†Brothers†

2017年05月09日 | ■MOVIE


マイ・ブラザー

※完全ネタバレ

とても重たくて苦しくて、でも見て良かった映画だった。
見たときの精神状態があまり良くなかったのもあったのか
いつもだと深く考えさせられるところなのだが
今回は見終わったあとパニックして、翌日もきつかった。
普通の人が見る分には、内容は重たいとはいえパニックするような
ことにはならない。

結婚して二人の娘を持つ兄サムは兵士。
強盗の罪で入っていた弟トミーが出所してきて兄に合い、
久しぶりに親もみなそろって食事となるが、
父親と弟はとても不仲で空気が悪い。
そんな中、兄はアフガニスタンへ。
ところが兄が向こうで死んだという報せが。
家族はみな悲しみに暮れ、何とか生きていこうとするが
抜け殻のように。弟が兄嫁グレースの娘たちの面倒を見たり、
グレース自身を励ましたりして、徐々に変わっていき、
すれていた彼が優しくて明るい人間になっていく。
逆に、死んだと言われていた兄は戦地でウィリスという兵士と
共にタリバンに拘束されており、監禁され拷問を受け過酷な
環境の中に閉じ込められていた。
やがてウィリスを殺すかお前が死ぬかと選択を迫られた兄は
部下を撲殺し生き延びる。だが部下を殺したことをどのように
自分が受け入れるのかはわからず、自分を許すことも当然できない。
結果的に米軍に救出されて家に帰ることが出来る。
その重たい事実に心が押しつぶされている彼は、再会を楽しみにしていた
家族から人格が変貌したように感じられる。
彼が戻ってくることを知る直前、弟とグレースはちょっと互いに
惹かれそうになっていた。二人はキスをしてしまっていて
二人の気持ちは娘たちにもなんとなく感づかれてしまっていた。

疑心暗鬼になっており、自分をどうすることもできない兄は
二人が関係を持ったのではと疑い、自分は人を殺してまで戻ってきた
というのに、と思うとどうしようもない怒りで狂いそうになる。
仕事に復帰もできず、地獄のような心境の中でついに、兄は
銃を手に暴れまわり、駆け付けた警察らの前で自分の頭に銃口を向ける。

弟が叫び続ける声が兄に届き、彼は銃を置いて警察に拘束され
病院に入ることになる。
面接に来たグレースに、何があったのかを聞かれ、とうとう兄は
それを口にする。
映画はおわる。

最後は口にできて本当に良かった。
そうでなければ、あのままの状況ではもう救いがない。
昔から弟にとって、兄は尊敬すべき人だった。
誠実でまじめで頼もしくて、そんな人が狂乱してしまうほどのことが
起きたとはいえ、何があったのかを分からない弟や周りには
大変なショックだったと思う。
どうやって兄を支えたら良いというのだろうか?
彼自身が壊れた中で落ちる寸前のところをもがいているのを
どのように救えるのだろうか。

何とか自分を取り戻そうとしている兄は死ぬか生きるかだった。
そんな中で弟の声が届いて本当に良かった。

役者がとにかくみなすごくよかった。
凄まじい演技を見せる兄役のトビー・マグワイアや
味のある演技が素晴らしい弟役のジェイク・ギレンホール、
兄嫁はナタリー・ポートマンときて、
なによりすごい演技だったのが、長女役のベイリー・マディソン。
家族の苦労を目の当たりにして、お姉さんらしく振舞おうと必死で
だけど心がついていけない様子を見事に演じていて感動する。

エンディングのU2の曲もとても良かった。
あかるいうちに家に帰れて良かったという歌詞が、
この映画のためにあったような気がした。

兄が仲間を殺せと命じられて実行してしまうシーンは悪夢そのもので
どうやって兄はこの先生きていくのか?ひどいショックを受けた。

PTSDの兄の前に現れた弟の知り合いの女性は戦争について思うことを
口にするのだが、兄の前ではあまりにも理想的過ぎて軽すぎた。
分からないのは仕方ないことだが、あのような兄の前で話す
内容ではなかったと思う。

戦地から帰ってPTSDになってしまった兵士は数えきれないほどいるだろう。
彼ら自身そしてその家族が、どれほど大変な思いをしているんだろうか。

戦争が人を大量に殺し、残酷にし、心を破壊してしまう。
いったい戦争ってなんなんだろうか。
とてもひどくて言葉にもできない。


本当に重たい映画だった。

†三國之見龍卸甲†

2017年05月09日 | ■MOVIE


三国志

※完全ネタバレ

今回の三国志は趙雲のお話。
趙雲が蜀の中で頭角を現していき、最後まで生き残った
英雄として、曹操の孫、曹嬰という女性と戦うというストーリー
になっている。五虎大将の関羽、張飛、馬超、黄忠の4人は
とりあえず速攻で亡くなっていく。そうしないと時間がないのだろう。
関羽と張飛が趙雲と共に、劉備の息子を救い出すため出発する場面が
なんだか印象づいた。

趙雲の役の俳優はとても味のある演技で魅了された。
敵役の女性もすごくきれいだし、アクションもいいし
面白かったな。

欲を言えば、今後、男前の演じる曹操が主役の映画を見てみたい 笑

ここ何年もゲームなどやっていないのだが
つい先日何年かぶりに三国無双6をやった。
張遼を無敵に育てたら満足し、それ以来やっていないのだが
もともと興味がなかったけれど、そういう風に三国志に触れる
きっかけがあったのは良かった。
何も知らないで見るより、やっぱり少しでも知っていた方が面白い。
それに張遼は相変わらず好きなのだが、6に出てきた郭淮という人物が
すごく可笑しかった。ずっとゴホゴホ言っていて、身体が悪くて
無理がきかないから、攻撃の後ばたっと倒れたりするし、
いうことも体力がないのが問題じゃないとかなんとかって、
病気が悪化して体が動かなかったあたしは少し共感してしまった 笑
無双に出てくる好きな人物は、張遼、夏侯淵、魏延、ほうとう、馬超、孫堅。
曹丕や司馬の人たちはセリフ聞くとげんなりするほど嫌い。合わない。

ほかの人たちの映画もどんどん作られたら面白いのになぁ。

今回の映画では諸葛亮の最後の趙雲への対応が本当に冷徹な軍師というか
そんな感じで、イライラした 笑

趙雲はすごく広い心を持っていて誠実に描かれていた。
兄貴分の男の裏切りに対してもそうだし、人を恨んだり、そういった
結果的に自分の心を貶めてしまうようなものを持たない強さがあった。
最後まで潔く凛としていてかっこよかった。


