谷中の寺に「かねてお願い致しておりました通りに手配をお願い致します。」と電話して一旦、家に戻ってベッドにころがりながら考えた。
何時もと変わらなく生活しよう。
体重計に乗り血圧を測った。予想しない事だったが血圧も脈拍も異常値だった。2回測ったが最高血圧が160に達しており、脈が80を超えていた。自分では冷静に行動しているつもりなのだが、体は正直な反応を示していた。
それはそれとして受け入れるしか無い。風呂に入り、いつも通りの朝食を採った。普通に食べられた。
母の友人のお二人と大阪の隣家にも顛末を報告し病院に戻り寺まで亡がらを運んでくれる車を待った。
病院の見送りの方には「我が儘な患者でしたが良くしていただいて有り難う」と礼を申し述べた。
寺で納棺が終わり、住職の奥様と明日以降の話をする。いわゆる葬儀をしないとなると事はシンプルである。正午少し過ぎに挨拶をして谷中の坂を下った。
母とは必ず車で来ていたので根津の街を歩く事は余り無い。食欲はあるようだ。以前から車で通って気になっていた貝の店は客が一人もおらず避けることにする。何軒か見て歩くうち、言問通りから数メートル入った所に豆腐料理の店を発見しメニューと客の入りをみて躊躇する事無く入る。
薄揚げも、掬い豆腐も美味しい、次にみそ汁とショウガご飯が出て是で充分と思ったらまだ何品かつくお得なランチを美味しく食べられた。
大田区役所で必要な手続きを済ませて家に帰る途中で晩飯の事を考える。人生で特別な日だからといって弔問客を接待する訳でないのだから外食で済ますのはいけなかろう。家で作って食べようと魚屋により鯛の腹の部分を買う。家に帰って「そういえば包丁が切れない」と思い出し砥石を出した。
何故か最初は上手く研げなかったが無事3本研ぎ終えた。
「買い物しなくちゃ」と雨の中スーパーに出向く。野菜を特価で買い、胸肉も3割引で買う。モヤシも買った。これは明日ひげ根を取ってナムルを作る積もりである。
晩飯は果たして食えるのか?不安だったが、慣れたレシピをチョイスして白ワインを飲むことにする。薄造りにした鯛の脂が載っていなくて不味かった以外はゴーヤーの浅漬けも胸肉とセロリのマスタード炒めも上手に出来た。デザートのぶどうも美味しく食べて第一日の食事を無事終えた。このペースで行けるのか?
今日はまだまだ気が張っていますからね。三日経ったらどんなメンタルコンディションか甚だ心もとない。
でも三日間の間に自分のメンタルを引き上げる手段は幾つか考えよう。
そう、普段の生活リズムを守るのだ。