フレンチのような深い「文化」においては、
伝統的なスタイルを崩すことは、
よほどベーシックとヒストリーをふまえていないと
単に「奇を衒った」と片付けられがちですが、
このかたの、そういった批評の域を超えて評価されるであろうお皿に
向き合えたことを、心から幸せだと思えた午餐でした。
カンテサンス、岸田周三シェフ。
岸田シェフのご高名は、あの山本益博氏がご執心で週一で通い詰めておられるとか、
名だたるフレンチの重鎮シェフが訪れては唸って帰っていかれる、とか
身近な例ではうちの生徒さんがいらして感動したとか、
さまざまな方面からとどろいていたのですが
わたしが伺ったのは今回が初めてでした。
エスコートしてくださったかたのおかげなのですが
お食事の前にシェフがご挨拶にみえてくださったり
お食事のあと厨房を拝見させていただいたり、
挙句に「お写真よろしいでしょうか?」という
オバチャンの厚かましいお願いに快く応じてくださったりと、
予期せぬツーショット写真、撮影に至ったのです。
感激~~~!!
まだ三十路を過ぎたばかりでしょうね、透明感のある、
「文学青年」といってもおかしくない繊細な印象の岸田シェフ。
彼のお料理の素晴らしさはなんと言っても既成概念に囚われない
「火入れ」の革新的な技術にあります。
この、岸田シェフにしか出来ないと言われている
「虹いろ」に仕上げるお魚の火入れ。
こちらはメインの一品、「ほうぼう」のソテーなのですが
写真の腕が良くなくておわかり辛いと思いますが
断面は実に美しい虹色に輝いているのです。
宝石のようなこのお魚が従えているのは春菊のエミュルションとほうれん草のピュレ。
このような、技術的な秀逸とはまた別の次元でも
岸田シェフの感性には感動させられます。
たとえば、この帆立と里芋とビーツのミルフィーユ。
帆立とお野菜の組合わせだけでも新鮮なのに
ビーツを重ねてさらに複雑さを増した「手ごわい」美味しさといったら!!
付け合せの洋梨もかるくマリネしてあって
ビーツのピュレと糖度をあわせてあるのでしょう、
思わずお連れの真似をしてミルフィーユに洋梨もサンドしました。
美味しいよ~~~。
もう涙声のテーブル。
一品目の、さつまいものスープ、甘くないスイートポテト(?)に
ピーカンナッツのオイル。
この風味はワインの味わいを狙っているのでしょうね、
ワインを召し上がらないお客様へのメッセージを感じたのは深読みでしょうか?
二品目の「山羊のチーズのヴァヴァロワ仕立て」
・・・・ただただ脱帽です、このなめらかさ、優しさ、「聖母」を感じました。
添えられた百合根の、蒸したでもなく茹でたでもなく「この堅さがいちばん美味しい」と
迷うことなく確信させられる歯ざわり。
そして必然のように添えられた極上のオリーヴオイルと
フルール・ド・セルの深く気高い味わい。
お料理においては「これ、美味しいのかな?」と一瞬でも思わせると失敗だと
わたしは常々思っているのですが
カンテサンスではどのお皿にも、一瞬でも迷ったりはしませんでした。
確実に美味しい!! 岸田シェフ、すごい!!
メインのお肉は鶏でした、
「シャポン」と言われる、去勢することによって、
成長による無駄なアミノ酸の拡散を阻止される種。
家庭料理ではあまり知られていませんが、とっても美味しい高価な鶏。
そのロティです。
わたしもレッスンでは、「鶏は皮目からじっくり15分以上焼いて
裏返したら1分でお皿にあげてね」とよく言うのですが
シェフはおそらく皮目にしか火をいれていらっしゃらないと思います。
素晴らしい皮のぱりぱり感!
これ、鶏?というくらい美味しい・・・・。
またほうれん草のピュレのよく合うこと!!
デセールにも感動でした、
「二度焼きビスキュイ」
これは普通に焼いたジェノワーズを砕いて、アマンドプードルを合わせ
再度焼いたという、常識を超えたスイーツです。
美しくきびきびとしたホールスタッフの女性によると
「組み立てのときに余分がでてしまうのを
再利用できないかと考えてシェフが思いついたものです」
余ったジェノワーズはすべて自分の口に運んでいたわたしは絶句。
愛らしいティアドロップ型にくりぬかれた部分にあしらった
ココナツ風味のクリームも絶品でした。
そして、白眉、ほんとうに眉といい頭髪といい、
挙句には生命維持になんら必要のない体毛にいたるまで
すべて逆立ってしまった
「メレンゲのグラス」
アイスクリームにこんなに感激したのは初めてです!
リュバーヴを添えたものをあっ!!というまに平らげたあと
「もうお楽しみは終盤に近づきつつある・・・」と
凹み気味のわたしたちにサービスのかたが
「よろしかったらアイスクリーム、おかわりをいかがですか?」と!!
