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詩人 川崎 洋「こちら側と向こう側」

2017年03月20日 | 詩人
詩人 川崎 洋「こちら側と向こう側」

私に 川崎 洋さんと云う詩人が居ることを教えてくれたのは
友人で詩人の山村新一さんでした。


「こちら側と向こう側」

柵っていったい何ですか
柵のこちら側と向こう側だなんて
ああ可笑しい
棒杭の一本一本に
どんな意味があるんですか
並べて土に打ち込めばいいと思ってる
そうすりや
つながったような感じがするんですか
どうかしてやしませんか
何かのおまじないですか
柵って何ですか
柵のこちら側と向こう側だなんて
元来すうっと歩いていけばそれでいいのに
どうってこともないのに
柵だなんて
そればかりじゃない
柵のこちら側では喜びが
向こう側では悲しみだなんて
すうっと歩いていけば
ただそれだけの話だったのに
柵があって
向こう側へ行けば殺されてしまう
なんて
柵ってなんですか
こちら側から向こう側へ行けないなんて
そこの所でこちら側へ廻れ右
向こう側も
こちらを向いて歩いてきて
そこの所で
くるりと向こうを向く
しょうがないなあなんていいながら
柵ってなんですか
草や木が生えているのっぺらの大地に
そいつがあって それで
こっち側と向こう側
だなんて
棒杭が並んでいて
それに針金が絡まっていて
同じ位無造作に
死体が絡まっていて
向こう側とこっち側
向こうで
出ていけ

こっちでは
やあいらっしゃい
だなんて
柵っていったい何ですか
柵のこちら側と向こう側だなんて



川崎 洋さんのプロフィール



1944年福岡に疎開。
八女高校卒、父が急死した
1951年に西南学院専門学校英文科(現:西南学院大学)を中退。
上京後は横須賀の米軍キャンプなどに勤務。
1948年頃より詩作を始め、
1953年茨木のり子らと詩誌「櫂」を創刊。
谷川俊太郎らを同人に加え、活発な詩作を展開。
1955年詩集『はくちよう』を刊行。
1957年から文筆生活に入る。
日本語の美しさを表現することをライフワークとし、
全国各地の方言採集にも力を注ぐ。

1971年には文化放送のラジオドラマ「ジャンボ・アフリカ」の脚本で、
放送作家として初めて芸術選奨文部大臣賞を受ける。

また1982年からは読売新聞紙上で「こどもの詩」の選者を務め、
寄せられた詩にユーモラスであたたかな選評を加え人気を博す。
主要著書は下を参照。
主なラジオ脚本に「魚と走る時」「ジャンボ・アフリカ」「人力飛行機から蚊帳の中まで」など。
作曲された詩は数多い。歌の作詞経験も豊富で、
NHK全国学校音楽コンクールでは4回作詞を担当した
(「きみは鳥・きみは花」「家族」「海の不思議」「風になりたい」)。
1987年には詩集「ビスケットの空カン」で第17回高見順賞を、
1998年には第36回藤村記念歴程賞を受賞。


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