遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

面白古文書『吾妻美屋稀』6.「新謎わらひふくろ」

2023年07月20日 | 面白古文書

面白本『吾妻美屋稀』も6回目となりました。

今回は、きわどい話が満載の面白瓦版です。

ちょうど、勤め帰りのサラリーマン諸氏が家へもって帰るにはチョットと、通勤電車の棚に置いてくる、あの夕刊紙の江戸版ですね(^^;

でも、実際は、どの話も、下の方へ落ちそうで落ちないものばかりです。

いつものように、4分割して、右上から順に。


 新謎わらひふくろ

・あおのけふるつてしかミつきこしにちからを入てもち上る物ナアニ  四ツ手あみ
(仰のけ振るってしがみ付き、腰に力を入れて持ち上げるものナアニ  四ツ手網)

・ひとつしるとよろこんでま一つしなされ/\とせがむものナアニ  おとし噺
(一つ知ると喜んで、ま一つしなされしなされとせがむものナアニ 落し噺)

・ひめごせがまたをひろげ大きな物ヲまゑへあてひちや/\する物ナアニ  せんだく
(姫御前が股を広げ、大きな物を前へ当て、ひちゃひちゃするものナアニ 洗濯)

・そろ/\といれてぬいたあとをよふふいておくものナアニ きせるのそうじ
(そろそろと入れて抜いた後をよう吹いておくものナアニ 煙管の掃除)

・ぬつと入てつきさへすれバしろいものがぬら/\とでるものナアニ
(ぬッと入れて突きさえすれば、白いものがぬらぬらと出るものナアニ 心太(ところてん))
【心太(ところてん)】煮だした天草が冷めて煮凝る(固まる)時の様子から、凝る(心が語源)ことによって太くなるもの=心太。当初は、「こころふと」と呼ばれていた。「こころふと」=>「こころたい」=>「こころてい」=>「こころてん」=>「ところてん」

・くらがりでそつと一ツとつたといふてよろこぶものナアニ  ほたる
(暗がりでそっと一つ取った言うて喜ぶものナアニ 蛍)

・でるたびにエヽゑい/\といへとあとがくさいといふものナアニ 花火せんかう
(出るたびにエエエイ/\と言えど、後が臭いと言うものナアニ 花火線香)

・まあ一ばんさせといふもういやじやといふてもぜひにさせといふものナアニ 将棋
(まあ一番指せと言う、もう嫌じゃと言うてもぜひに指せというものナアニ 将棋)

・入レてつかふてしもふてあとをふいてかミをはさんでおくものナアニ  重箱
(入れて使うて仕舞うて後を拭いて紙を挟んでおくものナアニ 重箱)

 


・入れ○○て見でもはいらんからあなをついてはいらすものナアニ たびの袋
(入れ〇〇て見でも入らんから穴を突いて入らすものナアニ 足袋の袋)

・むすめのだいじのものを○○にふわつたなとはヽごがしからしやる物ナアニ  ぽぺん(娘の大事の物を○○にふ割ったなど母御が叱らっしゃる物ナアニ ポペン)
【ポペン】ポピン、ポッピン。ガラス製の玩具。吹くと薄底がペコンペコンと鳴る。

・わかいごけこがしたい/\といふておやごもさしてやりたいといふ物ナアニ  物国じゆん礼
(若い後家がしたいしたいと言うて親御もさしてやりたいと思う物ナアニ 国巡礼)

・ちよつとあけてさへくさいのによつておヽつてするときハなをくさからふといふ物ナアニ しばいの番付(ちょっと開けてさえ臭いのに、よって覆ってするときはなお臭かろうという物ナアニ 芝居の番付)

・ぬいたりはめたりしてとヽがよいか/\といへバかヽもよい/\といふ物ナアニ 竈のうハぬり
(抜いたりはめたりして、トトが良いか/\といえば、カカも良い/\と言う物ナアニ 竈の上塗り)
【上塗り】竈の漆喰仕上げは、使っているうちに傷んでくるので、上塗りし直して修理する。上の文は、この時の様子。竈で使う鍋などを抜いたりはめたりして調整する?

