最近の中国の新聞の変化には驚くものがあります。
昔は人民日報とか、解放軍報など、政府や軍の機関紙が中心だった中国の新聞ですが、社会主義市場経済の流れの中で規制緩和が進み、各社が一斉に収益を追求しはじめています。
その結果、いくつかの顕著な傾向が出始めました。
まずは、新聞の増加。
20年前は150紙にすぎなかった新聞が、いまや2000紙を数えるに至りました。
それぞれの新聞が激烈な部数競争を繰り広げています。
そのための戦術のひとつは「別題字戦術」。
北京では人民日報が「環球時報」や「京華時報」などの大衆紙を出し、
上海では歴史のある文匯報が「新民晩報」という夕刊紙で売上げ部数を伸ばしています。
古くからの新聞社が、別の題字の新聞で勝負しているのです。
特に夕刊が娯楽記事を中心に人気を得ています。
例えて言えば、産経新聞社が「夕刊フジ」に社運をかけているような状況です。
もう一つの戦術は、「宅配戦術」。
日本では存続が危ぶまれる宅配ですが、「広州日報」や「北京青年報」が始めた宅配は部数増に大きく貢献し、各紙があいついで導入。上海では宅配専門会社が2社、各紙の宅配を請け負っています。
続く戦術が「過激記事戦術」。
最初にこの戦術を採用した「北京青年報」は、日本の「東京スポーツ」を研修で訪れ、この戦術を思いついたといわれています。
イエロージャーナリズムに近い飛ばし記事が大衆の圧倒的な支持を獲得し、部数を大幅にのばしました。
そして、これら新聞の絶好の話題が日本バッシングであるといえましょう。
部数増がもたらすメリットは、購読料だけでなく、広告費収入にも直結します。
新聞広告費は01年の2050億円から、03年の3160億円に、5割を超える成長を示していますが、部数の多い新聞ほど広告集めのためには有利です。
しかし、より、微細に見ると、都市部の新聞に広告が集中していることに気がつきます。
四川省で見ると、省全体をカバーする「華西都市報」は部数70万部。これに対し成都で発行されている「成都商報」は60万部で、華西都市報に及びません。
しかし、広告収入は、成都商報が4億元を売上げ、華西都市報の3億元を上回っているのです。
今、中国の新聞広告の主力は、不動産広告。不動産広告を打つには、四川省全域より、成都市内の方が効率がいいことは容易に理解できます。
広告を引き金として、朝刊から夕刊の時代を経て、都市報の時代に突入しているのです。
最近の中国の新聞事情に饒舌すぎたかもしれません。
重慶のサッカーの時の騒ぎも、今回の教科書騒動も、あるいは尖閣諸島にかかわる反日の動きも、このような新聞のセンセーショナリズムが深くかかわっていることを申し上げたかったのです。
もちろん、新聞だけでなく、テレビの変貌も著しいですし、インターネット掲示板も、雑誌も日に日に変化し、世論形成に大きな影響を与えています。
さて、このような状況を前に、中国進出の日本企業はどう対応すればいいのでしょう。中国の現地に広報の拠点を設けることが重要になっています。
欧米企業は海外進出に当たっては必ず広報の専門スタッフが当初から現地に派遣されます。
しかし、日本企業の多くは、進出に際して広報スタッフが参画することは稀で、何かあると東京にお伺いを立てるケースが多いようです。
当然、現地の状況を把握できず、意思決定に時間がかかり、何かあっても対応が後手後手になってしまいます。
先日の反日行動の際も、騒ぎが大事にならなかったから良かったものの、充分な危機管理体制をとれずに手を拱いていた企業も多かったようです。
01年のことですが、中国青年報という新聞は「中国人の日本人に対する感情は、大変複雑かつ懐疑的である。よって、欧米企業に比べ日本企業は中国においてなおさらPR活動をする必要がある。しかし残念なことに、日本企業は中国におけるPRの認識が欠如している」と記事で指摘しています。
日本広報学会はこのような状況下での日本企業の対応のあり方を探るため、中国の広報の総本山である中国公共関係協会はじめ諸方面から講師を招聘し、「広報が創る相互理解~日中交流の対話と共創」の統一テーマのもと、日本中国それぞれの広報のエキスパートによる国際シンポジウムを開催します。
最新の状況を踏まえた、生々しい話しが聞けるでしょう。
催事の概要はhttp://www.edogawa-u.ac.jp/~hamada/expo/にホームページを設けています。
昔は人民日報とか、解放軍報など、政府や軍の機関紙が中心だった中国の新聞ですが、社会主義市場経済の流れの中で規制緩和が進み、各社が一斉に収益を追求しはじめています。
その結果、いくつかの顕著な傾向が出始めました。
まずは、新聞の増加。
20年前は150紙にすぎなかった新聞が、いまや2000紙を数えるに至りました。
それぞれの新聞が激烈な部数競争を繰り広げています。
そのための戦術のひとつは「別題字戦術」。
北京では人民日報が「環球時報」や「京華時報」などの大衆紙を出し、
上海では歴史のある文匯報が「新民晩報」という夕刊紙で売上げ部数を伸ばしています。
古くからの新聞社が、別の題字の新聞で勝負しているのです。
特に夕刊が娯楽記事を中心に人気を得ています。
例えて言えば、産経新聞社が「夕刊フジ」に社運をかけているような状況です。
もう一つの戦術は、「宅配戦術」。
日本では存続が危ぶまれる宅配ですが、「広州日報」や「北京青年報」が始めた宅配は部数増に大きく貢献し、各紙があいついで導入。上海では宅配専門会社が2社、各紙の宅配を請け負っています。
続く戦術が「過激記事戦術」。
