映画鑑賞

昔の名画から最近上映の映画まで、国内外を問わず幅広く楽しんでいます。別世界へ連れて行ってくれる作品が好み(本棚6)。

「ククーシュカ ーラップランドの妖精ー」

2009-04-26 06:46:40 | 手持ちの映画ビデオ・DVD
2002年、ロシア映画。
監督:アレクサンドル・ロゴシュキン、
出演:アンニ=クリスティーナ・ユーソ、ヴィッレ・ハーパサロ、ヴィクトル・ヴィチコフ他。

しばらく前にブックオフで見つけました。DVDジャケットの寒々とした山肌の草原に佇む女性と二人の子どもの不思議な雰囲気に惹かれての購入でした。
題名の「ククーシュカ」とは鳥の「カッコー」の意味。
ロシア兵がフィンランドの狙撃兵をこう呼んだそうです。
関係ありませんが、その昔、小学校時代の私のあだ名は「カッコー」でした。
何となく親しみを感じました。

実際に観てみると何とも不思議なストーリー。
時は第二次世界大戦末期、北欧のフィンランドはロシアと戦っていました(そんな事実があったことさえ日本人にはなじみが薄いですね)。その戦争からはじき出された兵士2人と北欧の大地で自給自足生活をしている戦争未亡人の奇妙な共同生活が描かれています。
兵士の一人はフィンランド軍狙撃兵で反戦的行動から死刑囚となって拘束され自ら脱出。
もう一人はロシア軍大尉で仲間を裏切ったと秘密警察に連行途中に味方の爆撃機に誤爆され負傷。
このようなタイミングで出会い、始まった3人の共同生活ですが・・・何が奇妙かって、お互いの言葉が通じないのです。
フィンランド兵はフィンランド語、ロシア兵はロシア語、未亡人は土地のサーミ語。
字幕に出てくる会話の内容がほとんどかみ合っていません(空気とか表情を読めばもう少し通じるんじゃないかと思うほどです)。
ちぐはぐなんだけど飽きずに見れてしまうのは作り手の上手さでしょうか。

荒涼かつ寒々した風景が「異国」を感じさせます。
やや暗めのパステルカラーの映像は透明感が漂い美しい。
一番の見物は戦争未亡人のアンニのたくましさです。
厳寒の湖沼地方での一人暮らし、それも家畜(トナカイ)の世話や漁をしながらの自給自足生活を送る彼女。
戦死者を見つければ埋葬し、怪我人がいれば自宅まで運んで看病をし、フィンランド兵が尋ねてくれば「4年振りの男、神様がご褒美をくださった」とベッドへ招き入れる・・・この時の表情が妖しい魅力を放っています。
男同士が誤解から発砲して一人が重傷を負ったときにはシャーマンと化し死の国から若者を呼び戻しました。

一種の戦争映画(反戦映画?)ではありますが、私には女性のたくましさを描いた作品に受け取れました。
女性は大地に根を下ろし、家を守り、子供を産んで育て、遺伝子を未来へ繋ぐ主役です。
たぶん、世界中どの国でもそう変わらない真実だと思います。
男性はその女性を守り食べ物を運び(この映画の中ではやっていませんけど)、遺伝子を残す手伝い(?)をし、外で戦って終いにはのたれ死ぬ。
そんな原始的な、動物的な有り様を描きたかったのかなあ。
女性が男性のまねをするのではなく、誇りを持って上記の役割を担うことがこれからの社会のキーワードになるような気がします。

映画祭ではいろんな賞を獲得してるようです。
★ 5点満点で4点。


コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。