・きのせくときついかどぐちてやつてしまふものナアニ 年玉
(気の急く時、つい門口でやってしまう物ナアニ 年玉)

・わしもわかいときハさしたかつたむすめもさしたかろとおもひやる物ナアニ くしかうがい
(ワシも若い時に挿したかった、娘も挿したかろうと思いやる物ナアニ 櫛笄)

・おれもわかいときハよいのがしたかつたむすこもさぞしたかろと思ひやる物ナアニ  下帯
(俺も若い頃は良いのがしたかった、息子もさぞしたかろと思いやる物ナアニ 下帯)

・大きふなるとけがはへてまたかハのむけるものナアニ   なんばきひ
(大きうなると毛がはえて、また皮のむけるものナアニ 南蛮黍)
【南蛮黍】とうもろこし

・ふんどしまではづしてとりかヽるものナアニ のみ(褌まで外して取りかかるものナアニ 蚤)

・むすめごにひろけさしてするものナアニ 哥かるた
(ムスメゴに広げさしてするものナアニ 歌かるた)

 


・ちよつと手さしするとつけつまわしつさしたかる物ナアニ  蜂
(ちょっと手指しすると、付けつ回しつ刺したがるものナアニ 蜂)

・ゆひさきでそろ/\といちりかまハせバついわれる物ナアニ  そろばん
(指先でそろそろと弄りまわせば、つい割れる物ナアニ そろばん)

・しめたりゆるめたりする内アヽよふなるといふものナアニ  小つゞみ
(締めたり緩めたりする内に、ああ良うなるという物ナアニ 小鼓)

・むすめがいちどしてから又したい/\とおもふている物ナアニ  いせ参り
(娘が一度してから、又したいしたいと思うているものナアニ 伊勢参り)

・はじめハいたいやうなれとだん/\こころよくなる物ナアニ  しやくのはり
(初めは痛いようなれど、だんだん心良くなるものナアニ 癪の針)

・うつむけにしてしりから入てしつくりとしてよいといふものナアニ おけの𥶡
(うつむけにして尻から入れてしっくりとして良いという物ナアニ 桶の𥶡)

・子のうまれたび/\にだん/\とひろるものナアニ  一家親るい
(子の生れたびたびにだんだんと広るものナアニ 一家親類)

・いれるときすこししたり入レたりするうちにアヽながれるといふ物ナアニ 質屋
(入れる時少ししたり入れたりするうちに、アア流れると言うものナアニ 質や)

・とふぞちつさがねたあいだにしたいものじやとめをとがいふている物ナアニ  ちのミごのさかやき
(どうぞ稚児が寝た間にしたいものじゃと夫婦が言うておるものナアニ 乳飲子の月代(後述))
【ちっさ】稚児、小児。

 


・そろ/\大きふなるとけがはへていろど(づ?)く物ナアニ  桃
(そろそろ大きうなると毛がはえて色づく物ナアニ 桃)

・まいらばんぜうとあをのけにして又いれかけるものナアニ  双六のさい

(まいら盤上と仰のけにして、又入れかける物ナアニ 双六の賽)

・ゆびさきでいちりまハせバじく/\としるのてるものナアニ  ほうづき
(指先でいじりまわせば、ジクジクと汁の出る物ナアニ ほうづき)

・かミをもんでまつてゐるとサアしませふといふ物ナアニ
(髪をもんで待っているとサアしましょうと言うものナアニ 月代)  
【月代(さかやき)】男の頭髪を頭の中央にかけて半月形に剃り落とした、その部分のこと

・とヽさんがも○○んさきに二かいで今しておくれとむすめごがいふ物ナアニ  女のかミゆい
(トトさんがも○○んさきに二階で今しておくれと娘ごが言うものナアニ 女の髪結い)

・どれはじめうかと女房がだしかけてひろげるものナアニ  ぬいもの
(どれ始めようかと女房が出しかけて広げる物ナアニ 縫い物)
  
・しハがよつても入レさへするとしやつきりとたつものナアニ  かみ代
(皺がよっても入れさえすれば、しゃっきりと立つ物ナアニ かみ代

・にぎつて見てどふでもふといがよいとこけごがいふものナアニ 〇・・〇
(握ってみてどうでも太いが良いと後家御が言うものナアニ 〇・・〇

・まいばん火をけして人がねるとそろ/\ととりかかる物ナアニ  ねずミ
(毎晩灯を消して人が寝るとそろそろと取りかかる物ナアニ 鼠)

・はだかふるつてだきついて一ばんとつたといふ物ナアニ 角力
(裸奮って抱きついて、一番とったと言うものナアニ 角力)

 

 

