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タングステン

2012年04月15日 16時03分43秒 | 元素のお話
タングステンは光沢のある銀白色の金属です。

元素名のタングステンは、スウェーデン語の「重い石(tung sten)」に由来しています。

その一方で元素記号の方はラテン語の「wolframium」(鉄マンガン重石(wolframite)がもとになったもの)からきています。


金属タングステンは、現在では鉄マンガン重石や灰重石から酸化タングステンを得た後、水素で還元することにより得られています。

金属中で最高の融点(約3400℃)を有することが特徴で、高温でも高い強度を保ち、細い線に加工することができます。

そしてこの性質を利用し、白熱電球のフィラメントに使われているのが有名です。

なお、純粋な金属タングステンは、アーク溶接用電極や、高温加熱用の炉の発熱部分に耐熱用材料としても使われています。


タングステンは、鋼の添加元素としても特徴的な性質を有しています。

鉄鋼にタングステンを加えることで著しく強度が増すことが知られています。

タングステンが含まれた鋼は、焼き入れによる硬さが大きくなり、耐摩耗性が非常に高くなります。

そのため刃物や、銃身や大砲の材料などにも用いられます。

さらに高速度鋼と呼ばれる、工具をつくるために用いる特殊鋼にも使用されていて、これにはタングステンが12%以上含まれています。

※高温になっても硬さが変わらないのが特徴です。


また、炭素との化合物である炭化タングステン(WC)はさらに硬い材料のため、切削工具(機械工作用工具)に利用されています。




5 コメント

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グリーンスチールイノベーション (トライボロジープレス)
2012-11-03 18:57:11
 日立金属が開発した新型工具鋼 SLD-MAGIC(S-MAGIC)は微量な有機物の表面吸着により、金属では不可能といわれていた自己潤滑性能を実現した。この有機物の種類は広範囲で生物系から鉱物油に至る広い範囲で駆動するトライボケミカル反応であると。潤滑機械の設計思想を根本から変える革命というものもある。
 このトライボケミカル反応にもノーベル物理学賞で有名になったグラフェン構造になるようになる機構らしいが応用化の速度にはインパクトがある。
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グラファイト層間化合物 (ラマン分光法ファン)
2023-01-22 19:27:56
トライボロジー的に言うと極圧添加剤もエキソエレクトロンもCCSCモデルというお釈迦様の掌の上ちゅうこっちゃ。
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マルテンサイト千年 (グローバルサムライ)
2024-06-16 15:54:37
やはり世界を引っ張るハイブリッド日本車の技術力の前に、EVシフトは不調をきたしていますね。特にエンジンのトライボロジー技術はほかの力学系マシンへの応用展開が期待されるところですね。いくらデジタルテクノロジーを駆使しても、つばぜり合いは力学系マシン分野がCO2排出削減技術にかかってくるのだとおもわれます。
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なんとなくストライベック (フリクションオイル)
2024-06-24 08:04:57
日立金属さんってプロテリアルに名称がかわったんですね。
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最近のAI革命 (鉄の道ものづくり)
2024-08-06 16:08:46
最近はChatGPTや生成AI等で人工知能の普及がアルゴリズム革命の衝撃といってブームとなっていますよね。ニュートンやアインシュタイン物理学のような理論駆動型を打ち壊して、データ駆動型の世界を切り開いているという。当然ながらこのアルゴリズム人間の思考を模擬するのだがら、当然哲学にも影響を与えるし、中国の文化大革命のようなイデオロギーにも影響を及ぼす。さらにはこの人工知能にはブラックボックス問題という数学的に分解してもなぜそうなったのか分からないという問題が存在している。そんな中、単純な問題であれば分解できるとした「材料物理数学再武装」というものが以前より脚光を浴びてきた。これは非線形関数の造形方法とはどういうことかという問題を大局的にとらえ、たとえば経済学で主張されている国富論の神の見えざる手というものが2つの関数の結合を行う行為で、関数接合論と呼ばれ、それの高次的状態がニューラルネットワークをはじめとするAI研究の最前線につながっているとするものだ。この関数接合論は経営学ではKPI競合モデルとも呼ばれ、様々な分野へその思想が波及してきている。この新たな科学哲学の胎動は「哲学」だけあってあらゆるものの根本を揺さぶり始めている。こういうのは従来の科学技術の一神教的観点でなく日本らしさとも呼べるような多神教的発想と考えられる。
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