†Jean Michel Basquiat: The Radiant Child†

2017年05月09日 | ■MOVIE



バスキアのすべて

※完全ネタバレ

今回のバスキアの映画はドキュメンタリー。
バスキアを知る人々のコメントなどとともに
バスキアのインタビューを見ることが出来、
彼の人生を追っていく。

バスキアについての説明は割愛する。

登場する一人が、バスキアは、誰しもいろいろなことのある
人生の中で航海していくための舵を
バスキアは持っていなかったのだというような
ことを言っていた。

それがこの映画を通じて知るバスキアの人生をとてもよく
表していて強く印象に残った。

年末のときに一人でバーにいた話や
彼が孤独を深めている様子や重圧や
麻薬に溺れてしまうこと、若くして死ぬこと、
こんな孤独を抱えてしまう人が、この世界から少しでも
少なくなって心が癒されていくことを願わずにいられない。

誰かが、この人の孤独を深くから救えていたら違っていたと
言っていた。それは後からいってもどうしようもないことだが
実際にそうでもあるのだから考えさせられる。



バスキアは天才だったから、多くの美術館は彼を無視した。
権威は偉大な伝統を持っているが、いつも時代遅れなのかも
しれない。

差別についても触れられていた。

若くして億万長者になることの不幸な面についても。

ありとあらゆるバスキアの絵が紹介されていて見ているのは楽しい。
バスキア以外にもあたしの好きなポロックなどいろいろ見られてよかった。

ただ、さすがに最後のほうは泣いた。

見てよかったなぁ。やっぱりバスキアの絵が好きだなぁと改めて思う。


†Monsieur Ibrahim et les fleurs du Coran†

2017年05月09日 | ■MOVIE



イブラヒムおじさんとコーランの花たち

※完全ネタバレ

最高に良かった。思ってた以上に素晴らしかった。
モモという16歳の男の子が主人公で
近所にある食料品店の店主イブラヒムとの関わりによって
孤独なモモの人生が変わっていくお話だった。

モモは早くに母が兄のポポルを連れて出ていったので
父と二人暮らしなのだが、その父はおそらくうつ病で
モモに対し愛情が行き届かず、実に淡々と生活している。
日々仕事へ行って、疲れて帰ってくると家事をして料理を
作って待つモモがいる。モモは父に対してかまってほしい、
そういうサインをいくつも出しているのだが父は全く気付かない。
気づく余裕もないのかもしれない。

目の前の通りに毎日立つ売春婦らと寝たり(もちろん客として)
すぐそこに住んでる同世代の女の子が気になってちょっかいかけたり
あとは父親が帰ってくるのを待って料理を作って、そんな日々を過ごすモモ。

父は時々兄のように本を読めとか、兄とモモを比べたりする。
彼の孤独を癒すのは父親の愛情なのだが、それは難しいようだ。
近所の食品店に行ったモモはそこで万引きする。
それをお使いついでに何度か繰り返していた。



この店の店主イブラヒムおじさんは、モモの万引きを知っているが
優しくさりげなくほっとするような安心感でモモと接してくれる。
なんとも笑顔が優しいおじさんだ。万引きについて知っていることを口に
すると、弁償すると言って深刻になるモモに、払う必要はないんだと言って
店にある食料品をどっさりとくれる。
モモはイブラヒムに心を開いていくし、
モモの心のさみしさを埋めるかのようにおじさんはモモのいろいろな
相談相手になって、一緒に散歩へ連れ出したり、ボロボロの靴を履いた
モモに靴をプレゼントしてやったり、温かな愛情を与えてくれる。

そんな中で、ある日父親が帰宅すると、会社を首になったと告げられる。
そして父はモモを置いて出て行ってしまう。
モモにすまない、さようならと書いた手紙とお金を置いて。

一人ぼっちになったモモは父が出ていったことを誰にも言わず
ただいつも通りに過ごそうとする。父の書斎の本を次々売って現金にし
自分の好きなものを買ったりしながら。
父が帰ってくるのを待っていたのだろうか?
隣の気になってた女の子とも付き合いだしていたのだが、彼女には
ほかにも男がいたようで結果的にふられてしまう。

そして突然やってきた警察に、父親が電車にはねられて
死んだと告げられる。自殺だったのだ。
恐ろしい話にイブラヒムの店まで逃げ出すモモ。
追ってきた警察からイブラヒムが事情を聴いて、
結局イブラヒムがモモの父親の埋葬を行った。
後日母親が家に迎えに来るが、自分はモモじゃないと言って
母親を帰らせる。兄などいないと母親からその時告げられるモモ。
彼はイブラヒムのところへ行き、自分を養子にしてほしいと言う。
イブラヒムは即座に受け入れ、明日にでもと言ってくれる。

イブラヒムはモモに、笑顔になるのは幸せだからではなくて
笑顔でいるから幸せなことが起きるんだよと教えてくれていた。
養子にする件では全然認めてもらえずなかなか親子になれないのだが
二人で笑顔を作ってあきらめずに続けていくとついに養子として認めて
もらえることとなった。



イブラヒムは高級車を買い、運転免許をとって、モモを連れて旅行へと
出かける。最終目的地はトルコで、車を走らせながら、いろいろなものを
みながら、カトリックやギリシャ正教やモスクを巡ったりして
イブラヒムはそのたびに大切なことをモモに教えてくれる。
さりげなく伝えられる言葉からモモはいろんなことを心に吸収していく。
常日頃、イブラヒムは、大切な教えはコーランに書かれてあると言っていた。
コーランに興味を示しモモも読んではいたのだが、読書をしても
教えは身につかないのだとイブラヒムは言うのだ。
イブラヒムはイスラム教のスーフィーの信徒で、
モモをスーフィーの教団のところへも案内する。

そこではいわゆるスーフィーのダンスが神秘的に繰り広げられていて
モモはそこでの祈りを感じ、自分の中にあった憎しみが消えたと
イブラヒムに言った。

車の旅は続く。イブラヒムの故郷を目指していた。
あの山を越えたら故郷の村だから、ここで待っていろと
何もない場所でモモを降ろす。
笑顔で待っていろと言われたモモのところへやってきたのは、
大慌てで駆け付けた見知らぬバイクの男で、
トルコ語が分からないモモに、早く後ろに乗れとせかして言う。
何事かと駆け付けると、車の事故によって息を引き取る寸前の
イブラヒムが一軒の家の中で横になっていた。

教えることはみな教えたとイブラヒム。
モモは怯え、死なないでと涙するのだが、イブラヒムは
自分はコーランの教えがあるから死ぬのは恐れないのだと言って、
死ぬのではなく無限の世界へ旅に出るのだとモモに告げる。
旅の最後に亡くなったイブラヒム。パリに戻ったモモは
イブラヒムの遺書によって遺産をすべて相続することになる。
やがて大人になった彼はイブラヒムの店を
経営するようになっていたというお話だった。

イブラヒムは旅の途中、
「我々は鉱物 植物 動物から人間に進化した。
土やホコリから今の姿になれたんだ」と言っていた。
なんて素晴らしいセリフだろう。すごく感動した。

父親がモモにかまってくれないのを見ているときは、
気づいてあげてとすごく思った。

このお話の最高な点はイブラヒムがいちいち言うことが真髄を
ついているというか、本当に大切なことを言っていて感動する部分だ。

それに、自分はモモと一緒にいれて幸せだという。
そんな言葉を一番必要としているモモに対して
さりげなく言うことのできるイブラヒムには
本当に幸せな気持ちにさせられる。

