ポッケはまだ首輪が出来ない。
体重は4Kg越えたから大丈夫な年頃だが、やはり骨格は1歳半のお子様なので、
首輪をするとまだ口に引っかかっる危険性がある。
以前、一度だけしたことがあったのだが、口に首輪が下りてきてパニックになってしまい、
取ってあげようにも手が付けられず、口元が切れて血まみれになった事があったからだ。
だが、今日のように天気の良い日だと、家の前くらいなら外に出してあげたいので
首輪は飼い猫の目印として付けた方が安心なのだ。
で、付けてみたら、動かない。違和感を感じているのか、トラウマがあるのか、
後ずさりしたり、動きが変で、妙に大人しくなってしまうのだ。
まるで孫悟空が頭にしてる「緊箍児」(きんこじ)のように、悪さもしないのがおかしい。
体重は4Kg越えたから大丈夫な年頃だが、やはり骨格は1歳半のお子様なので、
首輪をするとまだ口に引っかかっる危険性がある。
以前、一度だけしたことがあったのだが、口に首輪が下りてきてパニックになってしまい、
取ってあげようにも手が付けられず、口元が切れて血まみれになった事があったからだ。
だが、今日のように天気の良い日だと、家の前くらいなら外に出してあげたいので
首輪は飼い猫の目印として付けた方が安心なのだ。
で、付けてみたら、動かない。違和感を感じているのか、トラウマがあるのか、
後ずさりしたり、動きが変で、妙に大人しくなってしまうのだ。
まるで孫悟空が頭にしてる「緊箍児」(きんこじ)のように、悪さもしないのがおかしい。
しろは食欲も段々と戻ってきたので、少し安心。
「願わくは花の下にて春死なんそのきさらぎの望月の頃」なんて西行の歌が頭をよぎり、
棺には桜や紅梅の花びらを敷き詰めてやろうくらいに、本気で思っていたのだが、
無事、誕生日を迎えられた。でも、本当にこれが最後かもなあ・・・。
いや、そんなこと、考えちゃダメだ。めでたい、めでたい!
さて、めでたいと言えばポッケだが、予防接種に行った。本当に今年は序盤から金がかかる。
前回ポッケが病院へ行ったのは、避妊手術の為に元旦から間もない頃だった。
あれから、およそ3ヶ月経ったわけだが、ナンと体重が1kgも増えて4.1kgになっていた。
さすが、大食漢お嬢さんなだけある。でも、まだ1歳6ヶ月なのだが・・・。
落ち着きがないのはいつものことで、病院のスタッフにもシャーっと言って威嚇する。
写真を撮り直そうにもキョロキョロしてダメ。
仕方がないので、診察台の上で肛門に体温計を突っ込まれている時にパシャッとやられた。
お陰で豆鉄砲を喰らった鳩の様なおかしな顔の写真になっていた。
「願わくは花の下にて春死なんそのきさらぎの望月の頃」なんて西行の歌が頭をよぎり、
棺には桜や紅梅の花びらを敷き詰めてやろうくらいに、本気で思っていたのだが、
無事、誕生日を迎えられた。でも、本当にこれが最後かもなあ・・・。
いや、そんなこと、考えちゃダメだ。めでたい、めでたい!
