晴れときどき化学、ところにより雑想

もしかしたら何かの役に立つかもしれない化学のお話(と、よしなしごと)

日本の硬貨

2012年05月16日 22時45分01秒 | 化学のお話
現在流通している硬貨(6種類)の素材は、以下のようになっています。

・1円硬貨:アルミニウム100%

・5円硬貨:銅60%~70%、亜鉛40%~30%の黄銅

・10円硬貨:銅95%、亜鉛4%~3%、スズ1%~2%の青銅

・50円硬貨:銅75%、ニッケル25%の白銅

・100円硬貨:銅75%、ニッケル25%の白銅

・500円硬貨:銅72%、亜鉛20%、ニッケル8%のニッケル黄銅


これを見ると、現在は銅の合金が主であることがわかりますが、

その理由としては、

銅が資源として比較的豊富であることに加えて、

他の金属(亜鉛、スズ、ニッケルなど)を加えることによって、色を変化させることができるため、と思われます。


なお、銅には殺菌作用があることが知られていますが、

実際に硬貨(10円硬貨と5円硬貨)をチフス菌を培養した培地に入れてみたところ、菌がほぼ死滅したというデータがあるそうです。



緑青

2012年05月15日 23時11分30秒 | 化学のお話
緑青(ろくしょう)は、銅の表面に生じる錆びのことで、緑色に見えるのでこのように呼ばれています。

※古い鐘などの銅製品が緑色なのは、この緑青が表面に発生しているためです。


緑青は、大気中の酸素や、二酸化炭素、水などと銅が反応してできるもので、その主成分は環境によって多少異なります。

通常は塩基性炭酸銅: CuCO3・Cu(OH)2 が主成分ですが、

海が近い場合には塩基性塩化銅: CuCl2・3Cu(OH)2 が、

温泉に近い場合には塩基性硫酸銅: CuSO4・3Cu(OH)2 が主成分となります。


※緑青が表面に生成すると、それが銅の酸化皮膜として働くため、銅の内部への腐食が防止されます。


なお、緑青は古くから有毒であると言われてきましたが、現在では検証の結果、ほとんど毒性はないことが示されています。

もし誤って口に入れたとしても嘔吐してしまうため、身体には取り込まれないそうです。



モリブデン鋼

2012年05月14日 23時11分30秒 | 化学のお話
モリブデンを鋼に添加すると、鋼の磁気的性質や耐食性が改善されます。

少量のモリブデンの添加で、粘り強さが上がり、また高温での強度、硬度が増します。


モリブデン鋼の製造においては、モリブデンの他に、ニッケル、クロム、タングステンなどを同時に加えることが多いです。


ちなみに鋼に対して、

ニッケルを添加すると、粘りと強度が高くなり、添加量が多ければ耐熱性も上がります。

クロムを添加すると、少量の添加でも耐摩耗性が上がり、また多量に添加すれば耐食性や耐熱性が上がります。

タングステンを添加すると、高温での強度や硬度が増します。


なお、炭素および、モリブデン、クロムの含有量の違いによって、

自動車や航空機用の強力鋼板や、耐摩耗性の高い軸受鋼、機械部品用の強靭鋼などの用途に応じた材料となります。



小さな努力の大切さ

2012年05月13日 22時08分45秒 | よしなしごと
今日気になった本の中の一節です。


雨は小なるも漢[水]は故に潜(ふか)し。

夫(そ)れ小を尽くす者は大に、微を積むものは著われ、徳の至れる者は色沢あまねく、行の尽(きわ)まれる者は声問遠し。

小人は内に誠ならずしてこれを外に求む。


(以下は上記の現代語訳です)
 ↓