どこにも美を見つけることが出来るイブラヒム。
純粋な心を持ったさみしいモモは本当に大切なことを
多く学ぶことが出来た。



このおじさんの最高さは、映画で行ったら赤毛のアンのマシューに
匹敵するくらいやばかった。

あたしの中には、境遇が違っているが、モモがいて
そしてイブラヒムを求めている心もある。
何も求めず信じ続け見守り続けてくれる温かな存在を。
それは誰の心にもあるものかもしれない?分からないけど。
あたしは仏教を学んでいるところで、現実に慈悲というものに救われる
心については実感がある。イブラヒムのいうことは、宗教というものを
なにかつまらないちっぽけな枠で理解する人には無意味になると思う。
宗教によっては実際に形だけ宗教っぽいがそれとはまったく違うもの、
たとえばテロリストを養成するため悪用された邪悪な思想だったりする
ものもあるが。
香のにおいのする宗教、ろうそくのにおいのする宗教、いろいろな
教えがあり、イブラヒムは、イスラム教徒ではないユダヤ人のモモに
宗教は「ものの考え方」であるという。

人にはその人の美学だったり志だったり、哲学があったりするだろう。
もちろんすべて無と思っている人もいるだろうし何も信じない人も。
それが自分と違っているからと言って、どうしたのだろう?
「宗教というものは」などと差別する人は、相手の血液型が自分と違う
というだけで差別しているようなもの。
そういうちっぽけな見方で生きていくと、人が鉱物から進化したことなど
理屈でしか理解できないような人生になってしまう気がする。

目隠しをして、様々な宗教の施設にモモが行くシーンを見て、
自分の頭で分かってるような、小さな次元でものを見ていると
何も感じられないのではないかと思った。

何も感じられないことは不幸だ。どこにも美を見つけられず
自分の心をどう立ち上がらせればよいのかも分からないまま
自分の価値を信じられないままになるのは。

素晴らしいことをたくさん教えてくれる映画だった。


†Only Lovers Left Alive†

2017年04月30日 | ■MOVIE



オンリーラヴァーズレフトアライヴ

※完全ネタバレ

出てくる音楽がかっこいい。さすがジム・ジャームッシュ。
彼の作品だから見てみたのだが、天才スピヴェットもアメリだから見たのだけど
素敵な監督はどんな素材を扱ってもすごい世界観を描いてしまう。

今回のお話は吸血鬼のミュージシャン、アダムと
同じく吸血鬼でその妻イヴが主人公。
妻役のティルダ・スウィントンの表情がとても可愛い。
アダム役のトム・ヒドルストンも相当良い役者だなぁとうれしい発見。
ロキもかなりハマり役だったとは思うのだが今回も相当良かった。

とても退廃的なけだるくてゆるい調子の世界観で、それが見事にクール。
ただだらだらしているような感じではないのに忙しくもない。



アダムとイヴは夫婦だが別々に暮らしている。場所もモロッコと
デトロイトでかなりの距離がある。
アダムは神経質で繊細な感じのタイプで、人間らのことをなぜかゾンビと呼び
この世界にとってロクでもない連中だと不満を持っている。
自宅ではバイオリンやギターなどで作曲活動に専念し
ゆいつ彼の家にやってくる男とのみ接触し、必要なものを手に入れてもらっている。
アダムが吸血鬼なことは当然知らない。
血はどうしているかというと、近くの病院の医師と裏で取引し、手に入れている。

血を飲んだらハイになって牙がのぞく。

そろそろ陽がのぼるという前には寝て夜になって起きてくる。
毎日そういう生活。

イヴが会いに来る。アダムとは三回ほど結婚しているようだ。
人生が長すぎるから何回でもするのだろうか。
何百年も生きているようなのだが、何歳なのか分からない。
イヴは母性の強い感じがする。アダムが甘えられる感じ。



で、二人でゆるーく生活しているところへ、イヴの妹のエヴァが現れる。
いたずらっ子で後先何も考えないタイプの若いエヴァが、アダムは嫌いのようだ。
昔にエヴァが何かやらかして、それ以来90年近くか許せないのだ。
妹だからと寛容なイヴの顔を立てて?とりあえずは一緒に過ごすようになるが
すぐに問題を起こすエヴァ。
彼女がアダムの関わっている男の血を吸って殺してしまうという展開。

仕事のつてだった男を失ったアダムは、イヴと逃げるように
イヴの家があるモロッコへと向かった。当然だがエヴァは追い出されてどこかへ行った。
イヴの知り合いの吸血鬼のおじいさんが、いつも上質な血を分けてくれているのだが
その人との連絡がとれないため二人は飢餓状態に陥りフラフラに。
ようやくその人と会えたものの、おじいさんは、たちの悪い人間の血にあたって死に際。

この先どうしようかと二人は夜の街をふらふらと歩く。
全財産で楽器を買い、死が近づいてるような感覚がするころ
すぐそばに新鮮に見えるカップルがやってくる。
この人たちをいただこうという話になり、オワリ。

な感じ。



人間の血と言っても上質なものでないとあたって死んでしまうとは?

不思議なのは何百年も生きてきて、その日暮らしのような感覚の二人だ。
目立たぬようにそっと生きていくためには仕方なかったのかな。
飢餓状態にならないように、システムを構築できなかったのだろうか?
この何百年かの間に 笑 といろいろなことを思ったりするが
映画自体はとても素敵な世界観で面白かった。
アクションなど一切ない吸血鬼の映画というのも面白い。
しかもアダムとイヴの二人がなんともかわいい。
二人でいることがすごくハッピーで癒されているのだろう。
それに会話がロマンチックで その雰囲気とかもとても良かったな。

こういう、人間以外のものの話の時思うのは、彼らの時間の感覚とは
どうなっているのだろうかというところだ。
何百年も生きてしまう人の時間の感覚が、人間と同じだとしたら地獄だ。
でも血液だけで生きているのだから体も脳も仕組みが違うのだろう。
あたしたちは昔のこととかすぐ忘れるけど、この人たちの昔の思い出って
マジで古代だったりするわけで、そんなことを思い出せるのだから
脳とかどんな感じなんだろう。
世界はどんな風に見えているんだろうな。不思議。

エヴァは後先考えずにすぐ問題起こすので、彼女などすぐに血にあたって
死んでしまうのでは?とも思ったりする。

イヴは何語だろうと網羅している様子で、恐ろしいスピードで読書できる。
それにミュージシャンの吸血鬼ってなんか、ぴったりすぎてちょっと笑える。
でもそれもそうかと思ってくる。なんか、吸血鬼のイメージって、
ミステリアスな黒装束って感じだし、悪魔みたいなにおいのする奴は楽器が似合う。
パーシーではハデスがミュージシャンだった。
ちなみにアダムの作ってる曲がとにかくかっこいい。

