映画鑑賞

昔の名画から最近上映の映画まで、国内外を問わず幅広く楽しんでいます。別世界へ連れて行ってくれる作品が好み(本棚6)。

「家宅の人」

2009-04-25 19:09:23 | 手持ちの映画ビデオ・DVD
1986年、日本映画。
監督:深作欣二、原作:壇一雄、
出演:緒方拳、いしだあゆみ、原田美枝子、松坂慶子、壇ふみ他。

太宰治の映画「ピカレスク」を観ていたら、太宰の文壇仲間の一人に壇一雄がいました。
そのつながりで、手元にあったこのビデオを観てみました。

作家壇一雄の同名小説を映画化したものです。
ストーリーは彼の実生活をそのまま描いたもので、彼自身「不倫小説」と呼んでいます。
その頃の作家のイメージは、酒を飲みながら議論して世の中を嘆き、プライドが高く扱いにくい人達・・・しかし壇は違います。
一言でいえば「カッコ悪いけど憎めないおじさん」。
彼は自分に素直でウソをつけない。
人間が大好きでいつも一生懸命。
若い娘を好きになって大人の関係になれば「彼女と事を起こしてしまいました」と妻に不倫の報告をする始末。

とにかく「倫理」「道徳」という視点からするとメチャクチャな人です。
人間の業をすべて肯定し、包み隠さず書いた作家。
彼の作品は「人間賛歌」です。
自身の生活をそのまま書いたのが「家宅の人」ですが、その小説が賞を取ったり、今も読み継がれている理由は彼自身の生き方が魅力的なのでしょう。

不倫相手役は原田美枝子が演じていますが、彼女の裸体がまぶしく美しい。
情事のシーンもエロティックというより男女が求め合う「命の賛歌」のように感じました。

妻に愛想をつかれ、愛人とも殴り合いのケンカをして帰る場所がなくなった壇は都落ちして放浪の旅に出ます。
行く先々の日本の風景が美しく印象的です。
海で漁をしている光景、島での質素な生活と悲哀、雪降る中の山中行・・・。
昭和の記録というか、昔話の世界と錯覚を起こしそうでした。
昔、宮本常一の「忘れられた日本人」を読んだときと同じ感覚が蘇りました。

彼は日本のみならず世界を放浪したようです。
スペインの海辺の街に数年間滞在したことがあり、そこに「壇ストリート」という名前の通りがあるとTVで紹介していました。

壇の次男が日本脳炎に罹患して一命は取り留めたものの後遺症が残り寝たきり状態で家に帰ってくるシーンが印象的です。
病気が家族に暗い影を投げかけました。
私は小児科医ですので、ちょっと予備知識を。
日本脳炎という感染症は1960年代の日本において数千人の患者を記録し、死亡率は約30%、後遺症も約15%残り、罹ったら最後、半分くらいしか治らない恐ろしい病気です。
近年、日本脳炎ワクチンの副反応で重い後遺症が1人に確認され、約4年間事実上日本脳炎ワクチンが封印されてきました。
この間に罹患・発症した子どもは2人。
この5月に新ワクチンが発売され、再開される予定です。

実は壇一雄は私が卒業した高校の先輩です。
校庭の片隅に記念碑がありました。
書家の相田みつをさんも高校の先輩です。
母校は個性豊かな人物を輩出しているのですねえ。

壇が太宰治の記念碑除幕式に参列すべく青森に愛人と共に出かけた時、蔦温泉に立ち寄り、奥入瀬渓流を彼女と散策する場面があります。
私は学生時代に青森県で過ごしましたので、その風景をとても懐かしく拝見しました。
当時つき合っていた年上の彼女と、映画と同じように奥入瀬を散策したことが思い出されます。
二人で記念写真を撮ったなあ・・・もう20年以上前の恋物語ですが・・・胸の奥が少し疼きました。

「ピカレスク」とは雲泥の差。監督の力量の違いでしょうか。
★ 5点満点で4.5点。

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