雨は少しずつでもそれによって漢水(中国の河川の名前)も深くなる。

そもそも小事を努力していく者は偉大になり、微小を積み重ねる者は著名になり、道徳最高の者は顔の色つやにまでゆきわたり、行為の最高の者はよい評判が遠くまで聞こえる。

つまらない小人は、自分自身に誠心を持たないでいて、よい評判を外に求めるものである。

※荀子 大略篇第二十七[五十三](金谷 治 訳注:岩波文庫)より引用


めんどくさいなぁ、という思いから、小さな努力を怠ってしまいがちな自分に対して、多少なりとも戒めの言葉になりそうです。



凍結乾燥

2012年05月12日 23時14分40秒 | よしなしごと
水溶液や含水物の試料を凍結して減圧することで、氷となった水を昇華させて除去する方法です。

0℃の水の蒸気圧は4.5mmHgなので、理論上はこれ以下に減圧することでそれが可能となります。
(実際にはもっと真空度が高い状態で行うことになると思います)。

熱による分解や変質などが抑えられ、また再度水を加えたときの保存性も比較的よいので、生体関連試料に対して使われることが多いです。


個人的な話になりますが、

学生のときに、とある民間の研究所で凍結乾燥機を使わせてもらって感激した思い出があります。

当時、水溶液からエバポレーターで水を除去するのは難しいなぁ、と思っていたところだったので、

こんないい方法があるのか~、

といった感じでした。

その後、社会人になってから別の案件で使うことになりましたが、

界面活性剤が入っている試料の場合には発泡しやすいことがわかり、装置を「なだめたり、すかしたり」しながら、なんとかしていたことを思い出しました。

今から考えれば若気の至りでしかありませんが、思い出してみて、なんだか懐かしい気持ちになりました。



ぼんやりする時間

2012年05月11日 23時55分35秒 | よしなしごと
普段仕事などでいそがしい人ほど、ぼんやりする時間を確保することが必要だと思います。

休日でも家族サービスなどがあるから、そんな時間は取れないよ~

という人も多いとは思いますが、それでも工夫次第ではなんとかなるものです。

今週末は、自分だけの「ぼんやりのんびり時間」を確保するようにしてみましょう!



アスパルテーム

2012年05月10日 23時36分07秒 | 化合物のお話
アスパルテーム(L-アスパルチル-L-フェニルアラニンメチルエステル)は、

L-アスパラギン酸とL-フェニルアラニンのメチルエステルが結合したジペプチドの人工甘味料(合成甘味料)です。

白色の結晶性の物質で、1965年にその甘味が偶然発見されました。


アスパルテームは、ショ糖(砂糖)の約200倍の甘味を持ち、低カロリーでサッカリンのような苦味もありません。

またショ糖によく似た甘味で、食塩やクエン酸が一緒に存在すると甘味が増強されるという特徴があります。

ただし加熱には弱く、強酸条件下およびアルカリ条件下では分解して甘味を失うので、主に加熱しない食品に使用されています。

※ショ糖によく似た甘味ということで食品用の香料とよく調和しますが、ある種の香料とは相互作用を生じるので、その場合には成分の調整や変更が必要となります。


アスパルテームの構成要素であるL-アスパラギン酸は特徴のある味ではなく、またL-フェニルアラニンは苦い味でしかないのですが、

この2つのアミノ酸をアスパラギン酸-フェニルアラニンの順に結合させて、フェニルアラニン側のカルボキシル基をメチルエステルとすることで、予想できない甘味が発現することになります。


