†L'extravagant voyage du jeune et prodigieux T.S. Spivet†

2017年04月30日 | ■MOVIE



天才スピヴェット

※完全ネタバレ

10歳の天才少年スピヴェットの話なのだが
見終わったあといつまでも心に切ない感情が残った。
ストーリーは暗くなるようなものではない。
彼は本物の天才なのだが、家族はそのことについて
特に何とも思っていない様子でとてもマイペースに生活している。
学校でも、先生は彼の天才ぶりが鼻につくらしく
子供らしくないと感じているのかイライラした態度であしらっている。



彼には両親と姉と弟がいるのだが、弟は遊んでいる最中に銃の事故で死んだ。
スピヴェットは天才だけに普段から実験などをやっていて、カウボーイの父に
あこがれているような腕白な弟とは一緒に遊ぶと言ってもそれぞれに好きなことを
するような感じになる。
さてそのことがあって家族は、日々変わらぬ生活を続けているようふるまっているが
実際には両親ともに抜け殻のようになっていて、スピヴェットも自分と遊んでいた
時の事故だったために自分の責任のように感じてしまっている。
弟のいなくなった孤独をどうしてよいのかも分からず、また、自分の居場所も
ないように感じているスピヴェットは自分の発明が賞を受賞したことを電話で知り
ワシントンでのスピーチに向かうため、家出をする。



公衆電話から家に電話をしようかと悩むスピヴェットだがかけたりしない。
そっと乗り込んだ貨物車で遠くまで旅していき、途中では警察に追われながらも
ヒッチハイクなどをして無事スミソニアン博物館に到着する。



天才の子供ということで利用できると考えた博物館の野心家の女性が現れ
スピーチ会場へ。スピーチでは自分の発明について軽く触れた後、弟の事故の話をする
スピヴェット。そのエピソードと天才少年というインパクトでマスコミから騒がれ
テレビ番組に出演することになる。司会者は彼の話などどうでもよくて
質問を怒涛のように浴びせていくが、途中でゲストを紹介すると言って
スピヴェットの母親が登場。スピヴェットのせいではないと弟の死について語る母。
帰ろうと言って二人はスタジオを後にする。



追ってくるマスコミなどを無視していくと、そこには父が待ってくれていた。
背中におぶられてスピヴェットは田舎に帰るというのがざっとした展開だった。

父親が彼をおんぶしたときに、父との間のぎくしゃくした感じがとけて
好きなように父に甘えられるスピヴェットにうれしくなった。
スピヴェットにとってそれこそが一番望んでいたことだったと思う。

話の随所に子供心を忘れた大人の姿がたくさん描かれている。

スピヴェットの笑顔がとてもいい。
彼が悲しそうだと本当に辛い気持ちになる。

で、彼は家出をするのだが、結構冒険でもありながら
家族のことが気になってしまう。電話をすることを想像する。
今頃家では大変な騒ぎになっているのではないだろうか?
だけど電話をかけたりはしない。
この心情は見事に子供の時に家出をした人のリアルだと思う。
そこがなんとも切ない。

田舎の景色が美しくて、都会の風景も独特な見せ方をしてくれる。
ゆっくりと弟の死と向き合っていくスピヴェットと家族の成長と絆。
本当に素晴らしい映画だった。


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