†Only Lovers Left Alive†

2017年04月30日 | ■MOVIE



オンリーラヴァーズレフトアライヴ

※完全ネタバレ

出てくる音楽がかっこいい。さすがジム・ジャームッシュ。
彼の作品だから見てみたのだが、天才スピヴェットもアメリだから見たのだけど
素敵な監督はどんな素材を扱ってもすごい世界観を描いてしまう。

今回のお話は吸血鬼のミュージシャン、アダムと
同じく吸血鬼でその妻イヴが主人公。
妻役のティルダ・スウィントンの表情がとても可愛い。
アダム役のトム・ヒドルストンも相当良い役者だなぁとうれしい発見。
ロキもかなりハマり役だったとは思うのだが今回も相当良かった。

とても退廃的なけだるくてゆるい調子の世界観で、それが見事にクール。
ただだらだらしているような感じではないのに忙しくもない。



アダムとイヴは夫婦だが別々に暮らしている。場所もモロッコと
デトロイトでかなりの距離がある。
アダムは神経質で繊細な感じのタイプで、人間らのことをなぜかゾンビと呼び
この世界にとってロクでもない連中だと不満を持っている。
自宅ではバイオリンやギターなどで作曲活動に専念し
ゆいつ彼の家にやってくる男とのみ接触し、必要なものを手に入れてもらっている。
アダムが吸血鬼なことは当然知らない。
血はどうしているかというと、近くの病院の医師と裏で取引し、手に入れている。

血を飲んだらハイになって牙がのぞく。

そろそろ陽がのぼるという前には寝て夜になって起きてくる。
毎日そういう生活。

イヴが会いに来る。アダムとは三回ほど結婚しているようだ。
人生が長すぎるから何回でもするのだろうか。
何百年も生きているようなのだが、何歳なのか分からない。
イヴは母性の強い感じがする。アダムが甘えられる感じ。



で、二人でゆるーく生活しているところへ、イヴの妹のエヴァが現れる。
いたずらっ子で後先何も考えないタイプの若いエヴァが、アダムは嫌いのようだ。
昔にエヴァが何かやらかして、それ以来90年近くか許せないのだ。
妹だからと寛容なイヴの顔を立てて?とりあえずは一緒に過ごすようになるが
すぐに問題を起こすエヴァ。
彼女がアダムの関わっている男の血を吸って殺してしまうという展開。

仕事のつてだった男を失ったアダムは、イヴと逃げるように
イヴの家があるモロッコへと向かった。当然だがエヴァは追い出されてどこかへ行った。
イヴの知り合いの吸血鬼のおじいさんが、いつも上質な血を分けてくれているのだが
その人との連絡がとれないため二人は飢餓状態に陥りフラフラに。
ようやくその人と会えたものの、おじいさんは、たちの悪い人間の血にあたって死に際。

この先どうしようかと二人は夜の街をふらふらと歩く。
全財産で楽器を買い、死が近づいてるような感覚がするころ
すぐそばに新鮮に見えるカップルがやってくる。
この人たちをいただこうという話になり、オワリ。

な感じ。



人間の血と言っても上質なものでないとあたって死んでしまうとは?

不思議なのは何百年も生きてきて、その日暮らしのような感覚の二人だ。
目立たぬようにそっと生きていくためには仕方なかったのかな。
飢餓状態にならないように、システムを構築できなかったのだろうか?
この何百年かの間に 笑 といろいろなことを思ったりするが
映画自体はとても素敵な世界観で面白かった。
アクションなど一切ない吸血鬼の映画というのも面白い。
しかもアダムとイヴの二人がなんともかわいい。
二人でいることがすごくハッピーで癒されているのだろう。
それに会話がロマンチックで その雰囲気とかもとても良かったな。

こういう、人間以外のものの話の時思うのは、彼らの時間の感覚とは
どうなっているのだろうかというところだ。
何百年も生きてしまう人の時間の感覚が、人間と同じだとしたら地獄だ。
でも血液だけで生きているのだから体も脳も仕組みが違うのだろう。
あたしたちは昔のこととかすぐ忘れるけど、この人たちの昔の思い出って
マジで古代だったりするわけで、そんなことを思い出せるのだから
脳とかどんな感じなんだろう。
世界はどんな風に見えているんだろうな。不思議。

エヴァは後先考えずにすぐ問題起こすので、彼女などすぐに血にあたって
死んでしまうのでは?とも思ったりする。

イヴは何語だろうと網羅している様子で、恐ろしいスピードで読書できる。
それにミュージシャンの吸血鬼ってなんか、ぴったりすぎてちょっと笑える。
でもそれもそうかと思ってくる。なんか、吸血鬼のイメージって、
ミステリアスな黒装束って感じだし、悪魔みたいなにおいのする奴は楽器が似合う。
パーシーではハデスがミュージシャンだった。
ちなみにアダムの作ってる曲がとにかくかっこいい。

エヴァに殺された男だが、ここが吸血鬼だからだろうかとてもクール。
人が死ぬのはもはや当たり前というような感覚になっているのだろう、おそらくだが。
とても淡々としている。それよりこいつ死んでしまってこの先どうする感のが強い。
これだけのドライな様子だと、人との別れなどは彼らにとって
何の意味もないことのように思えてくる。彼らに備わっている本能的なもののせいかは
分からないが、人間の死に動揺していたら血は飲めないし、吸血鬼やってけないんだろう。
普段から人の命や生死について、彼らにとって重要ではなさそうに感じる。
そういう部分は動物的なのかもしれないと思った。

この人たちの今という感覚がどういう感覚なのか想像できないが
過去があまりに近く昨日のような感じだろうか?
人間の感覚で見ていると懐かしい話ばかりして思い出にふけっていると思いそうだが
この人たちの感覚での思い出話はどのような感覚だろうか。

ほんの何光年ほど先だよという表現があれば
80何年も昔のことをまだ覚えているの?というようなものもある。
かなり人間的な感覚で話している風だ。

ところでモロッコで女性歌手が歌を歌っているシーンがあるのだがすごく好きな場面だ。
あの音楽良かったなぁ。

不思議な映画だがとても雰囲気の良い素敵な作品だった。


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