なお、アスパルテームは体内で消化されてその構成要素(L-アスパラギン酸、L-フェニルアラニン、メタノール)に分解され、通常の経路で代謝されます。



サッカリン

2012年05月09日 22時41分31秒 | 化合物のお話
サッカリンは人工甘味料(合成甘味料)のひとつで、わりと古くから使われています。

※日本では1961年に食品添加物に指定されています。

白色の結晶あるいは粉末状の物質で、O-トルエンスルホンアミドを酸化した後、無水物にすると得ることができます。

※発見された経緯は、O-トルエンスルホンアミドの酸化についての研究中でした。

水に溶けにくいため、通常はナトリウム塩(あるいはカルシウム塩)として用いられます。


サッカリンの甘味はショ糖(砂糖)の約200~700倍ですが、独特の苦味の(ある種金属的な?)後味もあります。

※ただし濃度が薄いと苦味が少なくなり、甘みが増す特徴もあります。


熱や酸に弱く、分解すると甘味が失われるので、主に加熱しない食品に用いられています。



人工甘味料

2012年05月08日 23時55分17秒 | 化学のお話
食品などに甘みをつけるのに用いられる合成化合物を人工甘味料と言います。

代表的なものとしては、サッカリン、ズルチン、チクロ(シクロヘキシルスルファミン酸ナトリウム)などがありますが、

ズルチンやチクロには発ガン性があるということで、現在は使用が禁止されています。


サッカリン(およびサッカリンナトリウム)についても、発ガン性の疑いがあるということで一時期使用が禁止されましたが、

検証の結果それが否定されたことから、現在は(制限された範囲内で)使用されています。

また味噌や醤油に対してのみ、グリシルリジン酸の二ナトリウム塩および三ナトリウム塩の使用が認められています。


比較的新しい人工甘味料としては、アスパルテーム(L-アスパルチル-L-フェニルアラニンメチルエステル)が挙げられますが、

これはカロリーオフや低カロリーを売りにした清涼飲料水に入っていることが多い人工甘味料です。


この化合物の安全性も気になるところですが、短期および長期の毒性試験でも問題はなく、安全とされています。

ただし、一日の摂取許容量を越えなければ問題はないということなので、そのあたりは注意が必要と思います。

※低カロリーだからということで、それが含まれる清涼飲料水を一日に多量に飲むのは避けておいた方がよいということになります。




テルペン

2012年05月07日 23時50分17秒 | 化学のお話
テルペンは天然有機化合物のひとつで、様々な植物の精油中に存在する化合物の総称です。

狭い意味でのテルペンは、モノテルペン(C1016)のことを指しますが、

一般的にはセスキテルペン(炭素数15個)、ジテルペン(炭素数20個)、トリテルペン(炭素数30個)、およびこれらの誘導体もテルペンに含まれます。

※テルペンに分類される化合物としては、6000種類以上が知られています。


テルペンはほとんどの場合、炭素数5個のイソプレン骨格を単位として構造が組み立てられています。

また実際の植物中での生合成においても、イソプレンを単位として作られていることが示されています。

※炭素原子の一部を放射性同位体で置き換えた標識化合物を用いることで、そのことが確認されました。


テルペンには芳香を持つものが多く、普通の人にとってはよい匂いのするものが多いです。

そのため、香料の原料として重要です。

※なお香料以外にも、医薬品や可塑剤、殺虫剤などに用いられるものもあります。


テルペンには、抗菌作用、昆虫の摂食阻害作用、抗腫瘍作用などの様々な生物活性を示すものがありますが、

これらを対象とした研究によって、有機化学や生物化学がさらに発展することとなりました。



ピッチブレンド

2012年05月06日 22時03分41秒 | 化学のお話
ピッチブレンドは、ピッチ状の外観をもつ閃ウラン鉱の一変種です。

外観は塊状で非晶質であり、閃ウラン鉱よりも比重が小さくなります。

※閃ウラン鉱の比重が7.5~10.0に対して、ピッチブレンドの比重は6.5~8.5くらいとなります。

閃ウラン鉱と比べて不純物が多く、ウラン品位が低いのが特徴です。

※なお、最も多量に存在する不純物としては水(H2O)になります。


ピッチブレンドは、閃ウラン鉱と同様にウランやラジウムの重要な鉱石です。

また、クラプロートによるウランの発見、キュリー夫妻によるポロニウムおよびラジウムの発見、ドビエルヌによるアクチニウムの発見のもとになった原料としても有名です。

最も有名な産地はチェコのボヘミア地方やドイツのザクセン地方ですが、ノルウェー、カナダ、アメリカでも産出します。



硬水と軟水

2012年05月05日 21時47分26秒 | 化学のお話
カルシウムイオンやマグネシウムイオンを比較的多く含んだ水を硬水、あまり含まない水を軟水と言います。

硬水の中でも、これらのイオンが炭酸水素イオンと共存する形で含まれている場合には、煮沸することでそれらが炭酸塩として沈殿し、軟水に変えられることから一時硬水と呼ばれます。

