遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

面白古文書『吾妻美屋稀』9.「いろはうたつヾきもんく酒ろん餅ろん前編」

2023年07月29日 | 面白古文書

今回と次回は、「いろはうた続き文句酒論餅論」の前編、後編です。下戸から上戸へ、上戸から下戸へ、それぞれ、いろは64文字のいろは歌で意見をするというものです。今回は、「前編 下戸から上戸への意見」です。

いつの時代も、酒にまつわる話は尽きませんね。

 

 いろはうたつヾきもんく酒ろん餅ろん前編
(いろはうた続き文句酒論餅論前編)

○下戸より上戸のかたへゐけんくさ(下戸より上戸の方へ意見草)

い いかに上戸衆ききたまえ(いかに上戸衆聞きたまえ)

ろ ろんハむやくのことなれバ(論は無役の事なれば)

は はやへもがつてんいたされよ(はやへも合点致されよ)

に にが/\しくハさけのくせ(苦々しくは酒の癖)

ほ ほんらやうまでもとりちらし(本領までも取り散らし)

へ へいぜいよろしきひとがらも(平生よろしき人柄も)

と とほうもなきハなまゑひぞ(途方も無きは生酔いぞ)

ち ちへふんべつもかきくもり(知恵分別もかき曇り)

り りはつな人もどんになり(利発な人も鈍になり)

ぬ ぬきミくるひのあぶなさよ(抜き身狂いの危なさよ)

る るいをもとめてよをわかし(類を求めて夜を明し)

を をさへつしいつ日をくらし(抑えつ強いつ日を暮らし)

わ われをあしきとおもへども(我を悪しきと思えども)

か かんにんならずよひつぶれ(堪忍ならず酔いつぶれ)

よ よいとししてもつくさるヽ(よい年しても尽くさるる)

た たわいせうねもあらばこそ(たわい性根もあらばこそ)
【たわい】正体なく酒に酔うこと。

れ れいぎさほうもとりおいて(礼儀作法も取り置いて)

そ そでないことをこねまハし(然で無い事をこね回し)
【然で無い】そでもない。然るべきでない。悪い。不都合な。

つ つねのこヽろハ入レかわり(常の心は入れ替わり)

ね ねしつこじつのむりやりに(捻付故実の無理やりに)
【捻付】<= 捻付ける
【故実】<= 故事付ける

な ないつわらひつくだをまき(泣いつ笑いつクダをまき)

ら らんしゆのはてハけんくわする(乱酒のはては喧嘩する)

む むようのつひへおほきゆへ(無用の費え多きゆえ)

う うとくな人もひんになる(有徳な人も貧になる)

ゐ ゐるいきるいもなくなれば(衣類着類も無くなれば)

の のみたをれとハもふすなり(飲み倒れとは申すなり)

於 おんなハことにミくるしや(女は殊に見苦しや)

く くちはしたなくしやべりつヽ(口はしたなく喋りつつ)

や やさしきこへもたかくなり(優しき声も高くなり)

ま まていな人もどんになる(まていな人も鈍になる)
【まてい】丁寧な、礼儀正しい

け けしからざりし大わらひ(けしからざりし大笑い)

ふ ふぎなる事のいでくるも(不義なる事の出来るも)

こ これミなさけのしわざなり(これみな酒の仕業なり)

江 えひてよろめきかへるさハ(酔いてよろめき帰るさえ)

て てあしを人にひつぱられ(手足を人に引っ張られ)

あ あさましかりしていたらく(浅ましかりし体たらく)

さ ざしきの内乃ありさまハ(座敷の内の有様は)

き きたなしむさやとひと"/\に(汚しむさ宿人々に)
【むさい】不潔な

ゆ    ゆびさしそしりにくまれて(指さし誹り憎まれて) 
め めひきはな引きらわれる(目引き鼻引き笑われる)
【目引き鼻引き】声を出さずに、目や鼻でで合図して、相手に自分の意志を知らせるさま。

み みハやまひつき内そんじ(身は病付き内損じ)

志 志するときにハこうくわいす(死するときには後悔す)

ゑ ゑきハすこしもなかるべき(益は少しも無かるベキ)

ひ びんぼうするもこれゆへぞ(貧乏するもこれゆえぞ)

も もはやこれからきんしゆして(最早これから禁酒して)

せ せいもんたてヽさかづきを(誓文たてて盃を)

す すきと手にハとるまいと(すきと手には取るまいと)
【すきと】全く(・・・ない)

京 京からつヽしミたもふべし(今日から慎み給うべし)

コメント (4)
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