さて、めでたいと言えばポッケだが、予防接種に行った。本当に今年は序盤から金がかかる。
前回ポッケが病院へ行ったのは、避妊手術の為に元旦から間もない頃だった。
あれから、およそ3ヶ月経ったわけだが、ナンと体重が1kgも増えて4.1kgになっていた。
さすが、大食漢お嬢さんなだけある。でも、まだ1歳6ヶ月なのだが・・・。
落ち着きがないのはいつものことで、病院のスタッフにもシャーっと言って威嚇する。
写真を撮り直そうにもキョロキョロしてダメ。
仕方がないので、診察台の上で肛門に体温計を突っ込まれている時にパシャッとやられた。
お陰で豆鉄砲を喰らった鳩の様なおかしな顔の写真になっていた。
やはり、昨晩もたいして眠れず、台所でビールを飲んでいた。
みんな寝静まった部屋には、ヒーターのファンの音だけが僅かに響いている。
と、扉に付けた猫扉がゆっくりと開き、やがてパタンと小さな音を立てた。
ポッケは、ボクが台所に居ると、きまって何か美味しいものにありつけると思ってノコノコお相伴に来る。
昼、しろの為に用意してあったごはんもミルクも全部平らげたのは恐らくポッケだ。
空気を読めない奴ってのは全くどこにも居るものだ。
でも今は、どんな出来そこないだろうが悪党だろうが構わないから、傍に居て欲しいと思った。
だが、昨晩だけは違っていて、眼前にあるのはなんと、よろよろとフラフラと歩くしろの姿だった。
目を疑うというのはこのことだ。やがてボクの足下までやってきて、行儀良く座った。
大概の猫は人の膝に乗ろうとするとジャンプするが、しろは可なり前からそれが出来ない。
出来るのは、ボクの足に両手を掛けて持ち上げてもらうのを唯ひたすら待つ事だけなのだ。
でも、今やそれすらも出来ず、手を床からほんの数センチ浮かせるのがやっとのようだった。
両脇に手を入れ抱き上げると、指をペロペロ舐めたり、歯の一本もない高級娼婦のような口で
噛みついたりする。人の顔をしげしげと眺めたかと思うと、微かにウゥンとうなり声をあげた。
ごはんを出せという時の声だ。慌ててしろ用の缶詰を開けて、お皿に乗せた。
・・・・・。食べない。
てのひらで与えてみた。
・・・・・。やはり、食べない。
そのまま数分間、しろもボクもじーっとしていた。
手のひらのごはんはボクの体温で温かくなって、やがて脂分だけが溶け出して指の隙間を流れていた。
仕方がないので、しろをテーブルに乗せ、ごはんは猫のお皿に戻すことにした。
が、その時、一瞬気が変わってもう一度だけしろの鼻に近づけてみた。
食べた!
お義理で舌をツンツンとつけただけといった程度だが。
猫用ミルクを差し出してみた。
ペチペチと小さな音を立てて飲んでいる。その調子だぞ、しろ!
ミルクの滴であごがびしょびしょになったしろをみて、またボロボロ泣いていた。
そうだ、しろは普段でもごはんが冷たいと食べないのだったと思い、レンジでチンして出したら、
見向きもせず、そそくさと逃げるように寝床に戻っていった。
みんな寝静まった部屋には、ヒーターのファンの音だけが僅かに響いている。
と、扉に付けた猫扉がゆっくりと開き、やがてパタンと小さな音を立てた。
ポッケは、ボクが台所に居ると、きまって何か美味しいものにありつけると思ってノコノコお相伴に来る。
昼、しろの為に用意してあったごはんもミルクも全部平らげたのは恐らくポッケだ。
空気を読めない奴ってのは全くどこにも居るものだ。
でも今は、どんな出来そこないだろうが悪党だろうが構わないから、傍に居て欲しいと思った。
だが、昨晩だけは違っていて、眼前にあるのはなんと、よろよろとフラフラと歩くしろの姿だった。
目を疑うというのはこのことだ。やがてボクの足下までやってきて、行儀良く座った。
大概の猫は人の膝に乗ろうとするとジャンプするが、しろは可なり前からそれが出来ない。
出来るのは、ボクの足に両手を掛けて持ち上げてもらうのを唯ひたすら待つ事だけなのだ。
でも、今やそれすらも出来ず、手を床からほんの数センチ浮かせるのがやっとのようだった。
両脇に手を入れ抱き上げると、指をペロペロ舐めたり、歯の一本もない高級娼婦のような口で
噛みついたりする。人の顔をしげしげと眺めたかと思うと、微かにウゥンとうなり声をあげた。
ごはんを出せという時の声だ。慌ててしろ用の缶詰を開けて、お皿に乗せた。
・・・・・。食べない。
てのひらで与えてみた。
・・・・・。やはり、食べない。
そのまま数分間、しろもボクもじーっとしていた。
手のひらのごはんはボクの体温で温かくなって、やがて脂分だけが溶け出して指の隙間を流れていた。
仕方がないので、しろをテーブルに乗せ、ごはんは猫のお皿に戻すことにした。
が、その時、一瞬気が変わってもう一度だけしろの鼻に近づけてみた。
食べた!