一方で、塩化物イオンや硫酸イオンなどが共存している場合には、煮沸してもこれらの塩は沈殿せず除去できないことから、永久硬水と呼ばれます。

※なお、永久硬水を軟水に変える場合には、イオン交換樹脂を用います。


水の硬度の単位は国によって異なっています。

硬度の1度は、それぞれ、

・ドイツ:酸化カルシウムに換算して水100ml中に1mgが含まれるとき

・フランス:炭酸カルシウムに換算して水100ml中に1mgが含まれるとき

・イギリス:炭酸カルシウムに換算して水70ml中に1mgが含まれるとき

・日本とアメリカ:炭酸カルシウムに換算して水1L中に1mgが含まれるとき

というようにかなり異なっていますので、海外では注意が必要かもしれません。


硬水中では、セッケン(脂肪酸のアルカリ金属塩)とカルシウムイオンやマグネシウムイオンから不溶性の金属セッケンができるため、洗浄作用がかなり弱められます。

※その一方で合成洗剤は硬水中でも洗浄作用はあまり変わりません。


お茶や和風だしには軟水を用いる方が風味やうまみ成分が際立ちます。

逆にエスプレッソには硬水を用いると、まろやかな味になりますので試してみるとよいと思います。



触媒毒

2012年05月04日 21時28分33秒 | 化学のお話
触媒(正触媒)の作用を減少させるか、あるいは全く失わせる物質を触媒毒と言います。

反応物質中に触媒毒が混入している場合には、たとえその量がごく少量でも、触媒に対してかなりの悪影響を及ぼします。


触媒毒の具体例としては、以下のようなものがあります。

・ハーバー・ボッシュ法に用いる鉄系触媒: 硫黄分や一酸化炭素

・硫酸製造法(接触法)に用いる五酸化二バナジウム: ヒ素

・接触水素化に用いるニッケル触媒: 硫黄分

などが挙げられます。


触媒毒は、触媒表面に吸着されて触媒の活性点と反応あるいは結合することにより、触媒表面を不活性化してその機能を大幅に低下させます。

なお触媒毒には、触媒活性を回復させることが可能である一時的な触媒毒から、そうでない半永久的な触媒毒まで、触媒との結合の強さに応じて様々なものがあります。

また、触媒毒によって目的とする反応が抑制され、別の不必要な反応が生じることもあります。


効率よく触媒反応を行うためには、反応物を事前に精製することで、触媒毒となるものを除去しておくことが重要です。



接触法

2012年05月03日 22時00分11秒 | 化学のお話
硫酸の製造方法のひとつとして、接触法があります。

製造方法の各工程は以下になります。

1)まず、硫黄あるいは黄鉄鉱(FeS2)を燃焼させて二酸化硫黄(SO2)を得ます。

2)得られた二酸化硫黄を精製した後、バナジウム系の触媒を用いて空気酸化させ、三酸化硫黄(SO3)とします。

3)三酸化硫黄を濃硫酸に吸収させて発煙硫酸とした後、希硫酸で希釈することにより、所定の濃度の濃硫酸を得ることができます。


二酸化硫黄を酸化させる反応の触媒は、シリカゲルや珪藻土などを担体として、五酸化二バナジウム(V25)に助触媒である硫酸カリウムなどを混ぜたものを用います。

なお、二酸化硫黄は次の工程に行く前に精製する必要があります。

※触媒毒となるヒ素などの不純物を除去しておかないと、触媒の活性が落ちてしまうためです。


この方法は、純度および濃度の高い硫酸が得られるのが特徴です。

かつては鉛室法(二酸化硫黄の酸化触媒として、窒素酸化物を使用する方法)によっても硫酸は製造されていましたが、

純度および濃度の高い硫酸を得ることができ、発煙硫酸も製造可能なことから、現在は接触法によりほとんどの硫酸が製造されています。



小さな成功体験

2012年05月02日 22時57分00秒 | よしなしごと
仕事や研究などで、なかなか成果が出ないときの特効薬のひとつとして、その分野における小さな成功体験を得ることが挙げられます。

まぐれでも単なる偶然でも構わないのですが、その人にとっての小さな成功体験は、ある種の自信を与えます。


もちろん、いきなり大きな成功を目指してもよいのですが、それにはたぶん時間がかかるでしょうし、

また普通の人では、それを得るまで耐えることが難しい面もあるので、

個人的には、まず小さな成功体験をいくつか積み重ねる方をおすすめします。


また、小さな成功体験がいくつか積み上がっていくと、そのうち雪だるま式に様々な大きさの成功体験が増えていくようになります。

そうなればしめたもので、自分に対する自信とともに、仕事や研究に対する手応えをしっかりと感じることができると思います。


もし自信を失いかけている人がいましたら、まずは小さな成功体験を得ることを目標に、やるべきことを日々行っていってほしいと思います。

ほんの小さなきっかけから、道が開けていくことを実感することができるはずです。