晴れときどき化学、ところにより雑想

もしかしたら何かの役に立つかもしれない化学のお話(と、よしなしごと)

アスファルト

2012年05月31日 23時55分35秒 | 化学のお話
アスファルトは、黒色(あるいは黒褐色)で、常温では固体あるいは半固体の物質であり、

多環芳香族炭化水素を主成分とした複雑な成分の混合物です。


石油精製の際に得られる石油アスファルトと、天然に産出する天然アスファルトに分けられます(ただしどちらも成分としてはほとんど同じものになります)。

※天然アスファルトは、地表近くで原油から揮発成分が失われたものと考えられています。


なお、道路の舗装材に用いられているのは、石油を精製した際に得られる加工されていないアスファルト(ストレートアスファルト)です。

一方でストレートアスファルトを加熱して空気を吹き込むことで、酸化や重縮合などの反応を起こしたアスファルトをブローンアスファルトといいますが、

こちらは軟化温度が高く、温度変化による硬さの変化が小さいことから、土木建築材料として主に使用されています。



ベンゼン

2012年05月30日 06時56分39秒 | 化合物のお話
ベンゼン(C66)は、ファラデーが発見し、ケクレによってその構造が提案された化合物で、

6個の炭素原子が平面上に正六角形を構成するように配置されています(いわゆるベンゼン環です)。


ナフサから得られる改質ガソリンや、分解ガソリン中に存在し、分留や抽出によって得られます。

特有のにおいのある揮発性の化合物(常温では液体)であり、蒸気を吸入すると有毒です。


ベンゼンは化学的には比較的安定な化合物ですが、強力な反応剤によって、置換反応や付加反応を受けます。

そしてそれを利用することにより、各種化学製品の合成原料(出発物質)として使用されています。

いくつか例を挙げてみると、

・エチレンとの反応によりエチルベンゼンを生成 → スチレン(合成ゴムや樹脂の原料)。

・水素添加してシクロヘキサンを生成 → アジピン酸、ヘキサメチレンジアミン、ε-カプロラクタム(ナイロンの原料)。

・プロピレンとの反応によりイソプロピルベンゼンを生成 → フェノール(医薬品や樹脂の原料)とアセトン(溶剤や中間原料)。

などがあります。


普段の生活でベンゼンそのものを見たり感じたりする機会はほとんどないと思いますが、

ベンゼンをその構造の一部に持つ、いろいろな化合物を利用していることになります。



ファインケミカル

2012年05月29日 23時36分33秒 | よしなしごと
付加価値が高く、複雑な構造の有機化合物を合成する化学工業を、ファインケミカルズ(精密化学製品)工業といいます。

本来は医薬品や染料、農薬などの、技術的な特徴を有していて利潤が高い分野がそれに当てはまりますが、

言葉の響きの良さから、素材に関わる一般の化学製品についても「ファインケミカル」であるということにしてしまっているところも(一部に)あります。

企業の製品を表現する方法として、響きのよい言葉や、イメージのよい言葉をどうしても使いたくなりますが、

なるべく本質を表した適切な言葉を使っていきたいなぁ、と個人的には思います。


どんな分野でも、イメージ先行ではなく、その本質を見極めていきたいですね。



芳香族化合物

2012年05月28日 23時55分53秒 | 化学のお話
芳香族化合物は、分子内にベンゼン環を持つ化合物のことを指しますが、

これらの化合物のいくつかが特有の芳香を有することから、そう呼ばれるようになりました。


現在ではベンゼン環を含んでいるからといって、必ずしも芳香(あるいは何らかのにおい)を持つわけではないことがわかっていますが、

19世紀に名付けられた名称を今もそのまま用いています。


また「芳香」というと、普通はよい匂いの意味になりますが、

例えば代表的な芳香族化合物であるベンゼンやトルエンなどがよい匂いかというと、たぶんそうではないように思いますので、

そういった意味でも誤解を招く名称になっているとは思います。


なお、お手洗いなどに置く芳香剤の成分が、すべて芳香族化合物ではないかというように思われているところもありますが、

香りの種類によっては、芳香族化合物が入っているものもあり、そうでないものもある、というのが実際のところです。

※このように考えていくと、つくづく紛らわしいネーミングだなぁと思います。


ただし、この名称の名付け親であるドイツの化学者のケクレが、今日(こんにち)のような状況を予測できたかといえば、さすがにそれは無理な話なので、

今の私たちがよく理解して、注意していくようにするしかないと思います。



学習について

2012年05月26日 23時51分25秒 | よしなしごと
学習とは「既知」と「未知」を結びつけることである。
(ジェームス・スキナー)