ありがとうございました、
岸田シェフ、スタッフの皆様。
隙のない、それでいて温かい、お料理とサービスと空間。
凄烈、でした。
伝統的なスタイルを崩すことは、
よほどベーシックとヒストリーをふまえていないと
単に「奇を衒った」と片付けられがちですが、
このかたの、そういった批評の域を超えて評価されるであろうお皿に
向き合えたことを、心から幸せだと思えた午餐でした。
カンテサンス、岸田周三シェフ。
岸田シェフのご高名は、あの山本益博氏がご執心で週一で通い詰めておられるとか、
名だたるフレンチの重鎮シェフが訪れては唸って帰っていかれる、とか
身近な例ではうちの生徒さんがいらして感動したとか、
さまざまな方面からとどろいていたのですが
わたしが伺ったのは今回が初めてでした。
エスコートしてくださったかたのおかげなのですが
お食事の前にシェフがご挨拶にみえてくださったり
お食事のあと厨房を拝見させていただいたり、
挙句に「お写真よろしいでしょうか?」という
オバチャンの厚かましいお願いに快く応じてくださったりと、
予期せぬツーショット写真、撮影に至ったのです。
感激~~~!!
まだ三十路を過ぎたばかりでしょうね、透明感のある、
「文学青年」といってもおかしくない繊細な印象の岸田シェフ。
彼のお料理の素晴らしさはなんと言っても既成概念に囚われない
「火入れ」の革新的な技術にあります。
この、岸田シェフにしか出来ないと言われている
「虹いろ」に仕上げるお魚の火入れ。
こちらはメインの一品、「ほうぼう」のソテーなのですが
写真の腕が良くなくておわかり辛いと思いますが
断面は実に美しい虹色に輝いているのです。
宝石のようなこのお魚が従えているのは春菊のエミュルションとほうれん草のピュレ。
このような、技術的な秀逸とはまた別の次元でも
岸田シェフの感性には感動させられます。
たとえば、この帆立と里芋とビーツのミルフィーユ。
帆立とお野菜の組合わせだけでも新鮮なのに
ビーツを重ねてさらに複雑さを増した「手ごわい」美味しさといったら!!
付け合せの洋梨もかるくマリネしてあって
ビーツのピュレと糖度をあわせてあるのでしょう、
思わずお連れの真似をしてミルフィーユに洋梨もサンドしました。
美味しいよ~~~。
もう涙声のテーブル。
一品目の、さつまいものスープ、甘くないスイートポテト(?)に
ピーカンナッツのオイル。
この風味はワインの味わいを狙っているのでしょうね、
ワインを召し上がらないお客様へのメッセージを感じたのは深読みでしょうか?
二品目の「山羊のチーズのヴァヴァロワ仕立て」
・・・・ただただ脱帽です、このなめらかさ、優しさ、「聖母」を感じました。
添えられた百合根の、蒸したでもなく茹でたでもなく「この堅さがいちばん美味しい」と
迷うことなく確信させられる歯ざわり。
そして必然のように添えられた極上のオリーヴオイルと
フルール・ド・セルの深く気高い味わい。
お料理においては「これ、美味しいのかな?」と一瞬でも思わせると失敗だと
わたしは常々思っているのですが
カンテサンスではどのお皿にも、一瞬でも迷ったりはしませんでした。
確実に美味しい!! 岸田シェフ、すごい!!
メインのお肉は鶏でした、
「シャポン」と言われる、去勢することによって、
成長による無駄なアミノ酸の拡散を阻止される種。
家庭料理ではあまり知られていませんが、とっても美味しい高価な鶏。
そのロティです。
わたしもレッスンでは、「鶏は皮目からじっくり15分以上焼いて
裏返したら1分でお皿にあげてね」とよく言うのですが
シェフはおそらく皮目にしか火をいれていらっしゃらないと思います。
素晴らしい皮のぱりぱり感!
これ、鶏?というくらい美味しい・・・・。
またほうれん草のピュレのよく合うこと!!
デセールにも感動でした、
「二度焼きビスキュイ」
これは普通に焼いたジェノワーズを砕いて、アマンドプードルを合わせ
再度焼いたという、常識を超えたスイーツです。
美しくきびきびとしたホールスタッフの女性によると
「組み立てのときに余分がでてしまうのを
再利用できないかと考えてシェフが思いついたものです」
余ったジェノワーズはすべて自分の口に運んでいたわたしは絶句。
愛らしいティアドロップ型にくりぬかれた部分にあしらった
ココナツ風味のクリームも絶品でした。
そして、白眉、ほんとうに眉といい頭髪といい、
挙句には生命維持になんら必要のない体毛にいたるまで
すべて逆立ってしまった
「メレンゲのグラス」
アイスクリームにこんなに感激したのは初めてです!
リュバーヴを添えたものをあっ!!というまに平らげたあと
「もうお楽しみは終盤に近づきつつある・・・」と
凹み気味のわたしたちにサービスのかたが
「よろしかったらアイスクリーム、おかわりをいかがですか?」と!!
ありがとうございました、
岸田シェフ、スタッフの皆様。
隙のない、それでいて温かい、お料理とサービスと空間。
凄烈、でした。