非常に考えさせられる記事なので、転載しておきます。
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日本が空家だらけにならないために 新築信仰を改めるべき
2014.08.24
総務省から日本の空き家率が発表された。5年前よりも0・4ポイント増えて、13・5%。これは、私の予想をはるかに下回っていた。15%くらいには達するのでは、と考えていたのだ。ところが、意外に低い伸び率だった。東日本大震災で多くの家屋が失われたのが、空き家率の伸びを鈍らせたはずだ。
しかし、13・5%というのは深刻な数字。7~8戸に1戸が空き家になっている状態。身近に空き家の増加を感じている人も多いと思う。
「それは過疎地の話で、都市部は違うよ」と、考える人もいるだろう。しかし、これは全国的な現象だ。空き家率は関東の大都市圏で11・4%、近畿大都市圏で13・9%となっている。東京都は10・9%。9戸に1戸が空き家ということになる。
ただ、これは平均値。自分の住んでいる街で観察していただきたい。駅から離れるほど、賃貸住宅の空室が多くなっていることに気づくはずだ。古いマンションの郵便ポストを見ると、半分近くに投函防止の粘着テープが張られていたりする。
ではなぜ、これほどまでに空き家が増えているのか。一番の原因は、住宅をつくりすぎているということだ。
日本の年間新設住宅着工数は、人口が約2・5倍の米国とさほど変わらない。つまり、人口比にして米国の2倍半もたくさん住宅を作っているのだ。なぜだろう。
まず、日本人は「新築」が大好きだ。しっかりつくられた中古よりも、安普請でも新築がいいと考える人が多い。
次に国をあげて持ち家を推進している。住宅ローン控除やすまい給付金、固定資産税の軽減など、住宅を購入することにさまざまな特典を設けている。逆に、住宅を借りる場合には、ほとんど優遇措置がない。
新しい住宅が生まれると、それに付随して家具や電化製品などの需要も出てくる。景気への波及効果が大きい。だから、政府も新築住宅を推進する施策を取る。
しかし、時代はすでに変わった。持ち家率は60%を超えている。これ以上伸ばす必要を感じない。それよりも、住宅への需給を健全な状態に導くことが大切だ。
すでに地方遠隔地の住宅は「値がつかない」という状況。この夏、帰省してそういう現実を目にした人も多いだろう。また、空き家になった実家を持つ人も多いはず。
都市部でも郊外の利便性のよくないエリアでは、中古住宅の価格が数百万円レベルにまで落ちてきている。札幌などの地方都市では、ワンルームマンションの家賃が1万円台に下落している現象も見られる。
住宅の余剰感がここまで顕著になっているのに、いまだ新築住宅の建設や購入を促進する持ち家推進政策は時代遅れ。これを抑制する方向に政策を転じるべきだと考える。
■榊淳司(さかき・あつし) 住宅ジャーナリスト。1962年、京都府出身。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案の現場に20年以上携わる。不動産会社の注意情報や物件の価格評価の分析に定評がある(www.sakakiatsushi.com)。著書に「年収200万円からのマイホーム戦略」(WAVE出版)など。
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日本が空家だらけにならないために 新築信仰を改めるべき
2014.08.24
総務省から日本の空き家率が発表された。5年前よりも0・4ポイント増えて、13・5%。これは、私の予想をはるかに下回っていた。15%くらいには達するのでは、と考えていたのだ。ところが、意外に低い伸び率だった。東日本大震災で多くの家屋が失われたのが、空き家率の伸びを鈍らせたはずだ。
しかし、13・5%というのは深刻な数字。7~8戸に1戸が空き家になっている状態。身近に空き家の増加を感じている人も多いと思う。
「それは過疎地の話で、都市部は違うよ」と、考える人もいるだろう。しかし、これは全国的な現象だ。空き家率は関東の大都市圏で11・4%、近畿大都市圏で13・9%となっている。東京都は10・9%。9戸に1戸が空き家ということになる。
ただ、これは平均値。自分の住んでいる街で観察していただきたい。駅から離れるほど、賃貸住宅の空室が多くなっていることに気づくはずだ。古いマンションの郵便ポストを見ると、半分近くに投函防止の粘着テープが張られていたりする。
ではなぜ、これほどまでに空き家が増えているのか。一番の原因は、住宅をつくりすぎているということだ。
日本の年間新設住宅着工数は、人口が約2・5倍の米国とさほど変わらない。つまり、人口比にして米国の2倍半もたくさん住宅を作っているのだ。なぜだろう。
まず、日本人は「新築」が大好きだ。しっかりつくられた中古よりも、安普請でも新築がいいと考える人が多い。
次に国をあげて持ち家を推進している。住宅ローン控除やすまい給付金、固定資産税の軽減など、住宅を購入することにさまざまな特典を設けている。逆に、住宅を借りる場合には、ほとんど優遇措置がない。
新しい住宅が生まれると、それに付随して家具や電化製品などの需要も出てくる。景気への波及効果が大きい。だから、政府も新築住宅を推進する施策を取る。
しかし、時代はすでに変わった。持ち家率は60%を超えている。これ以上伸ばす必要を感じない。それよりも、住宅への需給を健全な状態に導くことが大切だ。
すでに地方遠隔地の住宅は「値がつかない」という状況。この夏、帰省してそういう現実を目にした人も多いだろう。また、空き家になった実家を持つ人も多いはず。
都市部でも郊外の利便性のよくないエリアでは、中古住宅の価格が数百万円レベルにまで落ちてきている。札幌などの地方都市では、ワンルームマンションの家賃が1万円台に下落している現象も見られる。
住宅の余剰感がここまで顕著になっているのに、いまだ新築住宅の建設や購入を促進する持ち家推進政策は時代遅れ。これを抑制する方向に政策を転じるべきだと考える。
■榊淳司(さかき・あつし) 住宅ジャーナリスト。1962年、京都府出身。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案の現場に20年以上携わる。不動産会社の注意情報や物件の価格評価の分析に定評がある(www.sakakiatsushi.com)。著書に「年収200万円からのマイホーム戦略」(WAVE出版)など。
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