長崎螺鈿の菓子箪笥です。
最初見た時は、中国の品かと思ったのですが、中国にはこのような形式の箪笥はないので唐物ではなく、幕末に長崎で作られた長崎螺鈿とするのが妥当でしょう。
13㎝x13㎝x15.5㎝
正面
日本的な花鳥風月からは少し外れているように見えますが、やはり和物でしょう。
波や囲み模様には、極薄の青貝が使われています。
遠くの山や岩、太古石などは、細かく砕いた青貝を蒔いてあります。
上面
背面
右面
左面
抽斗は3段です。
先に紹介した枝垂れ柳に燕紋の菓子箪笥のように、窓のあいた凝った造りではありません。後ろに窓がないので、抽斗を引き出すための取っ手がついています。
この長崎螺鈿を最初に見た時は、和物とも唐物ともつかない中途半端な品だと思いました。
しかし、詳しく見てみると、随所に趣向を凝らした細工がなされており、小さな品の中に、雄大な風景を描いているのです。
長崎螺鈿は一般に、平板な絵柄が多いのですが、この品は奥行きをもって描かれ、漆黒の闇の中に、楼閣山水図がボヤッと浮かび上がってきます。
やはり菓子箪笥はちがいます。小さな品ですが、その中に、キラリと光るものが含まれているのですね。