一番の趣味は音楽鑑賞である。食事と睡眠以外は何かしらの音楽が流れている。美しい旋律を嗜好するのでジャンルは問わないが、音楽家には入れ込む方である。
数あるレパートリーの中で、つい正座をして畏まって聴いてしまう曲がいくつもある。残念ながら、新居にある今の研究室には正座をする場所はなくなってしまったが、たまさかにその曲を聴くと決意した時は、仕事を中断し、パソコンのスピーカーではなく、それと向かい側に位置するコンポの前に、「正座をする心構え」で対座し、少し音量を上げ、瞑目して聴くのである。
コンポと言っても、今や残っているのは30年以上も前の古いDENONのプリメインアンプとLo-Dの25cm 3wayスピーカーのみ、しかも音源はパソコンであり、これらに高中域補強用のブックシェルフスピーカーとスピーカーセレクターを追加した、マニアとはほど遠い代物である。かつては理想とするオーデイオはあったのであるが、CD時代に入り様々な理由で音を追求するのは諦めた。
さて、私の音楽愛を掘り起こしてみる気にはなったものの、最初に誰から始めるか悩んだ。心の友はビーチボーイズやモンキーズ、それに上々颱風等であるが、崇拝するのはレスターヤングにバドパウエル、そしてルイアームストロング、最近ではスタンゲッツ。これらの中からすぐにレスターとパウエルに絞られたが、私にとってはどちらも同格の神である。決められない。ただし、神になったのはパウエルの方が早い。そこで、先輩を立ててパウエルにする。
バドパウエルは1924年ニューヨーク生まれの屈指の天才ジャズピアニストであった。類い希な歌心と表現力、疾走感、そして狂気を合わせ持っていたが、個性が強すぎ、また、よく唄う(唸るとも言う)ためアレルギーを起こす人も多い。超天才故に精神を病み、絶頂期はごく短く、40才ほどで寂しく世を去った。
若い頃に彼の初リーダーアルバムであるBud Powell Trio「バドパウエルの芸術」を聴いて、心を鷲づかみにされ、たちまち虜になった。まだLP時代で、以後、貪るように彼のアルバムを入手し、聞き込んだ。彼の代表曲である「ウンポコロコ」が頭の中で鳴り止まぬ時もあった。しかしながら、今も聴き続けているのは「バドパウエルの芸術」、しかもそのA面のみである。
事情は知らないがAB両面でメンバーと録音日が大きく異なり、A面はCurly Russell (b), Max Roach (ds),1947年1月10日であるのに対し、B面はGeorge Duvivier (b), Art Taylor (ds),1953年8月14日。B面の内容も水準以上で良いのであるが、もはやA面における爆発的な才能の迸りはない。A面には以下の曲が入る。
① I'll Remember April
② Indiana
③ Somebody Loves Me
④ I Should Care
⑤ Bud's Bubble
⑥ Off Minor
⑦ Nice Work If You Can Get It
⑧ Everything Happens To Me
①のアレンジと表現力には驚嘆させられる。②は圧巻のドライブ感。④はジャズ史上最も美しい演奏。他どれも珠玉の名演ばかり。甲乙付けがたい。①は確かにA面のハイライトではあるが、A面の8曲は分離不可能な1つのまとまりをなす。従って、「バドパウエルの芸術」のA面は私にとっては8曲セットで「1曲」であり、そのタイトルが I'll Remember Aprilなのである。
本文を書くに当たり、久しぶりにこの「1曲」を聴いた。当然ながらつい聴き惚れ、何度となくかけてしまった。やはり、私の最初の1曲にはふさわしい。
もう70年以上前の録音なので、音質はいかにも古めかしいが、この時代(1950年代前後)特有のキラキラと輝いた響きがある。バドに限らず、この時代のジャズは私にとっては宝箱のようなものだ。
I'll Remember April
https://www.youtube.com/watch?v=rCtJLT8e4Go
数あるレパートリーの中で、つい正座をして畏まって聴いてしまう曲がいくつもある。残念ながら、新居にある今の研究室には正座をする場所はなくなってしまったが、たまさかにその曲を聴くと決意した時は、仕事を中断し、パソコンのスピーカーではなく、それと向かい側に位置するコンポの前に、「正座をする心構え」で対座し、少し音量を上げ、瞑目して聴くのである。
コンポと言っても、今や残っているのは30年以上も前の古いDENONのプリメインアンプとLo-Dの25cm 3wayスピーカーのみ、しかも音源はパソコンであり、これらに高中域補強用のブックシェルフスピーカーとスピーカーセレクターを追加した、マニアとはほど遠い代物である。かつては理想とするオーデイオはあったのであるが、CD時代に入り様々な理由で音を追求するのは諦めた。