エヴァに殺された男だが、ここが吸血鬼だからだろうかとてもクール。
人が死ぬのはもはや当たり前というような感覚になっているのだろう、おそらくだが。
とても淡々としている。それよりこいつ死んでしまってこの先どうする感のが強い。
これだけのドライな様子だと、人との別れなどは彼らにとって
何の意味もないことのように思えてくる。彼らに備わっている本能的なもののせいかは
分からないが、人間の死に動揺していたら血は飲めないし、吸血鬼やってけないんだろう。
普段から人の命や生死について、彼らにとって重要ではなさそうに感じる。
そういう部分は動物的なのかもしれないと思った。

この人たちの今という感覚がどういう感覚なのか想像できないが
過去があまりに近く昨日のような感じだろうか?
人間の感覚で見ていると懐かしい話ばかりして思い出にふけっていると思いそうだが
この人たちの感覚での思い出話はどのような感覚だろうか。

ほんの何光年ほど先だよという表現があれば
80何年も昔のことをまだ覚えているの?というようなものもある。
かなり人間的な感覚で話している風だ。

ところでモロッコで女性歌手が歌を歌っているシーンがあるのだがすごく好きな場面だ。
あの音楽良かったなぁ。

不思議な映画だがとても雰囲気の良い素敵な作品だった。


†L'extravagant voyage du jeune et prodigieux T.S. Spivet†

2017年04月30日 | ■MOVIE



天才スピヴェット

※完全ネタバレ

10歳の天才少年スピヴェットの話なのだが
見終わったあといつまでも心に切ない感情が残った。
ストーリーは暗くなるようなものではない。
彼は本物の天才なのだが、家族はそのことについて
特に何とも思っていない様子でとてもマイペースに生活している。
学校でも、先生は彼の天才ぶりが鼻につくらしく
子供らしくないと感じているのかイライラした態度であしらっている。



彼には両親と姉と弟がいるのだが、弟は遊んでいる最中に銃の事故で死んだ。
スピヴェットは天才だけに普段から実験などをやっていて、カウボーイの父に
あこがれているような腕白な弟とは一緒に遊ぶと言ってもそれぞれに好きなことを
するような感じになる。
さてそのことがあって家族は、日々変わらぬ生活を続けているようふるまっているが
実際には両親ともに抜け殻のようになっていて、スピヴェットも自分と遊んでいた
時の事故だったために自分の責任のように感じてしまっている。
弟のいなくなった孤独をどうしてよいのかも分からず、また、自分の居場所も
ないように感じているスピヴェットは自分の発明が賞を受賞したことを電話で知り
ワシントンでのスピーチに向かうため、家出をする。



公衆電話から家に電話をしようかと悩むスピヴェットだがかけたりしない。
そっと乗り込んだ貨物車で遠くまで旅していき、途中では警察に追われながらも
ヒッチハイクなどをして無事スミソニアン博物館に到着する。



天才の子供ということで利用できると考えた博物館の野心家の女性が現れ
スピーチ会場へ。スピーチでは自分の発明について軽く触れた後、弟の事故の話をする
スピヴェット。そのエピソードと天才少年というインパクトでマスコミから騒がれ
テレビ番組に出演することになる。司会者は彼の話などどうでもよくて
質問を怒涛のように浴びせていくが、途中でゲストを紹介すると言って
スピヴェットの母親が登場。スピヴェットのせいではないと弟の死について語る母。
帰ろうと言って二人はスタジオを後にする。



追ってくるマスコミなどを無視していくと、そこには父が待ってくれていた。
背中におぶられてスピヴェットは田舎に帰るというのがざっとした展開だった。

父親が彼をおんぶしたときに、父との間のぎくしゃくした感じがとけて
好きなように父に甘えられるスピヴェットにうれしくなった。
スピヴェットにとってそれこそが一番望んでいたことだったと思う。

話の随所に子供心を忘れた大人の姿がたくさん描かれている。

スピヴェットの笑顔がとてもいい。
彼が悲しそうだと本当に辛い気持ちになる。

で、彼は家出をするのだが、結構冒険でもありながら
家族のことが気になってしまう。電話をすることを想像する。
今頃家では大変な騒ぎになっているのではないだろうか?
だけど電話をかけたりはしない。
この心情は見事に子供の時に家出をした人のリアルだと思う。
そこがなんとも切ない。

田舎の景色が美しくて、都会の風景も独特な見せ方をしてくれる。
ゆっくりと弟の死と向き合っていくスピヴェットと家族の成長と絆。
本当に素晴らしい映画だった。


†A Most Wanted Man†

2017年04月24日 | ■MOVIE


誰よりも狙われた男

※完全ネタバレ

これはねえ、見なくてよかった。いやはやそういう落ちかと。
本当にイライラするオチだった。
単純に言うとこれまで長くテロ対策をやってきた主人公が
ついに様々な作戦が成功し、さあこれで最後だと喜ぶ瞬間に
何もかもがその男の手からすり抜けていくような感じ。
え、今までの時間はいったい?って感じ。
見ていたこちらまでガッカリ感は半端なくて
いつまでも後味の悪い映画でした。
タイトルはこの主人公のことを言っているのだろうな。
もう詳しく思い出すこともないと思う。残念。
思ってたのとは全然違う映画でした。


†The Imitation Game†

2017年04月24日 | ■MOVIE



イミテーション・ゲーム/
エニグマと天才数学者の秘密

※完全ネタバレ

エニグマとくればアラン・チューリングというくらい有名な人だ。
彼がひたすらに信念をもってエニグマを解読するコンピューターを
作っていく過程では、上司からスパイ容疑を疑われたり
コンピューターを停止させられそうになったりするのだが
人間とのやり取りがあまりにも苦手で数字としか向き合えないタイプ
だった彼も、女性職員とのかかわりも手伝って、仲間と打ち解けようと
努力するようになる。そして仲間との信頼関係を築き、エニグマを
解読することに成功するのだ。



彼に触れる場合彼の研究の前に、別の人がエニグマの研究をやっていた
ということについて映画では割愛されている。
現物の写真が入手できたことや、そうした過程を経てアラン・チューリングが
エニグマを解読に導くことになる。
当時の現場にはともかくスパイ行為とは無縁ないろんな職業の人間が集められ
実験的に解読に取り組もうとしていたらしい。
ゲイへの差別や女性蔑視なども忠実に描かれていて
今よりずっと差別されて当たり前と思われていた時代の
その愚かさを同時に感じる。



しかしエニグマを解読した後からが、本当の苦労を背負うことになる。
映画で、仲間の一人の兄弟が乗った船が、これからドイツによって攻撃される
と判明しているのだが、それを伝え、その船を助けることはできないとアランは言う。
なぜなら、ドイツに暗号を解読したことが察知されるとまずい展開になるからだと。
自分の家族を乗せた船が攻撃対象とわかっていて助けられないという辛さは
どれほどのものだろうか。
暗号が解読されたことを察知されぬよう、アランとその仲間だけが
どの攻撃を防ぎ、防がないのかを決めていくことになる。
あまりに重たい仕事を遂行していく彼らの苦労も描かれている。
女性職員は自分の仕事によって多くの人が救われ戦争は早く終えられたと考えている。
だからこそ前向きに生きていくのだが、アランはそうできない。
ストーリー中彼はゲイで逮捕され、刑事に向かって過去の話をしていく演出になっている。
親友だった、そして好きだった学生時代の友人が突然死んだことが
彼の中でずっとトラウマになっており、最後の最後まで孤独な心に縛られるアラン。