お義理で舌をツンツンとつけただけといった程度だが。
猫用ミルクを差し出してみた。
ペチペチと小さな音を立てて飲んでいる。その調子だぞ、しろ!
ミルクの滴であごがびしょびしょになったしろをみて、またボロボロ泣いていた。
そうだ、しろは普段でもごはんが冷たいと食べないのだったと思い、レンジでチンして出したら、
見向きもせず、そそくさと逃げるように寝床に戻っていった。
こうして誰が読むとも知らないものも、書く事だけで自分の心の平静を保てる気がする。
ボクは神経質だからか、かれこれここ数日は3時間以上の連続した睡眠もとれないでいる。
明け方というにはまだ随分と早い時刻に目が覚めてしまって、しろの容態を看る。
黄疸が出ている点、白血球が軒並み増加している点・・・。こんなのはボクには手の施しようがない。
ボクが出来ることはなるべく部屋から出ないよう見張ることと、ひきつけを起こした時にすぐに気付くことだけだ。
体温が下がっているので、布団に入れ、肉球をずっと握って寝ることにしているが、
テンポの早くて荒い呼吸は、耳元で結構な音を立てるため、なかなか眠ることなど出来ない。
元気な時には肉球を撫でると手足をこれ以上広がらないという位にパーにしてみせる。
何の反応もない今となっては、冷たい肉球をこれ以上冷たくするまいと一生懸命握って温めるだけだ。
よく見ると、口でも息をしているみたいで、余程苦しいに違いない。
こんな、かなり望みを失った状況でも、まだしろは頑張っている。
ボクは悲観して、ペットロスの記事を見たりしてしまうが、はたと気が付いた。
やがて訪れるかも知れない己の悲しみなど考える前に、今はしろの事だけを考えなくては
しろに失礼というものだ。
まだ生きているしろに、今までどうもありがとう、でもないだろう。
でも、話しかけられるのは生きているうちでもあるという現実を考えると、心の整理が付かなくなる。
言葉に窮して、誕生日には初鰹だよなどと、こんな事態に至ってどうでもいいような話をしてみる。
ポッケが近づいてきて、執拗にしろの頭を舐め回し、毛が逆立って変な髪型になる。
みんながしろのこと愛してるよ、と言葉にすると、泣きそうになった。
ペットに限らず、すべからく自分の愛する者が亡くなった時に、強く思う事がある。
それは、もう一度だけでいいから話をしたい、会いたい、という思いが生ずることだ。
何故、無意識にでも二度でなくて一度だけと考えるのだろうか。
それは、それだけ現実にはあり得ない話だと分かっている裏返しでもある。
会おうと思っていつでも会える人にこそ、会いたいなどと切には願わないものだ。
何度かそういう経験をすると、あらゆるものに接する気持ちは変わってきている気がする。
でも、別れというものは決して慣れて平気になるものでもない。
ボクは神経質だからか、かれこれここ数日は3時間以上の連続した睡眠もとれないでいる。
明け方というにはまだ随分と早い時刻に目が覚めてしまって、しろの容態を看る。
黄疸が出ている点、白血球が軒並み増加している点・・・。こんなのはボクには手の施しようがない。
ボクが出来ることはなるべく部屋から出ないよう見張ることと、ひきつけを起こした時にすぐに気付くことだけだ。
体温が下がっているので、布団に入れ、肉球をずっと握って寝ることにしているが、
テンポの早くて荒い呼吸は、耳元で結構な音を立てるため、なかなか眠ることなど出来ない。
元気な時には肉球を撫でると手足をこれ以上広がらないという位にパーにしてみせる。
何の反応もない今となっては、冷たい肉球をこれ以上冷たくするまいと一生懸命握って温めるだけだ。
よく見ると、口でも息をしているみたいで、余程苦しいに違いない。
こんな、かなり望みを失った状況でも、まだしろは頑張っている。
ボクは悲観して、ペットロスの記事を見たりしてしまうが、はたと気が付いた。
やがて訪れるかも知れない己の悲しみなど考える前に、今はしろの事だけを考えなくては
しろに失礼というものだ。
まだ生きているしろに、今までどうもありがとう、でもないだろう。