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面白古文書『吾妻美屋稀』5.「うそまこと見立角力」

2023年07月18日 | 面白古文書

今回は、オーソドックスな面白見立て番付けです。

が、例のごとく、結構な難物で、多数でした。

四分して、右上から順に。

うそまこと見立觔

うその方

大関 百物がたりのばけもの
  (百物語の化物)
【百物語】多勢の人が集まって、 ろうそくを百本立てて置き、それぞれが化物 の話をして、一本ずつ蝋燭を消して行く。100話怪談を語り終えると、本物の化物が現れるとされていた。

関脇 めしのこげすきといふ居候
  (飯の焦げ好きという居候)

小結 切り芝居の今入れかわつた
  (切り芝居の今入れ替わった)
【切り芝居】江戸後期、一切(一太刀をあびせる)だけの芝居を立見で安価に見られる興行。通常、3本立の三切芝居で、一切が終わると、立見席は入れ替えになった。

前頭 びんぼう質二おくといふ人
  (貧乏質に置くと言う人)

同  魚つりのいいしやく
  (魚釣りの言い尺)

同  朝ひなのぢごくやぶり
  (朝比奈の地獄破り)
【朝比奈地獄破り】朝比奈三郎義秀は、剛力無双の自分に、地獄の鬼でもいいから、挑戦してこいと挑発した。すると夢の中に鬼が現れて、義秀を馬鹿にして笑ったので、鬼を追いかけまわし、地獄の門を破り、やがて地獄を征服した。歌舞伎や狂言の演目として人気があった。

同  土用かんの入にきく薬
  (土用、寒の入に効く薬)

同  つんぼの札かけてるこじき
  (ツンボの札掛けてる乞食)

同  けいせいの入レぼくろ
  (傾城の入れぼくろ)
【傾城】遊女

同  事ふれのはやるやまひ
  (事触れの流行る病)
【事触れ】物事を世間に言いふらす人

 

同  やすうりのべつかう物
  (安売りの鼈甲物)

同  げいしやのしやくもち
  (芸者の癪持ち)

同  はらにあなのある国
  (腹に穴のある国)
【腹に穴のある人の国】江戸期、朝比奈伝説の一つ、「朝比奈島巡り」の中で、朝比奈三郎が、巨人国、小人国、手長・足長の国、腹に穴が開いた人の国などをめぐる御話し。

同  ゑきしやの方角
  (易者の方角)

同  かほミせの口上
  (顔見世の口上)

同  仲人のでたらめ口
  (仲人のデタラメ口)

同  伊勢参りにこじき
  (伊勢参りに乞食)
【伊勢乞食】伊勢参りの人々に物乞いをする本物の乞食の他に、参拝客相手に荒稼ぎをする商人を嘲って伊勢乞食とよんだ。

同  相場仕のたいへいらく
  (相場師の太平楽)
【太平楽】好き勝手なことやでたらめな言い分。

同  百しやうの不作
  (百姓の不作)

同  新おきやへ入こむ奉公人
        (新置屋へ入込む奉公人)
        
同  けごん経大ぼうのとり

行司 正月ことば

頭取 たぬきねいり(狸寝入り)
   辻だんぎ(辻談義)
          ほうべん(方便)
        

まことの方
大関 大わいときのねんぶつ
   (大わい時の念仏

関脇 小べんたれたあとへ寝るうバ
  (小便垂れた後へ寝る乳母)

小結 山上参りのどろ川で白状
  (山上参りの泥川で白状)
【山上参り】山伏姿でホラ貝を吹きながら、蔵王権現に上り、参詣すること。

前頭 年よりめうとむつまじいの
  (年寄り夫婦睦まじいの)
 
同 ていしゆのるす二ねぬ女房
 (亭主の留守に寝ぬ女房)

同 せぎやうのさかやき
  (施行の月代)
【施行(せぎょう)】僧侶や貧しい人に物を施し与えること。特に、伊勢参りや四国巡礼の無料で接待がなされた。食べ物、飲物や草鞋だけでなく、月代などのサービスまで施された。
【月代(さかやき)】男性が前額から頭の中央にかけて髪を丸くそり落とすこと。

同 何時でもとんでくるおゐしや
 (何時でも飛んでくるお医者)

同 夜道にちやうちんかりた嬉しさ
 (夜道に提灯借りた嬉しさ)

同 春はなさき秋ミのるの
 (春花咲き秋実るの)

同 地廻りのまぶにゐけん
 (地廻りのまぶに意見)
【まぶ】江戸後期の隠語。てきや。

 

同 十月の水しぐれ
 (十月の水時雨)