しかも彼らはスパイとして働いているのだから、その仕事を他人には言えないし
戦時中、何をしていたかを話せない苦労もあっただろう。
抱えている秘密は大きすぎるし、平和のためとはいえ前向きに受け止められない。
しかしそうしなければ背負ったことに心が潰されてしまう。



本当に最後など目も当てられないほど弱り切っているアランが
痛々しかった。

そもそもこの戦争ではほかにも大勢の人たちが想像もつかない苦労や悲しみや
あらゆるものを背負わされ、犠牲になっている。
戦争の中では情報を得る力が強い方でなければ、スパイが優れていなければ
勝つことはできないだろう。
だいたい戦争などという愚かな殺人行為が起きたりすることが大問題なのだ。

それに関する余談は次の機会にして話をもどすけど、
戦争を早く終わらせた人が、このように人知れず苦労を抱えて生きながら、
ましてゲイだってことでも生きづらく、このアランの人生とその時代は
あらゆることを考えさせる。

暗号の解読という点においては痛快だ。これは映画に限らず、暗号が
解読されていく感覚というのはすごくワクワクするものだと思う。
今の時代もやはりネットなどでは特に暗号命な部分があるし
暗号のセキュリティの高さは破られる側と守る側の壮絶な戦いがあり
そういうことに関する本などを読んでいると難しいけど面白い。
そしてそのような人たちの功績を知って、世の中の見えないところで
色々な人たちの苦労や成功があって成り立っているのだなと知る。
そういうことを知ることはとても大切なのではないかなとも思う。

ちなみにだが、確かこのアランを演じたベネディクト・カンバーバッチという役者は
裏切りのサーカスでもやはりゲイを演じていた気がする。


†Waffle Street†

2017年04月24日 | ■MOVIE



ワッフルストリート
※完全ネタバレ

タイトルからしておいしそうなワッフルがどっさりと出てくる
映画を想像するのだが、違っていた。
だがこの映画はポジティブで楽しくて良かった。

ただ一点だけどうしてもキツかったシーンがある、それは
彼がトイレ掃除をするシーンである。
悲惨な便器が映るのだが、見ないほうが良い。



主人公は金融業界で働くエリートタイプなジミー。
だが彼は首になって就職活動を始めることになる。
転職先は何の変哲もないワッフル店。
これまで彼が関わることのなかった人間を相手にエプロン付けて
働き始めるのだが、この店は1000時間以上勤務したら、店の
オーナー権を購入することが出来るという条件があり、
それなら自分が経営者になろうと決めて、朝も夜もなく猛烈に
働き始めるのだ。
もともとエリートなタイプだから、こういう店はあっていないと
周りからは思われているが、本人はとてもドライというかポジティブというか。
俺は金融業界でやり手だった、などというような自分の過去への
執着や変なプライドなど一切なく、職場がどうであろうと偏見もない人。
で、こうと決めたらもうそこへまっしぐらな人なので、
エリートだった旦那がいきなりワッフル店の店員になり店を買うと言いだして
昼も夜も働きづくめになると、奥さんからはいろいろ複雑になる。
奥さんは妊娠しており今もっとも夫の助けを必要としているときなのだが
いつのまにか車を売ってしまうとか、勝手に店を買うと決めてしまうとか
旦那のまっすぐさに苦労を掛けられるのだ。でも奥さんは結局旦那を支え続けていく。
だからこの奥さんはかなり偉大な奥さんである。

本当にひたすら彼が働きづくめになって過ぎていく日々を追っていく。
見ている方は、そこまでがむしゃらに働くことの潔さや気持ちよさを感じる。
自分もそうしたいような気持になってくる。
とにかく彼の意欲は伝染するようなものを持っている。

で、働きづくめのこの男は、確かに奥さんに苦労を掛けているとはいえ
なかなかいい男になっていく。最終的に店は買い取れない。
そこまでやっても上に裏切られて夢は潰される。
それでも、同僚と築いた絆や、奥さんと重ねた苦労の中で大切なものを
再発見していき、ちゃんと良い結末を迎えている。



この話は実話なのだというのだから、おそれいる。
普通なら自分のやってきたエリート思想やつまらないプライドなどを
人は少なからず持っていてもおかしくはないが、この人は本当に
そういうものに何も興味を持っていないという感じでいさぎが良く
そういう部分はとてもかっこいい。

自分の父親も祖父も会社をやっている人間で、あとを継いでほしいと
願っているのだが、自分の道を見つけていく、この人の地道な努力や
やる気、前向きさなどには、ポジティブなエネルギーを与えられる。

これは見てよかったな。と素直に思った。トイレのシーン以外は。


†The Intern†

2017年04月24日 | ■MOVIE



マイ・インターン
※完全ネタバレ

ロバート・デ・ニーロとアン・ハサウェイの主演の作品。
この映画すごくよかった。絶対また見たい。
アン・ハサウェイがファッション通販のサイトを運営する女社長ジュールズで
デ・ニーロが、その会社のシニア インターン制度で入社する新人社員のベン。
パソコンの使い方から教えてもらわないとならない彼だけど
温かくて穏やかな人柄は誰もを魅了し、同僚の若者らとすっかりなじむ。
社長のほうはというと、そのようなシニアの社員など仕方なく雇ったので
という態度で、彼に何も仕事を与えずマイペースに仕事をこなしていく。
ベンはなかなか仕事を言いつけられることもなく、だが、前向きに
自分の職場に感謝して、自ら仕事を見つけていく。



そのうちにジュールズともようやく話をしたり彼女の運転をしたりするようになり
徐々に彼女のよき相談相手としても信頼されていくのだ。
この、ベンの人柄には本当に温かい気持ちにさせられる。



ジュールズも自分のことで精いっぱいだったし、夫の浮気についても悩んでいたけど
ベンと関わっていくことで精神的に支えられていく。
とにかく最初から最後までベンの魅力が大きくて最高の映画になっている。

どんな立場になろうと、つらいことを経験しても、
ベンはその環境や周りの人への感謝を持ち続けているから
決して人にやつ当たったり、暗い顔をしてふさぎ込んだり、ブチ切れたりなど
といったことはやらない。じっと耐えて前へと進んでいくのだ。
本当なら怒りたい勝手にしたい文句を言いたいといったことは山ほどあったはずだ。
酔っぱらって愚痴を言いたいような気分になったりしたこともあるはずだろう。
それなのにこのベンは誇りをもって生きている。
少々のことでこの人は折れないし、この人の温かさはこの人の心の強さから
きているのだろう。