でも、話しかけられるのは生きているうちでもあるという現実を考えると、心の整理が付かなくなる。
言葉に窮して、誕生日には初鰹だよなどと、こんな事態に至ってどうでもいいような話をしてみる。
ポッケが近づいてきて、執拗にしろの頭を舐め回し、毛が逆立って変な髪型になる。
みんながしろのこと愛してるよ、と言葉にすると、泣きそうになった。
ペットに限らず、すべからく自分の愛する者が亡くなった時に、強く思う事がある。
それは、もう一度だけでいいから話をしたい、会いたい、という思いが生ずることだ。
何故、無意識にでも二度でなくて一度だけと考えるのだろうか。
それは、それだけ現実にはあり得ない話だと分かっている裏返しでもある。
会おうと思っていつでも会える人にこそ、会いたいなどと切には願わないものだ。
何度かそういう経験をすると、あらゆるものに接する気持ちは変わってきている気がする。
でも、別れというものは決して慣れて平気になるものでもない。
今日は、呼吸も幾分以前よりゆっくりになった。
くすりのお陰で、大夫鼻も通るようになった。
でも、相変わらず食欲はなく、肩で息をしているふうで痛々しい。
鼻やあごを拭いてあげようと持ち上げると、骨と皮だけにやせこけた体に胸が痛む。
水を飲んだあとの水滴を拭ってあげたティッシュで、気が付くと自分の目頭も押さえていた。
偶に手を突っ張って伸びをしたり、鼻をぐりぐりこすりつけられたり、たったそれだけなのに
元気になったんじゃないかと勝手に思ってしまうが、冷静に考えるとやはり状況はあまり変わらない。
この猫はもう十数年以上前の話になるが、勝手に家にやってきて自然と飼い猫になった。
実は当初は、いつも2匹で現れていたので、それらを便宜上「しろいの」「くろいの」と区別して呼んでいた。
くろいのは人間に警戒心が強く、決して人に触らせる事も家に上がり込む事もなかったが、
しろいのは恐る恐るではあるけれど、玄関の辺りまで入って来るようになった。
それからは早いもので、ほどなく家族に加わったのだが、名前がその時のままなのだ。
だから、病院での登録名は「しろいのちゃん・雑種」となっている。
2匹は同じ首輪をしていたし、しろは避妊も済んでいたので、どこかの飼い猫だった事は間違いない。
捨てられたのか迷ったのか、それまで歩んできた半生など事情は知る由もない。
初めて見た時の印象は、おおよそ白猫というにほど遠い、薄汚れた灰色の猫だった。
そんな猫でも、期せずして、ボクの飼った初めての猫なので、特別な存在なのだ。
このような出会いであった為、年齢も誕生日も分からない。
それでは不憫だろうと、語呂で4月6日はしろの誕生日と勝手に定めてお祝いもしてきた。
もうすぐ誕生日だから、おいしいものを食べられるようになって欲しい。
くすりのお陰で、大夫鼻も通るようになった。
でも、相変わらず食欲はなく、肩で息をしているふうで痛々しい。
鼻やあごを拭いてあげようと持ち上げると、骨と皮だけにやせこけた体に胸が痛む。
水を飲んだあとの水滴を拭ってあげたティッシュで、気が付くと自分の目頭も押さえていた。
偶に手を突っ張って伸びをしたり、鼻をぐりぐりこすりつけられたり、たったそれだけなのに
元気になったんじゃないかと勝手に思ってしまうが、冷静に考えるとやはり状況はあまり変わらない。
この猫はもう十数年以上前の話になるが、勝手に家にやってきて自然と飼い猫になった。
実は当初は、いつも2匹で現れていたので、それらを便宜上「しろいの」「くろいの」と区別して呼んでいた。
くろいのは人間に警戒心が強く、決して人に触らせる事も家に上がり込む事もなかったが、
しろいのは恐る恐るではあるけれど、玄関の辺りまで入って来るようになった。
それからは早いもので、ほどなく家族に加わったのだが、名前がその時のままなのだ。
だから、病院での登録名は「しろいのちゃん・雑種」となっている。
2匹は同じ首輪をしていたし、しろは避妊も済んでいたので、どこかの飼い猫だった事は間違いない。
捨てられたのか迷ったのか、それまで歩んできた半生など事情は知る由もない。