同 俄雨にしらぬ人二傘かすの
 (俄雨(にわかあめ)に知らぬ人に傘貸すの)
 
同 孝行者のもろふたほうび
 (孝行者のもろうた褒美)

同 おしやかさまのふへるの
 (お釈迦様の増えるの)

同 かわい子をせめるやいと
 (かわいい子を責める灸)

同 てんぴんのはり口
  (天秤の針口)
【針口】天秤てんびんの中央、支柱の上部にあって、平均を示す針のある部分。

同 てしま先生はなし
 (手島先生話し)
【てしま先生】手島堵庵。江戸時代中期の心学者。平易な言葉で、教化の普及につくした。

同 道中の一里づか
 (道中の一里塚)

同 車に乗て居るいざり
 (車に乗っている躄)

同 はかりのむだめ
 (秤の無駄目)
【無駄目】竿秤で、実際には使うこともないのにつけてある秤の最初の目盛り。

同 宮寺へ奉納のしな
 (宮寺へ奉納の品)

行司 じしやく 北むく
  (磁石 北向く)

頭取 立石のせし〇
          こよミの日し○
          こよミの月し○
          三月三日汐干

【三月三日潮干狩】江戸時代、例年3月3日は大汐干潟になるので、人々は汐干狩りに出かけた 

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今年も「みょうがぼち」で夏

2023年07月16日 | 故玩館日記

この季節、どうしても一度は食べたくなるお菓子があります。

 

初夏の郷土菓子「みょうがぼち」です。

ソラマメの餡を小麦粉、米粉の皮で包み、ミョウガの葉で巻いて蒸した素朴な食べ物です。田植えなど農作業の合間におやつとして食べました。それぞれの家庭でそれぞれの味。

岐阜市と大垣市の間、美濃の真ん中地域のローカルな家庭料理です。故玩館のすぐ北、北方町と近隣数村の狭いエリア内で手づくりされていました。すぐ近くでありながら、私の地域ではこのような物は全く無し。ところが幸いなことに、隣のおばあさんがそこの出なので、毎年、出来立ての手作りみょうがぼちをいただいてました。

しかし、高齢になられたので、体力のいるミョウガぼち作りはパス。自前で作る根性は無いので、最近は、今回のように、和菓子屋さんでみょうがぼちを求めています(^^;

 

田舎の郷土菓子には番茶が合う。

このままがぶっといきたいこところですが、

ミョウガの葉は取っていただきましょう。

ソラマメ餡ともっちりとした皮、そしてミョウガの新葉のコラボレーションが見事です。甘さをひかえたソラマメの風味に、ふわっとしたミョウガの匂いが口の中で協奏します。この時、ソラマメのツブツブの残り具合が非常に重要です。

この10年ほど、みょうがぼちの人気が高まり、岐阜市内の和菓子屋さんでも、季節にはみょうがぼちを置く所が増えて来ました。全国発送にてんてこ舞いのお店もあります。みょうが餅なる品まで出てきました。そろそろ淘汰の時期ですね。七月いっぱいが食べごろ。食べ比べて、ランキングをしてみたいですね(^.^)

 

 

 

 

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面白古文書『吾妻美屋稀』4.「歌舞伎狂言穴さがし」

2023年07月14日 | 面白古文書

面白古文書『吾妻美屋稀』の4回目、『歌舞伎狂言穴さがし』です。歌舞伎の穴を突いています。

上段の右から順に見ていきます。

新版 歌舞妓狂言穴さがし

・質に入た宝物をうけもどすに利足出したを見たことなし
(質に入れた宝物受け戻すに、利息出したを見たこと無し)

・やつこのそうじに竹ぼうきではいても塵取が有たことなし
(奴の掃除に竹箒で掃いても、塵取りが有ったこと無し)

・末社たいこが大さハぎの酒もり二作り身すひ物のでたことなし
(末社太鼓が大騒ぎの酒盛りに、造り身、吸物の出たこと無し)

・茶見世の女子が手桶さげて水くミに往てもどつた事なし
(茶店の女子が、手桶提げて水汲みに来て、戻った事無し)

此通りちうしんとかけ出しポント切連ぬといふことなし

・長持ちの内にかくまハれて居るものが小べんに出たことなし
(長持ちの内に匿われている者が、小便に出たこと無し)

 

・寶の剣の身をすり替るにドノ鞘へでも合ぬことなし
(宝の剣の身をすり替えるに、どの鞘へでも合わぬこと無し)

