須藤徹の「渚のことば」

湘南大磯の柔らかい風と光の中に醸される
渚の人(須藤徹)の静謐な珠玉エッセイ集。

『荒野抄』 text 27

2005-08-14 01:16:26 | text
渚の人の第3句集『荒野抄』が、今秋(10月1日)刊行の予定。版元は、『アナイス・ニンコレクション』、『ヒトラー暗殺計画とスパイ戦争』(ジョン・H・ウォラー)、2004年ノーベル文学賞受賞のオーストリアの女性作家エルフリーデ・イェリネク氏の『ピアニスト』など、質の高い書籍を出版する、文芸・学術出版の鳥影社。定価2625円(税込み)。装丁は、多田智満子の遺句集『風のかたみ』を担当した吉野史門氏。流通は、東販・日販など大手出版販売会社(出版取次)を通すという。

収録する作品は、1995年以降の10年間の作品から約460句を厳選する。1年間1章を基本とし、国内外詠(沖縄、北海道、山形、若狭、バリ島、イタリアなど)も入れる。全10章のタイトル(章名)は、「水と時間」「紡錘型」「地球の音」「星痕」「光る樹幹」「ステンドグラス」「不在の水」「白長須鯨」(しろながす)「カフカの眼」「火のように」。現在、再校から3校の途中で、もうすぐ陽の目を見る。

帯に記されることばは、<『幻奏録』より10年、俳句の「時間」と「空間」軸を徹底的に解き明かさんと、さまざまな試行を繰り返す著者渾身の第3句集『荒野抄』、ここに刊行! 以下略>。(予定)。

<『荒野抄』より10句抄出>
体内の水傾けてガラス切る
グラン・ミラージュホテルふと鶏鳴に目覚めたり
硝煙は月の国境越えてくる
常しえに天心を行く夜汽車かな
ハイビスカス君の吐息が星屑に
薄原頭上を駈ける風の馬
まうしろのステンドグラス朧なり
野分後太極拳が空気割り
繚乱と辛夷の空へ白長須鯨(しろながす)
翡翠の一閃山を遠くせり