さて、私の音楽愛を掘り起こしてみる気にはなったものの、最初に誰から始めるか悩んだ。心の友はビーチボーイズやモンキーズ、それに上々颱風等であるが、崇拝するのはレスターヤングにバドパウエル、そしてルイアームストロング、最近ではスタンゲッツ。これらの中からすぐにレスターとパウエルに絞られたが、私にとってはどちらも同格の神である。決められない。ただし、神になったのはパウエルの方が早い。そこで、先輩を立ててパウエルにする。
バドパウエルは1924年ニューヨーク生まれの屈指の天才ジャズピアニストであった。類い希な歌心と表現力、疾走感、そして狂気を合わせ持っていたが、個性が強すぎ、また、よく唄う(唸るとも言う)ためアレルギーを起こす人も多い。超天才故に精神を病み、絶頂期はごく短く、40才ほどで寂しく世を去った。
若い頃に彼の初リーダーアルバムであるBud Powell Trio「バドパウエルの芸術」を聴いて、心を鷲づかみにされ、たちまち虜になった。まだLP時代で、以後、貪るように彼のアルバムを入手し、聞き込んだ。彼の代表曲である「ウンポコロコ」が頭の中で鳴り止まぬ時もあった。しかしながら、今も聴き続けているのは「バドパウエルの芸術」、しかもそのA面のみである。
事情は知らないがAB両面でメンバーと録音日が大きく異なり、A面はCurly Russell (b), Max Roach (ds),1947年1月10日であるのに対し、B面はGeorge Duvivier (b), Art Taylor (ds),1953年8月14日。B面の内容も水準以上で良いのであるが、もはやA面における爆発的な才能の迸りはない。A面には以下の曲が入る。
① I'll Remember April
② Indiana
③ Somebody Loves Me
④ I Should Care
⑤ Bud's Bubble
⑥ Off Minor
⑦ Nice Work If You Can Get It
⑧ Everything Happens To Me
①のアレンジと表現力には驚嘆させられる。②は圧巻のドライブ感。④はジャズ史上最も美しい演奏。他どれも珠玉の名演ばかり。甲乙付けがたい。①は確かにA面のハイライトではあるが、A面の8曲は分離不可能な1つのまとまりをなす。従って、「バドパウエルの芸術」のA面は私にとっては8曲セットで「1曲」であり、そのタイトルが I'll Remember Aprilなのである。
本文を書くに当たり、久しぶりにこの「1曲」を聴いた。当然ながらつい聴き惚れ、何度となくかけてしまった。やはり、私の最初の1曲にはふさわしい。
もう70年以上前の録音なので、音質はいかにも古めかしいが、この時代(1950年代前後)特有のキラキラと輝いた響きがある。バドに限らず、この時代のジャズは私にとっては宝箱のようなものだ。
I'll Remember April
https://www.youtube.com/watch?v=rCtJLT8e4Go
Indiana
https://www.youtube.com/watch?v=QOIIVglRnAI&list=PLvvk9Q6S8_u2Pgo9C-092RqRBC4DgOPEp&index=2
I Should Care
https://www.youtube.com/watch?v=TQjJsZGEnuM&list=PLvvk9Q6S8_u2Pgo9C-092RqRBC4DgOPEp&index=4

CD時代に入り、また、結婚を機にレコードを全て処分した。ただし捨てきれずに残した物が数枚ある。「バドパウエルの芸術」もその1枚。内容もさることながらジャケットも秀逸。

「バドパウエルの芸術」のジャケットの裏面。これだけ見るとアルバムの内容はA面のみに見えるが、B面の曲目は表ジャケットに細かく書き込まれている。
https://www.youtube.com/watch?v=QOIIVglRnAI&list=PLvvk9Q6S8_u2Pgo9C-092RqRBC4DgOPEp&index=2
I Should Care
https://www.youtube.com/watch?v=TQjJsZGEnuM&list=PLvvk9Q6S8_u2Pgo9C-092RqRBC4DgOPEp&index=4

CD時代に入り、また、結婚を機にレコードを全て処分した。ただし捨てきれずに残した物が数枚ある。「バドパウエルの芸術」もその1枚。内容もさることながらジャケットも秀逸。

「バドパウエルの芸術」のジャケットの裏面。これだけ見るとアルバムの内容はA面のみに見えるが、B面の曲目は表ジャケットに細かく書き込まれている。