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遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

渋沢栄一 七言絶句『偶成』

2024年12月21日 | 文人書画

実業家、渋沢栄一の自作漢詩です。

渋沢栄一 七言絶句「偶成」、色紙(18.1㎝X21.0㎝)。昭和。

【渋沢栄一】天保十一(1840)年―昭和六(1931)年。実業家。武蔵国血洗島の豪農の生れ。一時、倒幕運動に参加したが,後に一橋家に仕え幕臣となる。慶喜の弟、昭武のフランスの万国博使節団に加わり,ヨーロッパの近代的社会経済見聞した後、多くの近代的企業会社を興し、日本の近代化を推進した。

 

七言絶句「偶成」(「春花落尽」)                  

春花落尽忽秋霜
一瞬朝暉変夕陽
休説世間人事劇
観来造物亦多忙
  青淵録奮作

春花落ち尽くせば、忽(たちまち)秋霜。
一瞬の朝暉、変じて夕陽。
説くを休(や)めよ、世間人事の劇(はげ)しきを。
観来すれば、造物も亦(また)多忙。

偶成(ぐううせい);ふと出来上がった詩。
朝暉(ちょうき);朝日の光。
夕陽(せきよう);夕日。
人事(じんじ);世間の出来事。
劇(はげし);めまぐるしい様。
観来(かんらい);見てみれば。
造物(ぞうぶつ);自然。

春の花が散れば、たちまち秋霜が降りる。
一瞬の朝日も、すぐに夕日に変わる。
世間の出来事がめまぐるしいなどと言うなかれ。
見てみれば、自然だってはやく移り変わっているではないか。    青淵(栄一の号)、旧作を記す。

 

明治四二(1909)年、実業界を大方退いた渋沢栄一は、8月19日、渡米実業団一行を率いて東京を出発し、横浜よりミネソタ号に乗船、シアトルに向かいました。今回の漢詩は、横浜を出発する際に詠まれた『遊米雑詩』の中の一部です。他の漢詩のほとんどが、旅に関するものであるのに対して、今回のブログで取り上げた作品は「偶成」と題されているように、ふと心に浮かんだ人生の機微をうたったものです。実業界を主導し、がむしゃらに日本の近代化をしてきた渋沢ですが、一線を退き、長旅に船出する時、これまで自分が歩んできた道程を振り返って感慨に耽っていたのではないでしょうか。



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6 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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Unknown (ぽぽ)
2024-12-21 09:33:32
遅生さんへ
いかにも激動の近代を生き抜いた実業家らしさを感じます。
一瞬一瞬があっという間だったのでしょうね!
最近お札にまで登場して一気に親近感が湧きましまた笑
この書の価値もグッとあがったのでは!?(^^)
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遅生さんへ (Dr.K)
2024-12-21 10:58:29
渋沢栄一は、あまりにも有名ですね。
でも、この色紙を、渋沢栄一のものと分かる人は少ないですね(^_^)
ましてや、ここに何が書いてあるのかが分かる人は、更に少ないですね(^_^)
広い見識を持ち、豊富な知識をも有している遅生さんだからこそ見出せる物ですね(^-^*)
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Dr.Kさんへ (遅生)
2024-12-21 10:58:51
凡百の財界人に較べれば、はるかに見識の高い人だったのでしょうね。
でも、お妾さん〇人、子供何十人と聞くと、「何だおまえは」と言いたくなりますが、やっかみととられるので、言わないでおきませう(^^;
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ぽぽさんへ (遅生)
2024-12-21 11:03:41
明治人らしい人ですね。
若い頃は、血気盛んな正義漢であったようです。
実業界に身を投じて、天分が開いたのでしょう。
その結果が、1万円札。
これからも、ガラクタ蒐集では否応なしにお世話にならねばなりません(\^.^\)
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Unknown (jikan314)
2024-12-21 12:25:52
遅生様
正に、令和6年を代表するお宝ですね☺️
明治時代の先を読んで行かないと、目まぐるしく変わる人の世について行けない渋沢栄一の漢詩らしいです😉
未だ新札に慣れておらず、北里を出したつもりが、渋沢を出して、「壱万円でよろしいですね?」と店員さんに言われて、あわてて、野口に替えております😓時代についていけない小生です。
価値もだんだん上がって、おめかけさんの数ほど渋沢札になっているかも。一流企業の社長室に飾って。
又お邪魔致します😃
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jikan314さんへ (遅生)
2024-12-21 15:12:22
渋沢栄一は時の人ですよね。
しばしばお世話にならなければなりません。御縁は薄い方ですから、これから懇意になるのを願うばかりです(^^;
この色紙を飾っておけば、少しは御利益があるかもしれませんね。
地獄の沙汰も金次第、
骨董は金縛り(^^;
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