画では「吹き替え版」もありますよね。
でも、作業内容は全然違うようなのです。

吹き替え版では、画面に合うように、俳優の感情に合うようにと違和感のない言葉を選んで配置します。
一方、字幕翻訳では、まず“字数制限”という壁が存在します。
英語のセリフを直訳すると字数が多くなり、観客は読み切れないというジレンマがあるからです。
その基本は「1秒間に3文字」。
それを超えると、観客は字面だけを追うことに忙しくて映像を楽しめなくなってしまいます。

ですから、字幕翻訳者は日本語力がなければ務まりません。
戸田さん、「悩むのは日本語7割、英語3割」とコメントしています。

なるほど。

戸田さんはときに「誤訳が多い」と批判されることもあります。
まあ「意訳の極致」をどう感じるかの違いだと思いますが・・・。

日本で活躍する字幕翻訳者は多くないそうです。
せいぜい10人くらい。
これが20人になると、仕事がなくなってしまうとか。
狭い世界なのですねえ。

なお、字幕翻訳は外国では存在しないそうです。
すべて吹き替え版。
日本人は「あの俳優の生の声が聴きたい」という要望が多いため、字幕翻訳という職業が成り立つという説明でした。
日本人の特性に気づかされた一幕。

戸田さんの本格的デビュー作「地獄の黙示録」の裏話が興味深い。
※ 正確には「もくじろく」ではなく「もくしろく」です。
コッポラ監督は、日本のシンセサイザー奏者である冨田勲の音楽が大好きで、彼にこの映画の音楽を担当してもらおうと、ロケ地に何回も招待しました。
残念ながら契約の問題で実現はしなかったけれど。
冨田勲さんに付いていって通訳をしたのが戸田さんです。
コッポラ監督に気に入られ、なんと彼から字幕翻訳のご指名。
ほとんど新人状態の戸田さんは、うれしいけれど必死に取り組みました。



そこに大きなハードルが待っていました。
マーロン・ブランドのセリフの翻訳です。
マーロン・ブランドは最後の20分くらいにしか出演しませんが、謎めいた印象だけ残して消えていきます。

実は、コッポラ監督も彼には困ったそうです。
たくさんのギャラを払い、しかし脚本にはない謎めいたセリフを残して去って行ってしまったのが事実とのこと。
映画がまとまらない・・・。
コッポラ監督は悩み、自殺まで考えたそうです。
監督が理解できないことを、翻訳者が理解しろと言っても無理な話。
・・・なんてエピソードを聞けました。

それにしても冨田勲が音楽を担当した地獄の黙示録、見てみたかったなあ。

それから、司会者の鴻上さんが「私の脚本は短いってよく言われるんですが、今その理由がわかりました。私は映画の字幕で育ったのでそのクセができたようです」というカミングアウトは面白かった。


<内容紹介>
・字幕翻訳者 戸田奈津子
 映画字幕の第一線で活躍を続ける字幕翻訳者の戸田奈津子さんをゲストに招く。
 字幕翻訳者としてその名を知らない人はいないほどの戸田さん。国内の洋画歴代興行収入1位の「タイタニック」や「E・T」「マディソン郡の橋」など数々のヒット作を手掛けてきた。実は本格的なデビューは43歳の時。意外にも遅咲きだった戸田さんが、20年仕事を待ち続けた強い思いとは…。
 今回、鴻上尚史が“字幕づくり”で戸田さんに挑む。その出来栄えに戸田さんから驚きの声が上がった。女性字幕翻訳者の先駆者ともいえる戸田さんの映画へかける思いと飾らない素顔に迫る。

・ハリウッドスターとの交友
 80歳となった今も現役で活躍する戸田さん。2016年秋公開作品も2本手掛けている。
 これまで多いときは年間50本、週1本のペースで取り組んできた。そして戸田さんと言えば、来日したハリウッドスターの隣にはいつもその姿が…。しかし通訳としてデビューした経緯はかなり異例のものだった。実は英語が話せなかったという戸田さんに通訳者として仕事が舞い込んだワケとは…!? そして、20年来の友人であるトム・クルーズから毎年贈られる温かい心遣いを戸田さんが語った。
 超有名スターの意外な素顔と、その交友術が明らかに。

・映画少女が字幕に目覚めた“第三の男”
 戦前に生まれた戸田さん。父親は戸田さんが1歳の時に戦地で命を落とした。終戦後には、アメリカから入ってきた大量の映画に夢中になった戸田さん。中でも映画「第三の男」を見た戸田さんは、字幕に対する強烈な憧れを抱く。なんと映画館に50回ほど足を運んだ仰天エピソードも…。
 そんな戸田さんだが、大学卒業後は一般企業に就職。そして、わずか1年半で退職。どうしても映画の字幕翻訳を手掛けたいと、夢への一歩を歩み始める。しかしそこから夢にたどり着くまでは20年という長い道のりがかかった。
 なぜ、そこまで思い続けることができたのか…?映画字幕にかけた戸田さんの熱い思いに迫る。

・出世作「地獄の黙示録」の裏話
 43歳で本格的に字幕翻訳者としてデビューした戸田さん。フランシス・フォード・コッポラ監督の通訳兼ガイドを務めたことから、監督から直々に字幕翻訳者として指名を受けたという。超大作「地獄の黙示録」を機に字幕翻訳者としての地位を確立した戸田さん。数々のヒット作の字幕を手掛けることになる。劇中で繰り広げられる戸田さんならではの字幕術に感嘆の声が。
 さらに、「地獄の黙示録」主演のマーロン・ブランドの仰天エピソードを語った。大作映画の裏側で起きた出来事に、スタジオで驚きが広がった。その内容とは…!?

・鴻上尚史が“字幕づくり”に初挑戦
 2016年秋に公開する新作2本の字幕を手掛けた戸田さん。今回、字幕づくりの舞台裏を取材した。日頃何気なく目にする字幕だが、「1秒間に3文字まで」というルールの存在など字幕制作の裏側に納得と驚きが広がる。制限の中で光る戸田さんならではの字幕とは…!?
 単に英語ができるだけでは務まらないという戸田さん。最も大事にしているのは日本語だという。さらに今回、鴻上尚史が映画字幕に初挑戦する。1問目は戸田さんから「イイ線ね」と言われ、闘争本能に火が付いた鴻上が、2問目に披露した字幕とは…!?
 そのやり取りにスタジオも大盛り上がり。「字幕はあくまで映画を楽しむもの」と言う戸田さんの真骨頂ともいえる字幕づくりに迫る。


<参考>
(Wikipediaより)
 主演のマーロン・ブランドが撮影当時極度に肥満していたため、物語の設定を一部変更する必要が生じたこともあった。また、ブランドは、キャスティングや脚本に対して自己中心的な主張をすることも多く(役作りにより体から強烈な臭いを発していたデニス・ホッパーと一緒に撮影されることを拒否した)、遂には監督であるコッポラが心労で倒れる事態にまで陥ってしまう。トラブルは以降も続いたため、ストーリーも大きく変更され、後に脚本担当のジョン・ミリアスが不快感を表明するに至る。

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