さかな

魚屋さんの店先のささやかな素話...。

プレッシャー。

2005年06月18日 | 店先から
だいぶ前のこと。
長女がまだ幼かった頃、私が作った手作りハンバーグを手伝いたいと言うので一緒に作った。
店には台所ともうひとつ、仕出し用の調理場がある。仕事をしながらなので、調理場でご飯の支度をすることが多い。

一緒に作ったハンバーグを長女に食卓に運ぶようにお願いした。
 「気をつけて。絶対落とさないでよ。」と私。
長女は真剣。コクンとうなずき、ハンバーグをじっと見つめてそろりそろりと運びはじめた。
なんだか不安だったので、もう一度念を押した。
 「○○子、落とさないでよ!」
これがまずかった。緊張していた娘は「ボトボト、ボト・・・」とハンバーグを全部落としてしまったのだ。調理場は土間だったのでハンバーグは泥だらけ。私はせっかく作ったのに落とされてしまい、ワナワナと震えたが、長女が私に怒られる!と、目に涙を浮かべて怯えていたのを見たら怒れなかった。私がプレッシャーをかけなければ・・・。

このことは私と長女の秘密にした。泥にまみれたハンバーグは水で洗い、ケチャップとソースをからめて、そ知らぬ顔で食卓へ・・・。泥が落ちたかわからなかったので、その晩旦那と義母がお腹を壊さないか気が気ではなかった。私と長女は一番きれいそうなハンバーグを食べた。ひどい話。

この時期、小玉スイカが店に並ぶ。小さいけど甘い。
私はスイカを見ると思い出すことがある。

それは・・・やっぱりだいぶ前になるが、ひとりの男の子がこの小玉スイカを買いに来た。
近所だったので、スイカを抱えて行くと男の子は言った。
旦那も私も「大丈夫?持っていける?落とさないようにね。」と何回も言った。
 「はい。」と返事をして、店を出ようとした瞬間、「グシャ!」。スイカは地面に落ち、こなごなに・・・。この時も旦那と私があまりにもプレッシャーをかけすぎたからと反省した。
男の子には新しいスイカを買い物袋に入れて持たせた。後で男の子のお母さんが2個目のスイカの代金を払いに来てくれた。こっちでプレッシャーをかけたからなのに。悪かったな・・・。
スイカを落とすなと言われたのに落としてしまって、どうしよう・・・と顔を真っ赤にしていた男の子の姿が今でも忘れられない。

この男の子も今は大学1年生。親元を離れ大学野球で頑張っている。今は白球を落とすまいとプレッシャーと戦っているのかも・・・。○○○君、お母さんは寂しがってるよ。たまにはメールしてあげてね

私はレジに3人並んで待たれると、プレッシャーを感じ、レジを打ち間違えることが多い。
お客さん、ごめんなさい・・・