いろんな人がいるのだから、こういう人がいても不思議ではない。



この映画のベンには本当に癒される。
アン・ハサウェイはファッション業界が似合うと思うな 笑
本当可愛いしきれいだし。社長だし。夫何してんだか。

この映画は女性におすすめしたい映画かな。


†Julie&Julia†

2017年04月24日 | ■MOVIE



ジュリー&ジュリア
※完全ネタバレ

料理系の映画は結構好きなので、いろいろとみる。
料理をするのは好きではない、でもきれいな料理が出てくるのを
見るのは癒される。

最近SNSでは料理系のところに行くとはっとするほど
素敵なお弁当やご飯がたくさん紹介されている。
デコられているものは基本的にすごいとはおもうのだが
想像するだけで食べたくないようなものばかりが目立つ。
毎日の夕食をどこの高級なお店だろうかというほど気合を入れて
作り続ける人も多くいる。
自分が夫なら、そのようなスキのないご飯は、
たった一日なら素敵だが毎日のことになるなら遠慮したい。
シンプルできれいで美味しそうな料理があたしの好みのようだ。

健康だけを考えた徹底したもの、完ぺきな食器やレイアウトや料理など
節約にこだわりやすさに徹底したもの、とにかく徹底された
スキのなさが日々続くことが怖いのである。
そのような物と毎日向かい合うことは不安になるのだ。
ほっとするご飯、単純で材料費もそんなにかかっておらずとも
「この味」と思うご飯が素敵だなと。

はたしてそういうご飯は写真写りが良くないのだろうか?
そんなことはないと思う。
料理のSNSで一番不憫に思うのは、どっかのプロの料理の写真から
見よう見まねでただとってきたような、まねされたレイアウトの
貧相さ。真似されただけのレイアウトには何の計算もないから
安っぽく感じて好きではない。
毎日美しく料理を花だのなんだので飾っては写真を掲載している
方が結構いるが、そういう人たちは、その一枚を作るために重ねた
凝縮された努力やセンスなどを滲みだしている。
そうだからはっとする一枚になるし、日々その方々は料理以外の
あらゆる美からも学ぶことに必死の研鑽を積んでいるのだろうと
想像させてくれる。

ただ家のご飯を外国風ないかにもインスタで見そうな
つまらないものにしてしまうより、その家その家にあった
飾りやシンプルさや美というのはあるのではないかなと思ったりする。
そしてそれがたくさん世に現れることで見る方は楽しめるのではないか。
そもそも、料理雑誌などに見るようなテーブル、食器、とか
型にはまった今風なものをすべて否定するわけではない。

映画に登場する美しい料理たちは、どこのどんな料理であっても
素晴らしい映像によって演技によって、うっとりするものになっている。
映画で食べ物を見るのは好きだなぁ。とつくづく。



この映画に登場するのは、ジュリア・チャイルドという料理研究家の女性と
ジュリーという人気料理ブロガー。ジュリアは1960年代にフランス料理の
本を出版して一躍人気料理家になり、この映画の話は実在の人物の話でもある。
ジュリーは、その料理研究家ジュリアのファンのような女性で、彼女の
料理本に載ったレシピ524個を一年で作り、その様子をブログに綴り人気を得て
最終的には本を出版するまでになる。
彼女はとてもあこがれているジュリアからは、あまり良い風に思われておらず
その理由を察することもできるが、
フランス料理の本を出版するまでに大変に苦労を重ね、懸命に料理の研究をし
その地位を築いたジュリアのような人生を生きた人だからこそ
若いブロガーによって再び自分の功績や料理が注目された点においては
寛容になってもらえたらと、正直に映画を見て思った。
映画を見ると、どうしてもそこが、ちょっと残念な気になってしまう。

ジュリアはさて、ジュリーが自分の料理本の料理をただ作ってブログに書くだけで
彼女が注目されて地位を築いたことは認められないことだったのだろうか。
そのような理由ぐらいしか今は思いつかないのだが。

おそらくジュリーには人を魅了するような文章のセンスだったり、
ジュリアの料理への熱意などもあったと思うのだ。
ただたんに素晴らしい料理をいくら作って載せようと、
記事が注目されるわけではないだろうから。

料理をやることがだんだんと義務化していき、パートナーとの仲もぎくしゃく
してしまうジュリーだけど、最終的には彼ともうまくいく。
自分に余裕がなくなり周りへ横柄になってしまうのは
とてもわかる話だったし、気づかされることでもある。



そういうことも通していろいろな経験を重ねていく様子、
また、ジュリアの人生の苦労や、苦労をもろともせずに立ち向かっていく
彼女の根気や情熱などは見ていて感動した。

ジュリーは映画の中ではジュリアへのリスペクトや彼女の料理への熱意が
ありありと伝わってきて、ただ適当にとってつけたような安っぽい真似を
したわけでもなく、彼女によって再びジュリアが紹介されたような形に
なっていると感じられた。

まあ実際にはジュリアが何を不快に感じたのかを詳しく知るわけではないが
その点はいつまでももやっとしたままで残っている。
それ以外の内容は素晴らしかった。



家の台所で料理を作り、失敗すると、こんな台所だから失敗したと
彼にやつ当たったりしてしまうところなどは、その行動自体が料理以上に
大失敗なのだが、身に覚えのある人はきっと多いだろうし、
気を付けようと思わせられたりした。笑
彼女が料理にとりかかる姿は一生懸命で、料理やってみたいような
気持ちにもさせてくれた。
あたしは料理するの好きでもないのに。笑
だからいろんな意味で見てよかった。


†Black Mass†

2017年04月24日 | ■MOVIE



ブラックスキャンダル
※完全ネタバレ

主人公はジョニー・デップ演じる
ホワイティ・バルジャーという実在のギャング。
FBIを利用しながら犯罪を繰り返すアイルランド系の人物で
映画の中の本人の厄介度がとてつもない。
ともかく危険すぎるし、簡単に人を殺すことをもはや
楽しんでさえいる感があり、あんなに異常な状態で
長年地位を保っていたのなら、ぞっとするほかないだろう。



どちらかというと、本編の中でやることなすことは
人の上に立つタイプではなく下っ端のような感じだ。
彼に協力するFBIの幼馴染コナリーは、友達への忠誠こそ
何より大事だと考える人間で、彼こそギャングみたいだ。
ぞっとする不気味さをもつバルディの感じを、うまく
ジョニー・デップが迫力をもって演じているので
見ていると憎たらしい気がしてくる。笑



結局元仲間らにはいろいろな情報を暴露されるし
最終的には捕まるのだが。

正直言って何が見どころなのか分からないし
見ても見なくても良かったような映画だなというのが正直なところ。
クライムムービーだから見たようなノリで、
この主役はただただ憎たらしいような感じだったから
あまり見ていて良い気分でもなかったかな。