初めて見た時の印象は、おおよそ白猫というにほど遠い、薄汚れた灰色の猫だった。
そんな猫でも、期せずして、ボクの飼った初めての猫なので、特別な存在なのだ。
このような出会いであった為、年齢も誕生日も分からない。
それでは不憫だろうと、語呂で4月6日はしろの誕生日と勝手に定めてお祝いもしてきた。
もうすぐ誕生日だから、おいしいものを食べられるようになって欲しい。
ここのところ、しろちゃんことしろいのの容態が極めて悪いため、二日に一度は病院へ通っている。
もう4~5日もごはんを食べられず、体重もとうとう2キロを切ってしまった。
今日は血液検査とレントゲン撮影、皮下注射。
鼻水にうっすらと血が混じっていたので、気になっていたのだが、
やはりどうやら肺が原因らしく、心臓や気管を圧迫しているらしい。
レントゲンを見ながら、最悪腫瘍かもしれないという一言が、突き刺さった。
今日は一応、呼吸も大夫落ち着きつつあるが、予断を許さない状況だ。
診療が終わり待合室へ戻ると、診療時刻もとうに過ぎているのに別の急患の猫が連れられてきた。
飼い主のおばさんが2本の管の生えた容器を片手に持っているのだが、
よく見るとそのうちの一本の先は猫の口に繋がっていた。
猫もタンがからむのかどうか分からないのだが、どうやら吸引してあげる器具らしい。
その猫の鳴き声が何とも悲痛な感じに連続していて、胸が痛んだ。
飼い主のおばさんの憔悴しきった姿が、父が倒れて集中治療室にいた時の母のようで、
そんな記憶とだぶって、むしろおばさんを労って病院をあとにした。
助手席にしろを乗せ、ゆっくりと走り出すと、よろけながら立ち上がって景色を眺める。
自分の身に何が起こっているのかさえ理解できないというのに、
連日、注射を打たれたり、血液を採られたり、おいしくない薬を無理やり飲ませられたり、
おしりに体温計入れられたり・・・。なんて酷い事ばかりするんだろう?と、さぞ、不安だろう。
交差点で信号待ちをしていると、周囲の喧騒に怯えて鳴き声をあげる。
ごはんを食べていないので鳴き声も声にならない程にか細く途切れ途切れだ。
もう、高齢の猫なので覚悟はしておくようにと、あの獣医さんに言われてからもう5年も経った。
だが、こうして弱っている姿にいざ直面すると、へこんでしまう。
もう4~5日もごはんを食べられず、体重もとうとう2キロを切ってしまった。
今日は血液検査とレントゲン撮影、皮下注射。
鼻水にうっすらと血が混じっていたので、気になっていたのだが、
やはりどうやら肺が原因らしく、心臓や気管を圧迫しているらしい。
レントゲンを見ながら、最悪腫瘍かもしれないという一言が、突き刺さった。
今日は一応、呼吸も大夫落ち着きつつあるが、予断を許さない状況だ。
診療が終わり待合室へ戻ると、診療時刻もとうに過ぎているのに別の急患の猫が連れられてきた。
飼い主のおばさんが2本の管の生えた容器を片手に持っているのだが、
よく見るとそのうちの一本の先は猫の口に繋がっていた。
猫もタンがからむのかどうか分からないのだが、どうやら吸引してあげる器具らしい。
その猫の鳴き声が何とも悲痛な感じに連続していて、胸が痛んだ。
飼い主のおばさんの憔悴しきった姿が、父が倒れて集中治療室にいた時の母のようで、
そんな記憶とだぶって、むしろおばさんを労って病院をあとにした。
助手席にしろを乗せ、ゆっくりと走り出すと、よろけながら立ち上がって景色を眺める。
自分の身に何が起こっているのかさえ理解できないというのに、
連日、注射を打たれたり、血液を採られたり、おいしくない薬を無理やり飲ませられたり、
おしりに体温計入れられたり・・・。なんて酷い事ばかりするんだろう?と、さぞ、不安だろう。
交差点で信号待ちをしていると、周囲の喧騒に怯えて鳴き声をあげる。
ごはんを食べていないので鳴き声も声にならない程にか細く途切れ途切れだ。
もう、高齢の猫なので覚悟はしておくようにと、あの獣医さんに言われてからもう5年も経った。
だが、こうして弱っている姿にいざ直面すると、へこんでしまう。