フランス車といえばついこの間まで「ユルさ」が定番だった。精緻な内装の立て付け、高いボディー剛性、外装の緻密なチリ合わせ、といった言葉は国産車やドイツ車のためにあり、仏車とは無縁だった。
かの有名なEURO-NCAPでも、仏車のテスト結果は惨憺たる様相を呈していた。歴代のシトロエンのテスト結果を見ると、デビュー当時それなりに安全性能をうたっていたXantiaのボディーのぜい弱ぶりに慄然とする。
しかしルノーはラグナ2あたりから、シトロエンはC5から、プジョーは307から極めて優秀なテスト結果を叩き出すようになった。今度のプジョー1007は、スーパーミニクラスで初の5つ星獲得という快挙を成し遂げている。
C5はもともと4つ星だったがマイナーチェンジで5つ星を獲得することになった。これは、先代のXantiaと比較すると次元の違う衝突安全性能である。Xsaraの後継者たるC4も然り。Xsara自体はXantiaよりは遥かに高い安全性能を持っているが、C4はC5同様、フロント、サイドインパクトに対しては最高の5つ星を獲得する一方、C5では劣っている歩行者保護性能にも優れており、まさに万全の衝突安全性能を確保している。(参考:新C5のテスト結果)
ただこのテストで少し疑問に思うのは、高価なドイツ車(特にアウディ、BMW)が必ずしも最高の評価を得ていないことだ。これはどういうことなのだろうか。ボディー剛性と安全性を常に性能アピールの常套句にしているこれらの車が、なぜこのテストでC5やラグナ2などに劣る、という結果しか得られないのだろう?
これも昔から思っていることだが、ボディ剛性という言葉は走りや安全性と関連してよく使われるので、是非とも分かりやすく数値化して欲しい。最近巷には剛性感なるものも使われているので、余計に分からない。評論家の中には、「相変わらずボディー剛性は今一つだが・・云々」といった書き出しを仏車全般に対して枕詞のように使う人がいるが、こうしたテスト結果を見る限り、何が根拠なのかさっぱり分かりません。
※新しく見つけたC5V6の試乗記をブックマークしました。レポートは元CX乗りの方です。
※建築家kawaさんのブログにCXに関するコメントがありました。
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c5skyblue さんが指摘されているように、世間でいう(評論家のいう)ボディー剛性にはよくわからないところがあります。おそらくほとんどの場合は、扉を閉めたときの感触や音質、あるいは走らせてみてミシミシ音が出るかどうかといったあたりを捉えていっているのだろうと思います。
でも、これらのことは、ボディー全体の丈夫さではなく、むしろ開閉部や細かい部品の組み付けの問題ですね。ボディーそのものの強度はちょっと走らせてみたくらいでは簡単にはわからないと思いますので、私自身は評論家が剛性について書いているコメントはほとんどあてにしていません。
これまで、レンタカーを含め、かなり走り込まれたシトロエンに乗ってきた感触からいえば、残念ながら Xantia はあまり剛性の高い車ではなく、CX や XM の方がずっと上だと思います。この点、Xantia に関する衝突安全テストの結果と私自身がもっている印象はだいたい一致しています。
しかし、細かい部分の組み付けは、シトロエンでも新しい車ほど精密になってきていますので、ちょい乗りから受ける「剛性感」では Xantia の方がすぐれているということになるのだろうと思います。CX や XM は好きな人にとっては長期使用に耐えるたいへん魅力のある車ですが、ちょっとしたミシミシ音はけっこう出ますね。ですから、それを気にする人にとっては、あまり評価の高い車にはならないわけですね。
新 C5 には表面的な「剛性感」だけでなく骨太な強さを期待しているのですが、果たしてどうでしょうか。とりあえず、衝突安全テストの成績は優秀ということで、その点については安心していいのかなと思っているところです。
私もXan→Xm→Xanと乗り換えましたのでおっしゃることは良く分かります。シャシーフレーム、サスペンションメンバー、ボディやドアパネルの肉厚など全てXmの方が頑丈に出来ていました。
長期使用で骨格やボディが全体的にヤレていく=Xantia、内装の立て付けやミッション、電装系が壊れていく=Xm、という感じでしたね。
「剛性」ははっきりした言葉で定義もあるでしょうし、MCのたびに「新型ではねじれ剛性○○%UP」のように書くなら絶対値を公表すべきでしょう。できない理由があるのでしょうか?ならばそういう表現は無意味だと思います。
また本来、操縦性や安全性に影響を及ぼす「剛性」と、耐久性に影響を及ぼす「剛性」では何かが違うような気がします。一般の生活者に対して「剛性感」なる言葉をプロが便利に使い過ぎている一方で、品質を出来るだけ客観的に評価する観点から「剛性」という言葉の基準を明解にした方がいいと思います。
C5ですが、内装部品等は日本車なみに軽量化/合理化されたパーツが使われています。初期型のインパネパーツは特にスイッチ類の耐久性が今一つでした。車体ですが、海外のユーザーの声を拾ってみますとリアサスペンション回りに振動や異音が発生する場合があり、弱点であるようです。あと私の経験では、ステアリング系にも若干不安があります。新型ではこのあたりも対策されているはずなので、普通に乗っている分には大丈夫かと思います。
いずれにしろ、EURO-NCAPのお陰で仏車のボディー剛性が短期間に著しく向上したのは確かだと思います。ドイツ車に追い付け、追いこせだったのでしょう。しかしどうやらもともとフランス人はこうしたベクトルの技術開発は得意なようで、小型車から大型車まで、ユニークなデザインの車が多い割には優秀です。
評論家には、是非ここら辺の事情をを専門知識を活かして分かりやすく解説して貰いたいものです。