†GODFATHER Ⅲ†

2017年04月24日 | ■MOVIE



※完全ネタバレ


アンディ・ガルシアがドンになっちゃうという展開を聞いていて
Ⅲだけは抵抗があり見たのはずっと後になってからだった。
Ⅲでは年のいったマイケルが、フレドを殺したことで苦しみながら
生きている。彼はなんとか合法的な商売を軌道に乗せて
落ち着きたがっていた。しかしまたしても抗争の種はあり殺人は起き
命を狙われ商売はどうなるかも分からないといった不安定な状態。
ソニーの息子は父親そっくりの短気ぶりで、とてもドンの器では
ないと思うのだが、結果的に彼がドンに落ち着くことになり、
マイケルの娘は自分を狙った暗殺者に殺されてしまう。
ラストでは孤独のうちにひとり息絶えるマイケルの姿。

はっきり言ってマイケルの人生が終わったことで、彼自身もほっとした
ような気がした。



見ているこちらとしては、彼にはとてもついていけない。
いったい何を考えているのかが全然分からない。
ケイとよりを戻したいと真剣な素振りを見せても
合法的な仕事をやって落ち着きたいと思っても
兄のことで苦しんでいても
自分がドンであることとそれは別のように見えて
まるで二重人格みたいな感じがするからだ。

ケイが彼を恐ろしい男だと思っているのは当然だし
彼女より何も考えていないタイプの女性であれば
マイケルに依存させられる病気みたいな心境になっていたかも
しれない。マイケルは人の心を操ろうとするというか
いつのまにかコントロールしていようとする感じがする。
そういう仕事をしている人だからなのか元々のものなのか分からない。
ケイは距離を置いて彼を見ているから助かったともいえる気がする。
付き合っている女性が暗殺者に殺されずとも自殺する可能性もある
ような、そういう危険がマイケルにはあると思う。

そもそも殺人を何とも思わないタイプの人なのだから
普通に理解できる域を超えているのだろう。全体的に。
息子も父の仕事に就かずオペラ歌手になる夢をかなえる。
それが普通なのではないだろうかとも思う。
いくらコルレオーネ家が権力や地位などを手に入れたとしても
どのようにしてそれが成り立っているかを薄々わかっている
家族からすると、そういうものとは距離を置きたいだろう。

この映画のすごいと思うところは、そのあとにほかの映画を見ようと
思っても、なかなか見れるような気分にならないところ。
とにかく濃いし重いし引き込まれ感も普通じゃないし
あたしが好きだからというのもあるだろうが
ずっと後まで心に残るような作品である。

なかなか気分を変えて次の映画にはいかれないのだ。

でもゴッドファーザーはやっぱり1と2が最高かなと思う。
トムも出てくるし。
ちなみにだが、この映画のアンディ・ガルシアの演技は
なんとなくブラッドリー・クーパーを思い出す。
ブラックレインでもそう思ったなぁ。
こちらではやっぱり高倉健が最高だ。

何よりアル・パチーノの魅力は反則だと思う。


†Lords Of Dogtown†

2017年04月24日 | ■MOVIE



ロード・オブ・ドッグタウン
※完全ネタバレ

ヒース・レジャーが出てる映画を漁っていて見る機会を得た。
彼は本当にすごい演技力だなぁと今回も改めて思った。
この映画ではサーフ・ショップをやってるスキップという
男の役なのだが、常に酒に酔ってフラフラで、非常識で変な人物
と言おうか。さすがだ。



内容はスケーターの若い子たちが主役で、世の中のスケボーの
ブームにのってスターになっていくという感じのストーリー。

仲間で集まってともかく破天荒なすべりとか遊びとかを繰り返し
悪さに夢中になって人の迷惑を楽しんでいる若者らだ。

危機感ゼロでその日めいいっぱい楽しいことだけのために
生きているような時期。
あの、若い時のはちゃめちゃぶりというのは
いったい何だろう。



車の後ろに引っ付いてスケボーしてる男の子たちの映像には
ぞっとした。一歩間違えたら悲惨どころの話じゃない。
そういうスリルを求めて遊びに夢中の若者たちだが、
例えばそのうちの一人はお金を稼いで親を楽にさせてやりたいとか
スケボーのコンテストで勝ってトロフィーを父親に見せたいだとか
家族とのつながりも大切にして生きている。

お互いにライバルで、家族のように付き合っているが
チームの引き抜きなどの件で離ればなれになっていく。
しかし仲間の一人が脳腫瘍になり、また昔の仲間たちが戻ってくる。

楽しいのはスケボーの映像がみられることだ。
いとも簡単にすいすいすべってる様子は見ていてとても爽快。
こんな風にすべれたら夢中にだってなるだろうなぁ。
スケボーのシーンは見ているこちらも夢中になる。



このスケボーの楽しさを感じられるのは、インスタで出会った
スノーボーダーのおかげである。彼には本当に感謝せねばならない。
一度も経験がなくて見るのと、実際にやってみてみるのとでは
多分倍も楽しさが違うと思う。
あたしは全く何もできないのだが、それでもスケボーして遊んだ
経験のおかげで本当に心からわくわくする気持ちを味わうことが出来た。

彼が最初にスケボーやってる映像を見て、
面白そうなのでやってみようと思った瞬間に、
それを口にしたら、その場にスケボーもあって
教えてくれる妹もいたという恵まれた環境のおかげで、
あんなに夢中になる遊びを知れた。

あたしは運動音痴どころか運動のうも知らないし
PTSDの情緒不安定の鬱気味な状態だったが、それでもスケボーは
めっちゃ面白かった。特にスピードを出してすべっているのではなく
基本の動作的な地味で細かなことを練習しているに過ぎないのに
そして実際にそれが出来ているわけでもないのに
なのになぜそんなに爽快感があるのか。スケボーって不思議な魅力を
持っていると思う。

もちろんしょっちゅうこけるのだが、それは怖くない。
当たり前のことだから。ただ腕が使えないほどひどいけがを負う時が
あるけど、それでも懲りるどころか滑りたくて仕方ないという気にさせる。
何もできないあたしですら、こんなにハマるから、
ある程度乗りこなせる人たちはどれほど楽しいだろう。

すべっているときに彼らが見ている世界はどんな感じだろう。

スケボーは一人で遊べるのもいい。チームとか苦手なあたしには
こういう地味にひとりで ずっと遊べるものは最高。

ところでそのインスタのスノーボーダーの彼はスケボーもするのだが
スノーボードの映像なども本当にすごい爽快感で
とてもかっこいい。雪の上をすべるってどういう感じだろう。
あたしはリフトに乗れないので経験することはないだろうが
想像する限りすごく楽しいだろうな。
あたしの親友はそれこそすごくスノボにはまっていたし
一緒に行こうと言われたが、無論のことついていってもゲレンデ出ないよ
と答えていた。彼女は雪の世界が別世界だと言って骨折やねん挫など
なんのそのだと語ってた。

余談だが彼はブランドのスポンサーがついていて第一線で活躍している。
インスタでは彼に描いたあたしの作品などと共にそちらのインスタも
紹介しているのでご覧いただけたらありがたい。