・むほん人の絵姿ハ黒し外の着もの見たことなし
(謀反人の絵姿は黒し、外の着物見たこと無し)

・勅使上使の贋ものハしたに木綿どてら着て居ぬことなし
(勅使、上使の贋者は、下に木綿の褞袍(どてら)着ていぬこと無し)

・しゆりけん打とパツト立のろし木の根もとへ仕掛たをミた事なし
(手裏剣打つとパッと立つ狼煙、木の根元へ仕掛けたを見た事無し)

・お家の伯父伍ハいつでも敵やく押領のわる工みせぬハなし
(お家の伯父御は、いつでも敵(かたき)役、押領の悪巧みせぬこと無し)

・敵もちの浪人が大切までに出世せすに居たことなし
(敵持ちの浪人が大切りまでに出世せずにいたこと無し)【大切】歌舞伎の興行で一日の演目の最後につける一幕。

 

・若とののほうらつに太夫のあげ代梻ふたことなし
(若殿の放埓に、太夫の上げ代払うたこと無し)

・宮寺の場へ参詣の仕出しがさいせん上て拝んだことなし
(宮寺へ参詣の仕出しが、賽銭上げて拝んだこと無し)
【仕出し】劇中で、通行人や群衆など、最も軽い役。

・大盃で大ぜいが呑でもてうしのつぎ目を仕たことなし
(大盃で大勢が呑んでも、銚子の継ぎ目をしたこと無し)

・世話場の門口にしやうじ入れたり簾戸をはめたことなし
(世話場の門口に、障子入れたり、簾戸(すと)をはめたりすること無し)
【世話場】町家・農家などの日常生活を演じる場面。
【門口】家の入口

・松の木のうへにてつぽうを持た忍びものしゆびよふやつたことなし
(松の木の上に鉄砲を持った忍び者、首尾よくやったこと無し)

・欠落して来た女郎をかくす押入に物の入てあつたことなし
(欠落(かけおち)して来た女郎を隠す押入に、物の入れてあったこと無し)

 

・銀箔のお月さんハいつでも丸いかけた月のでたことなし
(銀箔のお月さんは、いつでも丸い、欠けた月の出たこと無し)

・落人ハ笠と杖ばかりを持て路銀の用意あつたことなし
(落人は、笠と杖ばかりを持ちて、路銀の用意あったこと無し)

・サアすつぱりおやりなさんませとべつたり居るものをころしたことなし
(サアすつぱりおやりなさんませとべったり居る者を殺したこと無し)
【べったり】尻を落として座るさま。

・一トかせ切れた手おひ上着の肩をぬがぬといふことなし
(一(ひと)かせ切れた手負い、上着の肩を脱がぬと言うこと無し)
【かせ】刀で切る回数を表わす

・むほん人のほろぶるハかゞり火に丁ちん昼であつたことなし
(謀反人の滅ぶるは篝火に提灯、昼であったこと無し)

・顔見世の中かたは後室バかり男あるじが有た事いつもなし
(顔見世の中かたは後室ばかり、男主が有った事いつも無し) 
 

 

完全制覇とはいかなかったまでも、は最小で済みました

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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面白古文書『吾妻美屋希』3.「かねもちになる伝授」

2023年07月12日 | 面白古文書

面白古文書『吾妻美屋希』の3回目、「かねもちになる伝授」です。

これまでの面白瓦版と異なり、金持ちになるための方法を伝授するというものです。

項目は大変少なく、金銭、着物、諸道具、家宅、用心、女房、命、堪忍、遊芸、不実、食物、酒、桶類、印判、下人、下女・丁稚、色欲、商売についてです。相変わらず、が多いです。ただ、ばかりで、全くお手上げの項目は無し。何となく、著者の言わんとすることがぼんやりと浮かんできます。

4つに分けて、右上から順に。

かねもちになる伝授

金銭 銭かねハ神ほとけのやう二をもひあだくつかへハばちあたりとこころへすこしもつかふ事なかれ
(銭金は、神仏のようにも思い、徒く使えば罰当たりと心得、少しも使うことなかれ。) 

着物 きものハせんだく物よしとおもふべしよきものをきれハ◎つかふはじめなり長そでハ別なり
(着物は洗濯物を良しと思うべし。良き物を着れば銭使う始めなり。長袖は別なり。)
【◎(内側の小〇は□)】銭

諸道具 身ぶんさうおふのものがよしみせのどうぐハかぎるべしその外ハ○○○○○しんぼうすべし
(身分相応の物が良し。店の道具は限るべし。その外は○○○○○辛抱すべし。)