新しいことを効果的に学ぶためには、すでに知っているものと関連づける必要がある、

ということですが、言われてみれば、なるほどその通りだと思います。


たとえ話で説明されるとわかりやすいのは、

それがすでに知っていること(イメージできること・理解できること)と、これから新しく学ぶことについて関連付けられているからでしょう。

また、教え方の上手な先生は、意識しているかしていないかは別として、この関連付けについて理解しているのだと思います。


教える側からは、教えられる側が何をどこまで知っているかを把握することが重要でしょうし、

逆に教えられる側としては、なるべくたくさんのことを知っている方が有利になります。


場合によって、どちらの立場にもなり得る社会人としては、このポイントを押さえておくとよいように思いました。



分別結晶

2012年05月25日 02時22分59秒 | 化学のお話
分別結晶というのは、わずかな溶解度の差を利用して2成分以上の溶質を分離・精製する方法のことで、分別晶出とも呼ばれます。


この方法の手順としては、

まず蒸発や冷却などによって溶液をわずかに濃縮した後、析出した結晶を取り除きます。

取り出した結晶は純粋ではないため再度溶媒に溶かし、析出・溶解を何度も繰り返すことによって、最終的に純度の高い結晶を得ます。


例えば、希土類元素(※)は化学的性質が非常に似通っていることから試薬による分離は困難ですが、

硫酸カリウムとの複塩の溶解度にわずかな差があることから、この方法によって分離が行われていました。

※希土類元素:ランタノイドに分類される原子番号57~71までの15元素に、スカンジウム、イットリウムを含めた合計17元素の総称です。


古典的な方法でかなり手間がかかりますが、確実性の高い方法と言えます。



蒸留水

2012年05月24日 23時54分35秒 | 化学のお話
蒸留水は一般に、水を蒸留することで得られる純粋な水を指します。

普通の生活ではほとんど必要がありませんが、化学実験や化学分析では必要不可欠となります。


蒸留水は空気中でつくる限りにおいて、二酸化炭素が溶け込むことから完全な中性ではなく、pHは約5.7程度になります。

また、蒸留容器に銅を用いれば微量の銅が、ステンレス容器を用いれば微量の鉄が混入してきます。

※ここで石英ガラス容器を用いれば、微量成分の混入を極力防ぐことができます。

なお蒸留水は無色透明で無味・無臭ですが、必ずしも無菌というわけではなく、微量の微生物が含まれていることもあります。


限りなく純粋に近い水を得るためには、その製造方法に工夫が必要です。

水を蒸留した上でイオン交換樹脂を通し、さらにメンブランフィルターを用いたろ過を行うことで、超純水と呼ばれる水が得られます。

この超純水は、バイオテクノロジーや微量分析などの先端技術分野で用いられています。



ナフサ

2012年05月23日 22時27分47秒 | 化学のお話
原油を分別蒸留(分留)したときに得られる比較的低沸点(30~200℃)の留分をナフサと呼んでいます。

沸点の範囲としてはガソリンの部分にあたるので、ナフサのことを粗製ガソリンということもあります。

また、原油の重質留分を熱分解や接触分解して得られるガソリン留分を分解ナフサといいます。


ナフサを精製することで炭素数6~11の直鎖状アルカンが得られますが、

このままでは熱効率があまりよくないので、触媒を用いて高温・高圧で処理すること(接触改質:リホーミング)により、良質なガソリンを得ることができます。

※接触改質により異性化、脱水素化、環化などが生じることで、直鎖状アルカンが枝分かれの多い炭化水素や、芳香族炭化水素に変化し、熱効率のよい燃料となります。


ナフサの主な用途としては、自動車、航空機などの内燃機関の燃料ですが、

石油化学工業用原料としても有用で、様々な反応工程を経ることにより、多様な工業製品用の原料を得ることができます。



テフロン

2012年05月22日 22時12分41秒 | 化学のお話
テフロンは、デュポン社の商品名で、ポリテトラフルオロエチレンのことです。

簡単に言うと、エチレン(CH2=CH2)の水素をすべてフッ素に置き換えて、それを重合させたものです。

白色~淡灰色の固体で、流動性が乏しい(融点[327℃]以上になっても流動しない)ため、粉末を圧縮固化した後、焼結して成型します。

耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性に優れるほか、粘着性および摩擦抵抗が低いという特徴を有しています。

