やはり、昨晩もたいして眠れず、台所でビールを飲んでいた。
みんな寝静まった部屋には、ヒーターのファンの音だけが僅かに響いている。
と、扉に付けた猫扉がゆっくりと開き、やがてパタンと小さな音を立てた。
ポッケは、ボクが台所に居ると、きまって何か美味しいものにありつけると思ってノコノコお相伴に来る。
昼、しろの為に用意してあったごはんもミルクも全部平らげたのは恐らくポッケだ。
空気を読めない奴ってのは全くどこにも居るものだ。
でも今は、どんな出来そこないだろうが悪党だろうが構わないから、傍に居て欲しいと思った。
だが、昨晩だけは違っていて、眼前にあるのはなんと、よろよろとフラフラと歩くしろの姿だった。
目を疑うというのはこのことだ。やがてボクの足下までやってきて、行儀良く座った。
大概の猫は人の膝に乗ろうとするとジャンプするが、しろは可なり前からそれが出来ない。
出来るのは、ボクの足に両手を掛けて持ち上げてもらうのを唯ひたすら待つ事だけなのだ。
でも、今やそれすらも出来ず、手を床からほんの数センチ浮かせるのがやっとのようだった。
両脇に手を入れ抱き上げると、指をペロペロ舐めたり、歯の一本もない高級娼婦のような口で
噛みついたりする。人の顔をしげしげと眺めたかと思うと、微かにウゥンとうなり声をあげた。
ごはんを出せという時の声だ。慌ててしろ用の缶詰を開けて、お皿に乗せた。
・・・・・。食べない。
てのひらで与えてみた。
・・・・・。やはり、食べない。
そのまま数分間、しろもボクもじーっとしていた。
手のひらのごはんはボクの体温で温かくなって、やがて脂分だけが溶け出して指の隙間を流れていた。
仕方がないので、しろをテーブルに乗せ、ごはんは猫のお皿に戻すことにした。
が、その時、一瞬気が変わってもう一度だけしろの鼻に近づけてみた。
食べた!
お義理で舌をツンツンとつけただけといった程度だが。
猫用ミルクを差し出してみた。
ペチペチと小さな音を立てて飲んでいる。その調子だぞ、しろ!
ミルクの滴であごがびしょびしょになったしろをみて、またボロボロ泣いていた。
そうだ、しろは普段でもごはんが冷たいと食べないのだったと思い、レンジでチンして出したら、
見向きもせず、そそくさと逃げるように寝床に戻っていった。
みんな寝静まった部屋には、ヒーターのファンの音だけが僅かに響いている。
と、扉に付けた猫扉がゆっくりと開き、やがてパタンと小さな音を立てた。
ポッケは、ボクが台所に居ると、きまって何か美味しいものにありつけると思ってノコノコお相伴に来る。
昼、しろの為に用意してあったごはんもミルクも全部平らげたのは恐らくポッケだ。
空気を読めない奴ってのは全くどこにも居るものだ。
でも今は、どんな出来そこないだろうが悪党だろうが構わないから、傍に居て欲しいと思った。
だが、昨晩だけは違っていて、眼前にあるのはなんと、よろよろとフラフラと歩くしろの姿だった。
目を疑うというのはこのことだ。やがてボクの足下までやってきて、行儀良く座った。
大概の猫は人の膝に乗ろうとするとジャンプするが、しろは可なり前からそれが出来ない。
出来るのは、ボクの足に両手を掛けて持ち上げてもらうのを唯ひたすら待つ事だけなのだ。
でも、今やそれすらも出来ず、手を床からほんの数センチ浮かせるのがやっとのようだった。
両脇に手を入れ抱き上げると、指をペロペロ舐めたり、歯の一本もない高級娼婦のような口で
噛みついたりする。人の顔をしげしげと眺めたかと思うと、微かにウゥンとうなり声をあげた。
ごはんを出せという時の声だ。慌ててしろ用の缶詰を開けて、お皿に乗せた。
・・・・・。食べない。
てのひらで与えてみた。
・・・・・。やはり、食べない。
そのまま数分間、しろもボクもじーっとしていた。
手のひらのごはんはボクの体温で温かくなって、やがて脂分だけが溶け出して指の隙間を流れていた。
仕方がないので、しろをテーブルに乗せ、ごはんは猫のお皿に戻すことにした。
が、その時、一瞬気が変わってもう一度だけしろの鼻に近づけてみた。
食べた!
お義理で舌をツンツンとつけただけといった程度だが。
猫用ミルクを差し出してみた。
ペチペチと小さな音を立てて飲んでいる。その調子だぞ、しろ!
ミルクの滴であごがびしょびしょになったしろをみて、またボロボロ泣いていた。
そうだ、しろは普段でもごはんが冷たいと食べないのだったと思い、レンジでチンして出したら、
見向きもせず、そそくさと逃げるように寝床に戻っていった。