家宅 あまりひろきハあしせまきを惟なり又家ハよき家ヽ作るべしあしけれバわざわひをまねく○○から○あし
(あまり広きは悪し。狭きを惟なり。又、家は良き家々作るべし。悪しければ災いを招く。○○から○悪し)

用心 大の第一しまりハじやうぶにするがよしあんヤラハ○てまるそう〇〇て損なり
(大の○第一締まりは丈夫にするが良し。あんヤラハ○て〇也。そう〇〇て損なり)

 

女房 かヽにハまかれるよしずいぶん大事ニかくべしあしき事あらバいヽきかすべしいふ事きかねばさるべし
(かかには巻かれるが良し。ずいぶん大事にかくべし。悪しき事あらば言い聞かすべし。いう事聞かねば去るべし。)

命 千年も万年も生をふしとをもふべし死するといふ事思ふべからず金銀たまらぬなり
(千年も万年も生を不死と思うべし。死するという事思うべからず。金銀たまらぬなり)

堪忍 できぬかんにんハせぬがよしかんにんしすぎるとなんぎおこるなりい○○事ハしあんしてよくいふべし
(出来ぬ堪忍はせぬがよし。堪忍しすぎると難義起こるなり。い○○事は思案して、よく言うべし)

遊芸 おぼつる事無もし覚るならばへたがよしニ一手になるべからずゆふげいあがれバしんしやうさがるなり
(覚つる事無〇。もし覚るならば下手が良しに一手になるべからず。遊芸上がれば身上下がるなり)

不実 ものヽ○○のしやうぶすべてに事そんのはしなりとかく正直がとくなり又いやな事ハ早く即いふ惟なり
(ものの○○の勝負すべてに事損のはしなり。とかく正直が徳なり。また、嫌な事は早く即、言うが徳なり。)

 

喰物 けんやく第一なれどもくいものハ下人も主人も同じやうにすべし上よく下あしけれバ家内○○○んせずそん也
(倹約第一なれども、食いものは下人も主人も同じようにすべし。上良く下悪しければ家内○○〇んせず損なり)

酒 のむ事無用なりもしのむならバ酒にのまれぬやうにのむべししかしひるのうちハのむべからず
(飲む事無用なり。もし飲むならば酒に飲まれぬように飲むべし。しかし、昼の内飲むべからず)

桶類 おけのるいあるひハふろなどハねだんの高ひのを用ふべし安いのハくさりはやくおおそんなり
(桶の類或は風呂などは、値段の高いのを用うべし。安いのは腐り早く、大損なり。)

印判 古ル印ばん又ハ生に合ぬはんもつべからず大二そんぶ立なり名のりをたゞしてもつべし
(古印判又は生に合わぬ判持つべからず。大いに損部立つなり。名乗りを正して持つべし。)

心得 人ハ一切何事もたより二おもふべからず我身より外かたなしと思ふへしとかく銭かねを〇〇〇〇べし
(人は一切何事も頼りに思うべからず。我身より外〇かたなしと思うべし。とかく銭金を〇〇〇〇べし。)

 

下人 めしつかいの者ハわか手足と思ふへし我と下人と同じやう二身を働べし下人のつかいわが身○べからずそんのはじめ也
(召使いの者は、我が手足と思うべし。我と下人と同じように身を働くべし。下人の〇使い我身〇べからず。損の始めなり。)

下女、丁稚 下女ハふきりやうのをつかふべしあるしもかヽもししんどいすくなしでっちハふぜき二○を付べし
(下女は、不器量のをつかうべし。主もかかもしんどい少なし。丁稚はふぜき二○を付べし。)

色欲 いろ事第一つヽしむべしばい女ハひへのうれひあり下女をつまべば金のむしん何事もミなそん也
(色事、第一慎むべし。売女はひへの憂いあり。下女をつまべば金の無心、何事もみな損なり。)

商売 坂にくるまをおす之こころへゆだんなく○〇〇〇べし。其内朝ハ早くおきるべし例えば一日ニ五ト(分の崩し字)ちがへハ一月十五匁の違一年ニ百八十目の〇・・・・・・・・・・・・・○
(坂に車を押すの心得、油断なく○〇〇まるべし。其内朝ハ早くおきるべし。例えば一日に五分〇違えば一月十五匁の違、一年に百八十目の〇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・○)
【ト】分の崩し字
【目】匁

 

 

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