また、-100℃の低温から250℃の高温まで安定して使用が可能です。


具体的な用途としては、

化学工業における耐食材料、絶縁材として、また、ベアリング、O-リングなどのシール、パッキング、絶縁テープなどが挙げられます。

器壁への薬品の吸着がきわめて少ないことから、微量分析用の容器の材料としても優れています。


なお身近なところでは、「焦げ付かないフライパン」の表面にコーティングされているのがよく知られているところです。




「科学の発見ベスト100 化学」という番組

2012年05月21日 23時19分16秒 | 化学のお話
CS放送などで視聴できるディスカバリーチャンネルというテレビチャンネルがありますが、

つい先日、「科学の発見ベスト100 化学」という番組を見る機会がありました。


これは化学分野における偉大な発見について、その歴史を踏まえながら解説していく番組で、

18世紀の酸素の発見から始まり、現代のフラーレンの発見までを取り上げていました。


化学の発展の歴史は、その流れがわかりにくいものですが、この番組ではとてもわかりやすく示されていて大変興味深かったです。

ある程度化学を学んだ後の段階において、授業の中で見てもらうのもよいような気がしました。


実験の上手下手

2012年05月20日 23時55分55秒 | 化学のお話
化学というと、特殊な分野以外は実験がつきものですが、

やはり人によって上手下手はあります。

ただ、実験が下手だからといって化学に向いていない、というわけではないと思います。


多少時間がかかっても慎重に、丁寧に行うことで、多少の下手さは十分にカバーできます。

※一方でたとえ手際がよくても、丁寧さに欠けるような実験をする人は化学には向かないような気がします。


ですから、今たとえ実験がうまくないなぁ、と思っている人でも、

丁寧に慎重に実験を行うことができそうならば、ぜひ化学分野に進んでほしいと思っています。



メスフラスコ

2012年05月19日 23時38分14秒 | 化学のお話
メスフラスコは、一定の濃度の溶液をつくる際に使われるフラスコ(定容フラスコ)です。

細長くなっている首の部分に線(標線)が引かれていて、そこまで液体を入れるとフラスコに表示されている体積になります。


化学実験の中和滴定などで、所定の濃度の酸や塩基などが必要な場合によく使いますが、

実際にこれを用いて、例えば 0.1 mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液などを調整してみると、

モル濃度についての理解が頭の中だけでなく実感として理解できると思います。


よくある間違いとしては(恥ずかしながら私も学生時代に行ったことのあるものですが)、

0.1 mol/Lの水溶液をつくる際に、溶質 0.1 molをいきなり1 Lの水に溶かしてしまう

という例が挙げられます。

これを 1 L容のメスフラスコに入れると、当然 1 Lの標線を超えてしまうわけで、

その時点で何がおかしかったのかは瞬時に理解できます。

※もしかしたら、もっと前に気付くのが普通かもしれませんが・・・。


最近は、あまり学生実験をさせない(させたくても時間がない)という状況にあるようですが、

実験してみて(自分で手を動かしてみて)わかることも多いと思いますので、

学生さんにはできるだけたくさん実験をする機会を与えてほしいなぁ、と思う次第です。



複合材料

2012年05月18日 22時55分59秒 | 化学のお話
材料それぞれの特徴を生かして、欠点を補うように複数の材料を組み合わせたものを複合材料と言います。

うまく組み合わせることで、単独では発揮できないような優れた性質や性能を発現させることができます。


複合材料の身近な例としては、鉄筋コンクリートが挙げられます。

引張りに強い鉄筋と、圧縮に強いコンクリートを組み合わせることで、全体として引張りにも圧縮にも強い材料となります。


現在の複合材料は、繊維と樹脂の組み合わせが多いようです。

代表的なものとしては、炭素繊維強化プラスチック(CFRP:炭素繊維にエポキシ樹脂などの樹脂を染み込ませて焼き固めたもの)があります。

この複合素材は軽くて強度が高いので、最新の航空機の機体からゴルフクラブのシャフトまで、様々なところに使われています。



根拠のない自信

2012年05月17日 23時05分54秒 | よしなしごと
大変なとき、しんどいとき、つらいときは誰にでもあると思いますが、そんなときに、

「今は少し(or かなり)つらい日々が続いているけれど、きっとよい方向に向かっている!」

と思えるような、自分だけの「根拠のない自信」があれば、必ずそれを乗り越えていけるように思います。

※もちろん何らかの根拠がある自信を持っているのでしたら、それに越したことはありません。


ただし、その根拠のない自信というものは、その人だけの思い込み(想いの強さ?)でもあるわけなので、

それを他の人に強制したり、それを使って迷惑になるような行動をしないという前提があります。

そしてその前提を踏まえている限りは、どんな想いや信念でも、ないよりはあった方がよいように思います。


結局のところ、自分の問題(課題)は自分でなんとかしていくしかないので、

何か他のものや他の人にすがってしまうよりは、

自分だけの思い込みでもなんでも使って乗り越えてしまう方が、あとあとよい結果になるのではないか、と考えているところです。


精神論ではないかと言われれば、たぶんそれに類するもののような気もしますが、

それでも、つらいときに自分のなかにあるものに拠り所を見つけるという意味において、こういう考え方があってもよいような気はしています。