Fireside Chats

ファイアーサイド・チャット=焚き火を囲んだとりとめない会話のかたちで、広報やPRの問題を考えて見たいと思います。

スケート連盟はむざむざチャンスを逃すのか

2005年12月19日 23時33分53秒 | PR戦略
浅田真央がロシアのスルツカヤを抑え、GPファイナルで優勝した。
国際スケート連盟の年齢制限規定に3ヶ月満たない15歳の浅田のオリンピック出場問題がにわかに注目を浴びたが、なぜか国際スケート連盟も日本スケート連盟も消極的だ。
国際スケート連盟のチンクアンタ会長は「日本スケート連盟から申請があれば、理事会・総会を開き検討するが、日本スケート連盟からその動きはない」と語り、日本スケート連盟の城田憲子フィギュア強化部長は「一人のために総会の開催を要求するのは非現実的」として動こうとしない。
浅田真央のトリノ見送りの流れは既にできているようである。
ところで城田強化部長の及び腰はなぜなんだろう?
今回は3人の代表枠に浅田のほかに5人の候補がひしめきあっている。それぞれの選手とコーチに対する配慮なのか。
トリノからバンクーバーに向けての長期戦略の一環なのか。

PRの視点から見たとき、今回の浅田の世界一は、日本スケート連盟にとっての願ってもないチャンスである。たしかに安藤美姫というスターを擁してはいるものの、安藤・浅田の2枚看板が揃えば、トリノでの高視聴率は疑いない。子どもたちのフィギュア熱も高まり、裾野が広がるだろう。
少なくとも、世界スケート連盟への申請は行うべきである。
トリノで日本選手がメダルに届かなかったときのエクスキューズにもなるはずだ。
それに、スケート界のドン堤義明を不祥事で失ったいま、失地回復の足がかりになるのではないか。
日本のマスコミは浅田問題を追いかけるはずだ。これにより世界スケート連盟マターからIOCマターに格上げになる。
欧米のメディアも浅田の世界一の実績から無視できまい。女子フィギュアは冬季オリンピックの華なのだ。

札幌の銅メダリスト、ジャネット・リンは日本中の注目を集めた。
サラエボ、カルガリーで2連覇を果たし引退したカタリナ・ビットは、リレハンメルオリンピックで復帰したものの7位に終わった。
しかし「花はどこに行ったの」の曲にあわせ、ユーゴ内乱で廃墟となったサラエボへの思慕の思いと平和の尊さとを訴えた彼女の演技は、世界中の感動を誘ったのだ。
オリンピックの女子フィギュアはこれまでさまざまな物語を紡いできた。
浅田がカルガリーでも好調を保っている保証はない。
オリンピックがスポーツの至高の祭典であるならば、彗星のように登場した新たなる物語の担い手、浅田真央を欠くのは余りに惜しい。






朝日新聞の自民党広告特オチ事件

2005年12月19日 16時14分38秒 | ニュースコメント
多少旧聞に属して恐縮だが、10月27日の毎日新聞のコラム一筆入魂で、嶌信彦氏は次のように書いた。

ある自民党の幹部は「総選挙当日の小泉首相をあしらった新聞広告を見たか」と聞く。「改革を止めるな。」というキャッチコピーを入れた小泉首相の大きな顔写真を紙面いっぱいに展開した全面、あるいは見開き二ページのカラー広告である。その幹部によると「当日、朝日新聞だけは掲載せず、その分はスポーツ紙などにまわした」というのだ。事前にこのことを知った朝日側はあわてて自民党へ出向いたが、「朝日読者には自民党支持者が少ないという調査結果が出たうえ、予算もなくなってきたので効果的とみられるスポーツ紙を選ぶことにした」として応じなかったという。朝日だけをはずしたのは前代未聞のことだろう。

これに関する言及はネット内では必ずしも多くはなかったが、広告業界の常識からすると驚天動地の事態である。

なにかにつけて横並び意識の強い朝日・読売・毎日の3紙にとって、他2紙に広告が出たのに自分の新聞だけがはずされる事態は、記事で『特オチ』をしたのと同等のお咎めを社内的に甘受させられることになる。
これまで、毎日新聞は部数の低迷からしばしばその憂き目にあってきた。
毎日新聞の広告営業の基本動作は、他紙への広告申込を調べ、もし毎日だけが落ちているなら広告主へ夜討ち朝駆けをかけることだ。