最初にこの戦術を採用した「北京青年報」は、日本の「東京スポーツ」を研修で訪れ、この戦術を思いついたといわれています。
イエロージャーナリズムに近い飛ばし記事が大衆の圧倒的な支持を獲得し、部数を大幅にのばしました。
そして、これら新聞の絶好の話題が日本バッシングであるといえましょう。
部数増がもたらすメリットは、購読料だけでなく、広告費収入にも直結します。
新聞広告費は01年の2050億円から、03年の3160億円に、5割を超える成長を示していますが、部数の多い新聞ほど広告集めのためには有利です。
しかし、より、微細に見ると、都市部の新聞に広告が集中していることに気がつきます。
四川省で見ると、省全体をカバーする「華西都市報」は部数70万部。これに対し成都で発行されている「成都商報」は60万部で、華西都市報に及びません。
しかし、広告収入は、成都商報が4億元を売上げ、華西都市報の3億元を上回っているのです。
今、中国の新聞広告の主力は、不動産広告。不動産広告を打つには、四川省全域より、成都市内の方が効率がいいことは容易に理解できます。
広告を引き金として、朝刊から夕刊の時代を経て、都市報の時代に突入しているのです。
最近の中国の新聞事情に饒舌すぎたかもしれません。
重慶のサッカーの時の騒ぎも、今回の教科書騒動も、あるいは尖閣諸島にかかわる反日の動きも、このような新聞のセンセーショナリズムが深くかかわっていることを申し上げたかったのです。
もちろん、新聞だけでなく、テレビの変貌も著しいですし、インターネット掲示板も、雑誌も日に日に変化し、世論形成に大きな影響を与えています。
さて、このような状況を前に、中国進出の日本企業はどう対応すればいいのでしょう。中国の現地に広報の拠点を設けることが重要になっています。
欧米企業は海外進出に当たっては必ず広報の専門スタッフが当初から現地に派遣されます。
しかし、日本企業の多くは、進出に際して広報スタッフが参画することは稀で、何かあると東京にお伺いを立てるケースが多いようです。
当然、現地の状況を把握できず、意思決定に時間がかかり、何かあっても対応が後手後手になってしまいます。
先日の反日行動の際も、騒ぎが大事にならなかったから良かったものの、充分な危機管理体制をとれずに手を拱いていた企業も多かったようです。
01年のことですが、中国青年報という新聞は「中国人の日本人に対する感情は、大変複雑かつ懐疑的である。よって、欧米企業に比べ日本企業は中国においてなおさらPR活動をする必要がある。しかし残念なことに、日本企業は中国におけるPRの認識が欠如している」と記事で指摘しています。
日本広報学会はこのような状況下での日本企業の対応のあり方を探るため、中国の広報の総本山である中国公共関係協会はじめ諸方面から講師を招聘し、「広報が創る相互理解~日中交流の対話と共創」の統一テーマのもと、日本中国それぞれの広報のエキスパートによる国際シンポジウムを開催します。
最新の状況を踏まえた、生々しい話しが聞けるでしょう。
催事の概要はhttp://www.edogawa-u.ac.jp/~hamada/expo/にホームページを設けています。
日本広報学会
あまり知られていないが、日本広報学会という集まりがある。6日、愛・地球博の長久手会場ロータリー館で第11回研究発表大会が開かれ、7日には、同じ会場で学会創立10周年記念国際シンポジウム「広報が創る相互理解~日中交流における対話と共創~」があった。
「学会」といっても、大学教授や研究者だけの集まりではなく、企業や広告代理店などもかかわっている。「広報」には行政や団体によるものもあるが、どちらかといえば、企業広報の問題に重点を置いている。会長はトヨタ自動車副会長の帳富士夫氏。今回は財団法人、経済広報センター(日本経団連の関連団体で、トップには歴代、経団連の事務総長経験者が就いている)と社団法人、日本パブリックリレーションズ協会(企業広報とパブリシティ関係者の集まり)との共催。
6日の研究発表会を覗いた。「まだまだ認知度は低いが、CCO(チーフ・コミュニケーション・オフィサー)を置く企業が増えている」「広報専門職を養成する大学院を設置すべきだ」「広報部門に女性を起用する企業が増えているが、形だけで、本当の意味で重用していないところも多い」「広報効果測定の手段として報道分析は定番だ(要するに、どのような方法でマスコミに情報を流せば、大きく、効果的に取り上げてくれるかをちゃんと測定しなさい、という意味)」等々。企業の広報がマスコミをどう見ているか。本音がところどころにのぞく。こういう書き方をすると身も蓋もないが、不祥事が明るみに出た時の企業の広報の対応次第で、記事の扱いは変わってくる。
基調報告は「『広報学』は『広報』しているかー広報学会の現状と課題ー」。広報が重要だと唱えている広報学会自身が実は広報ベタだという指摘。よくある話。私自身、東京で経済記者を長年やってきたが、このような団体が1995年からあることを知らなかった。
7日の国際シンポは別の用事があり、残念ながら参加できなかった。日中関係は難しい状況にあり、広報次第でよくもなり悪化もする。進出企業が広報に力を入れるのはわかる気がする。
日本広報学会は創立10年を記念して「日本広報学会賞」を新設し、研究活動のPR、事務局活動の活性化に力を入れるという。
isono : 2005年08月07日 22:52
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