映画に話を戻そう。こういう青春ものは嫌いではないし
使っている音楽なども素敵だ。オジーの曲でスケボーするシーンなどは
なかなか心をつかんでくれる。
気づいたのは、あたしの心は大人になってしまい、
若いゆえの破天荒ぶりとは何だったのだろうかと
今になってつくづく思わせられている。

現在は絶対安静の状態で何もできないのに、スケボーしたいという
欲求がかなり高まってしまった。笑
そういう意味でもこの映画は見て正解だったと思う。
あと、ヒースの演技力もだ。
彼がスケーターになってくれていたら?とちょっとミーハーな
わがままはあるが。

サーフィンの映画でお気に入りの、ライディングジャイアンツも
また見たくなったなぁ。




†JASON BOURNE†

2016年10月25日 | ■MOVIE

JASON・BOURNE

※完全ネタバレ※



数ある映画の中でも特別好きなのがボーン。
このジェイソン・ボーンのキャラクターがなんとも好きで
新作公開中を思い出したその足で映画館へ。
こういうことだけに行動力見せる。

ボーンはアイデンティティ、スプレマシー、アルティメイタムの三部と
サブストーリーのレガシーの四本が出ており
どれか一つだけ見ても十分面白いし他のも見たくなるようにできている。
アクションとボーンの仕事っぷりが洗練されていて
基本的に内容のほとんどをそれが占めている。
そして最大の謎、ボーンの失われた記憶をおっていく。

あたしはジェームス・ボンドも好きだが、ボンドは完全なファンタジーだ。
まるでギリシャ神話みたいに。
ボーンは、あたしたちと同じ現実の世界を生きており、
自分とはなんなのか、どう生きるかを模索し続けている点で
生々しさと、誰しもがボーンの一部を自分に感じられる。

もう新作は出ないと思っていたあたしにとって続編はかなりハッピー。
今回の新章でも、これまでのボーンのテンポを貫いていて
見ている方はすぐにボーンの世界へと帰られる。

これまでの記憶を思い出したボーンは、日の当たらぬ世界で
拳闘試合などしながら稼ぎを得て暮らしているようで
そこへニッキーという女性がコンタクトをとってくる。
ニッキーは前作にも出てくる元CIAで、ボーンと共に
CIAから狙われる身となって逃げた。
現在ディソルトというハッカーと協力しており、
新たな情報を得たのでボーンにそれを伝えたかった。
(このディソルトが結構いいキャラクターだ)
というわけでアテネの大規模な市民のデモに入り込んで
ニッキーと待ち合わせるのだが、すでにCIAから見張られていて
ボーンを狙う暗殺者もやってくる事態。

このアテネのデモの臨場感が本当にすごい。
デモの中に入り込んでしまって、おろおろするような気持ちに
させるほどだ。ニュースなどでは見られない、デモの迫力や
中の無法ぶりというかはもう、最高の映像だった。
リアルな感じのするこの映像が作り物というのが改めてすごい。
ニッキーと会うものっけから、このすさまじいデモの中で
追跡を交わしながら短くやりとりするボーン。
かなりの混乱の中を脱出しようとするも結局ニッキーは殺されてしまう。
このときニッキーはボーンの運転する単車の後ろに乗ってて撃たれたのだが
撃たれた衝撃でのけぞってか、その瞬間そこにある壁に思い切りぶち当たって
ものすごい音を立てる。
目も当てられないほど無残な一撃に襲われ、普通なら即死だろうに
ストーリーの展開上のため、まだ生きていて、それが本当に苦しそうに
息してて、見てるこっちは動悸がする。
ニッキーの最後は本当にかわいそうだった。

ボーンはニッキーの情報を追っていく。今回は父の死が関係しているようだ。
父は過去にベイルート(レバノン)でテロにあって死んでいる。
その時のボーンの回想に出てくるレバノンの風景は、よく雰囲気を
伝えている。

今回うれしかったのがIT企業の男アーロン・カルーア役で
リズ・アーメッドが出てくることだ。
この役者はミッシングポイントでとても素敵な演技をしていて
品があっていいと思っていた。
今回はいかにもちょっと自己中で腰抜けなところをもってそうな
ITの男を演じているのだが、やっぱり素敵な役者だわ!

トミー・リー・ジョーンズがCIAでボーンの敵となる男を演じている。
まぁこの悪そうなことといったら。それにその部下で、野心家な
ヘザーという女性もボーンに協力するが、信用できない。

映画は最初から最後までずっと緊張の連続が続く。
ボーンは父親がなぜ死んだのかなどを知り
最終トミー・リー・ジョーンズ演じるデューイ長官のもとへむかう。
長官に殺されそうになるも、ヘザーが長官を殺して間一髪。
命を助けられるボーン。
この時、デューイの命令でヘザーとカルーアを殺しにやってきた暗殺者は
ボーンに仕事を邪魔された挙句警察に追われる羽目になる。
ボーンにしてはこれまでと違った展開で、彼が逃げる暗殺者を追い、
その後ろを警察が追ってくる。
これまた激しいカーチェイスが繰り広げられるのだが、
暗殺者はスワットの装甲車で邪魔な車を何台もぶっ飛ばしながら走っていく。
このわやくちゃな運転見ていて大笑いしてしまった。
最終的には二人で死闘を繰り広げることになる。
ボーンは毎回そこにあるものを武器にする天才だ。
今回は拾った鍋みたいなもので相手のナイフに応戦していた。
暗殺者は手強かったしピンチもあったけど、これまでのボーンより
やっぱり格段に強くなっている気もした。

彼はデューイと面と向かったときに、CIAに戻ってくるように
いわれて、別の生き方を探すと答えていた。
デューイを殺したヘザーは自分がのし上がるために今度は
ボーンを利用しようとするけど、結果、ボーンには筒抜けだったため
彼女の野心は失敗する。
前に出てきたパメラのような正義感からボーンに協力する
タイプとは違い、なかなか手強い野心家の女性みたい。

ボーンらしさを全く失うことなく、見ごたえある2時間は最高だった。
スクリーンでボーンがみられるというのもうれしすぎることだ。
本当に新章がきてうれしい。

今この現実にボーンがいたら、と想像するというか、そういう
パラレルワールドに入り込んでいるような気持になる。

あたしたちはこの世界で自分が何者かを問い、
どう生きてようかと葛藤する。
それは幸せになりたいと望んでいるからだと思う。
幸せになるってどういうことなのかを問うていくと
生きるとはどういうことなのかを探るのと直結していく。

ボーンが悩むように、あたしたちも迷いながら
しかし彼が別の生き方を探すと決めたように
その覚悟が次への道を開くのかもしれない。

いろんなことを、ボーンは教えてくれていると思う。
映画が面白い以上のいろんなことを。

世界の様々な現象実際のできごとなどが現れるボーンの世界は
あたしたちの世界でもある。

本当に面白かった。やっぱりボーンは最高だ。