その状況が、よりにもよって選挙最終日の自民党の全ページ広告の扱いを巡り、朝日新聞に起きたのだ。
しかも朝日分の予算はスポーツ紙の出稿に回された。

そもそも選挙広告は新聞社にとってオイシイ広告である。
立候補者は希望する新聞へ広告を掲載することができ、その広告費用は選挙管理委員会が支払う。
新聞広告には。きめ細かな回数割引制度が存在しており、レギュラー広告主の料金は低く抑えられているが、選挙広告は回数割引が適用されないため、正規料金で請求される。
いざ選挙となると広告会社も新聞社の広告局も色めき立つのはこんな理由からだ。

今回、自民党が朝日への掲載を見送ったのは、選挙管理委員会が料金を支払う候補者の広告ではなく、自民党が自分の財布から支払う広告であるので、そこまで高い料金とは思えないが、それでも4000万円程度の広告費は必要であろう。

労せずして手に入ると思っていた4000万円の油揚げを、直前になってスポーツ紙に攫われてしまった朝日新聞広告局の驚愕はいかばかりか、容易に想像が付くというものであろう。
ちなみに、同じ朝日新聞の発行する週刊朝日が武富士から受け取ってしまい、社会的指弾を受けた裏広告費は5000万円だった。

朝日新聞は役員クラスがおっとり刀で自民党に駆けつけたそうである。
NHK問題を巡り、安倍晋三とトラブッた記事の掲載が今年の1月だったから、ここ半年以上朝日と自民党はギクシャクしていたわけである。
もとよりそれが原因だと自民党が朝日に言うはずもない。
予算上の理由と、自民党のターゲットと朝日の読者層にずれがあるとの理由で門前払い。
官邸に駆け込んでも、そもそもスポーツ紙に思いいれが強いのは小泉総理その人だし、飯島秘書官も朝日新聞からスポーツ紙に予算を移すことは予め了承しているため、官邸ルートも効果を奏さない。
なにより、選挙最終日とあり、朝日新聞が泣きつける政治家はすべて選挙区に貼り付いてしまっている。
役員は子どもの遣いでむなしく引き上げざるを得なかった。
こんな経過から朝日新聞は最終日の自民党全ページ広告を特オチしてしまうという屈辱にまみれることになったようだ。

55年体制というアンシャン・レジームは細川政権で崩壊したし、小選挙区制による選挙が中選挙区制とは全く異なるものであることは今回の小泉選挙が証明した。
選挙報道がかつてとは全く異なるのものであるべきということ、政党とマスメディアも新たな関係を構築すべき段階に差し掛かっていること、選挙広告という経済構造もかつてとは変わり始めていることを、早く旧来のメディアには気づいてもらいたいものだ。

『きっこの日記』に見る参加型ジャーナリズム

2005年12月19日 09時01分08秒 | 参加型ジャーナリズム
きっこの日記にイーホームズの藤田社長からメールが送られ、面白い展開になっている。

『きっこの日記』は11月の早い時点から構造計算偽造問題の黒幕として内河所長の存在をいち早くにおわせ、朝倉育英会を介しての政界への波及ルートを暗示していた。
その真偽は定かならぬが、内容・文体ともに読み応えがあり愛読してきた。

この問題は門外漢にはなかなか理解しにくい世界である。
構造計算や建築確認の作業についての知識や、建築業界の事情や人脈について知らないと判断がむずかしい。

おそらく、新聞やテレビなどのジャーナリストも同様だろう。
そこで、この『きっこの日記』や2ちゃんねるなどのCGM(コンシューマ・ジェネレーテッド・メディア)の役割が大きくなってくる。

一方、昔マガジンハウスでアルバイトをしていたことがあるというイーホームズの藤田社長も積極的発言を続けている。
国会の参考人招致でも、自己の立場を積極的に主張し、しゃべりすぎと質問者にさえぎられるほどだし、イーホームズのホームページでも、連続してコメントを発信している。

もし、藤田社長の発言が正しければ、雪印食品を告発した西宮冷蔵の水谷洋一社長と並ぶ公益通報者としての名前を残すことになるだろう。
水谷社長は当時の扇国土交通大臣により、理不尽な処分を受け大きな不利益を被ったが、今回イーホームズも国土交通省により不可解な立ち入り調査を受けている。
武部幹事長の幕引き発言があったし、飯島秘書官が動いているとの噂もある。

既存ジャーナリズムには、これらCGMの情報の検証を行って欲しいものだ、CGMとマスメディアとの連携ができれば、このような専門的知識を必要とする案件の報道クオリティが向上すると思う。