遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

能画22.山田北雲、二曲屏風『小鍛冶』

2022年07月17日 | 能楽ー絵画

日本画家、山田北雲による二曲屏風、『小鍛冶』です。

高さ175.2㎝、幅180.8㎝。大正時代。

【山田北雲】(やまだほくうん) 明治、大正に活躍した日本画家。詳細は不明。

能『小鍛冶』の舞台を描いた能画です。

【あらすじ】帝が夢にみた不思議な剣を打たせるため、勅使は三条の小鍛冶宗近(ワキ)に刀剣新造を命じます。宗近は、相槌を打つ名手のいないのに困り果て、稲荷明神に参詣します。すると、童子(前シテ)が現れて、古今東西の名剣の霊験を語り、相槌を約束して稲荷山に消えます。 宗近が家に戻り、鍛祭壇を整えて神に祈りを捧げていると、稲荷明神(後シテ)が現われ、相槌を打ち、名剣、小狐丸が完成します。稲荷明神の霊狐は、雲に乗り、稲荷山へ消えて行くのでした。

三条宗近は鍛治祭壇をしつらえ、刀剣を打ちます。

すると、稲荷明神が現れ、

相槌を打ちます。

稲荷明神の頭には狐。

作者、山田北雲は、今では、ほとんど無名の画家ですが、画力は確かなようです。

私がこの屏風を購入したのは、能絵の珍しさからです。『小鍛冶』自体は、多く描かれている画題です。この絵の特徴は、囃子方が大きく描かれていることです。

元々、能画では、能のストーリー展開に直接関係しないので、囃子方が取り上げられることはあまりありませんでした。特に明治以降の能画は、シテに照準をあてたものが主流となり、囃子方の存在は非常に薄くなりました。

これには、能楽界に厳然として存在するヒエラルキー(シテ方>ワキ方>囃子方>狂言方)も影響していると思います。

そんな能画の中で、囃子方を浮かび上がらせたこの絵は異色の一品と言えるのです。

笛(能管)方:

鼓(小鼓)方:

鼓(大鼓)方:

太鼓方:(出番(キリ)が来るまで控えている):

作者の山田北雲がどのような画家なのかは不明です。

近代日本画には、忘れられ、発掘を待っている絵師たちの品が、まだまだ多くあるのだと思います。

 

 

 

 

コメント (4)
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