boban のんびり 株投資日記

備忘録です。ディトレードなどの短期勝負ではないので、日々の変化はあまりありません。

日本はHFT天国、海外倣い規制導入が必要-米リクイドネットCEO

2015-11-19 | 2015
2015/11/19 08:29 JST(ブルームバーグ)


「ダークプール」と呼ばれる取引所外市場を運営する米リクイドネットの創立者で、最高経営責任者(CEO)のセス・メリン氏は日本の株式市場で存在感を増す高頻度取引(HFT、High Frequency Trading)について、規制導入が必要とみている。

メリン氏は12日のブルームバーグのインタビューで、「日本はHFTに何の懸念も持っていない世界で唯一の主要市場。何の規制も検討されていない」と指摘。世界的にHFT経由の株式トレーディングが増えている中、既に規制に動き始めた欧米などに比べて日本の監督当局の対応は遅れており、「まるで市場参加者を守る気がないようだ。HFTを野放しに、増えるままにしている。他の海外市場が警告していることを気に留めるべきだ」と述べた。

東京証券取引所によると、HFTなど発注スピード重視の投資家が使う国内コロケーションサービスの売買代金比率は10月末時点で40-50%で推移。高速化を図った現物株の売買システム「arrowhead(アローヘッド)」が始動した2010年は10%程度だったが、1年後には35%になった。東証はことし9月にアローヘッドを刷新し、1日の最大注文件数を1.37億件から2.7億件、秒間処理件数は3-4万件から5万件以上へ増やした。

りそな銀行アセットマネジメント部・トレーディンググループの平塚崇グループリーダーは、HFTの拡大は容認か規制かについて「日本が方向性を出していないのも理由の一つ」とみている。HFTに必要なスピードと低いレイテンシー(待ち時間)がそろっており、「日本はHFTが参入しやい」との認識を示した。

不安定化助長の批判、日本も9月に一歩

HFTには市場に流動性や効率性をもたらすとの評価がある一方、相場の不安定化やボラティリティを必要以上に上昇させるとの批判がついて回る。10年5月に米国株が急変動したいわゆる「フラッシュ・クラッシュ」はHFTの台頭が影響したとされ、各国でHFTに対する規制が検討され始めた。証券監督者国際機構(IOSCO)は13年4月の報告書で、高速大量取引で法律違反や不適切な行動のリスクが増大する可能性に言及。「現状の監視手法を強固にする必要がある」と記した。

欧州連合(EU)議会は昨年4月、HFTやアルゴリズム取引への規制を含む金融商品市場指令(MiFID)の見直しを承認。米国はことし3月、HFTトレーダーに取引所への登録を義務付け、中国は10月にアルゴリズム取引の監視を強化するとした。HFTの比率が2割を超すオーストラリアは、現時点で市場に悪影響を及ぼしているとはみていないが、法律抵触の疑いがある事例について調査している。

日本でも金融庁が9月に公表した2015事務年度の行政方針で、アルゴリズム取引などIT技術の複雑化・高度化に対応するため、市場監視システムの強化に努めると初めて記載。同庁はブルームバーグの電話取材に「実態把握をしていく必要があるという問題意識に基づいている。調査を踏まえ、検証を行う」と意義を説明した。しかし、「現状では何も決まっていない状況」と言う。日本取引所自主規制法人も9月から、海外投資家によるHFTの広がりなどクロスボーダー取引の監視体制の強化を目的に「国際審査室」を設置した。

大和総研金融調査部の横山淳主任研究員は、「HFTが何であるかということすら正確に定まっておらず、HFTという手法自体に明確にどのような問題があるかも分かっていない」とした上で、「リスクについて投資家が疑念を抱いているのなら、安心して投資できるようなアクションが求められる」と指摘する。一方、野村総合研究所・未来創発センターの大崎貞和主席研究員は、「米国と日本の市場構造は全く違い、その批判ををすぐに国内に持ってくるのはまずい。HFTを使ったと思われる相場操縦を摘発していく必要はあるが、手法自体を規制する必要はない」との見方だ。

リクイドネットのメリン氏も、「HFT全てが悪いわけではない」とみているが、高速取引により機関投資家が直接的な損害を被っており、「それは年金基金や投資信託に投入された資金に直接的な損害となっているということを意味している」と話す。

リクイドネットは08年6月に日本株の取引を開始し、同社によると、東証の取引に占める国内ダークプール市場の割合は7-10%。同社では安倍政権の誕生した2012年末以降、国内市場での売買高が3倍になった。メリン氏は、ダークプールではHFTが少ないため、HFTを避ける投資家に選好される余地があると分析。「HFTが締め出されるか守られるか、一層注意深くみている」と言う。