いまさら韓ドラ!

韓国ドラマの感想をネタバレしながら書いています。旧作メイン

アジョシ

2014年06月14日 | 韓国映画
韓国でめちゃくちゃヒットした映画であり、
あの「レオン」を彷彿とさせる、殺し屋と少女の物語り。
しかもタイトルが「アジョシ」
「おじさん」だよ?「おじさん」
「お母さん」なら、まだ映画のタイトルになりそうなもんだが……。

もうこれは観るしかないよな~と、機会をうかがっていました。
そして誰からも邪魔が入らない仕様で立て籠もり、ついに視聴完了いたしました。


《あらすじ》

質屋のテシクはわけありだ。
無口な男は、誰とも関わりを持たないかのように暮らしている。
唯一の例外が、人懐っこいソミ。
場末のショウダンサーの娘で、母親はヤク中だ。

ある日、ヤクをくすねた母親が、やくざに追い込みをかけられ、
ソミも一緒に拉致されてしまう。
思わぬところで事件に巻き込まれたテシクは、
ふたりを助けようと動き出す。

麻薬密造、臓器売買、ナイフ使いの殺し屋、マフィア、警察。
ためらいもなく人を殺せる男、テシクの過去とは?



あらすじはこんなところでしょうか。

ネタバレなし、で少しお話ししますと、
万人におすすめできる映画じゃないかもですね~。
「韓国版レオン?」と思ってた方には特に、おすすめしません。
少女と一緒にいる時間って、ちょっとだし。
血しぶきスゴいし。
わりとグロだし。
ストーリー的に、そ、そんな!と驚く仕掛けも特にありませんので。

わたしは血とかグロとかけっこう平気なんで、
ナイフアクション楽しかったです。
でもまぁ昼間の光の中で観たい映画じゃないですね。
食事時もノーサンキューです。

子どもたちへの残虐行為は、さすがに直接描写はありませんが、
やはり内容的には胸くそ悪いものです。

ウォンビンファンには文句なくおすすめします。
ビジュアル、アクションともにワンダホー!!!

では、以下ネタバレしつつ続きます。
未視聴の方は、お気をつけください。






ポスターやパッケージであの短髪姿しか観たことなかったので、
まず冒頭の長髪ウォンビンにびっくり。
長髪って程でもないけど、片目を隠したウェービーっぽい髪がかわゆい。

どこが「アジョシ」やねん!

お兄ちゃんだろ~。

わたしはウォンビンお初でして、このビジュアルにいきなり打ち抜かれました。
めちゃくちゃかっこいい。


この鬼太郎ヘアがナイーブさを増進させています。

そして2回の対決相手となる、ナイフ使いの男、ラム・ロワン。
タナヨン・ウォンタラクンという役者さんだそうですが、
またこの男がバリバリの二枚目なんだな、これが。
わたしすごく好みなの~。


こんないい男がなんであんなやつらの仕事うけてんのかしら。

特殊な形状のナイフを使うヘンタイらしいのですが、
よくあるタイプのヘンタイ的な殺し屋じゃなくて、とても紳士なので、
そこも好きでした。

この人たちが闘う、クラブのシーンと最後の対決シーンは
映画的にも見せ場なわけで、DVDにもアクション監督さんや撮影監督、照明監督さんの
メイキング解説のオマケがついていました。
これを観ると、映画を撮る人たちの熱い思いがビシビシと伝わってきます。

このアクションシーンで大切なのは、テシクの感情が伝わるかどうかだ、って
みなさん言ってまして、わたしとしては目からウロコでした。

特に最後のシーンは、ソミを助けられなかったテシクの激しい感情の発露と、
殺人マシーンとしての冷静で的確な格闘。
熱さと冷たさが同時に存在しててスゴい。

もちろん「こっちの方がカッコいい」という主張もお互いしてまして、
カッコ良さの追求も大事にされてました。


わたしが好きなのは、質屋でロワンがクマ男を撃ち殺すところ。
その後、「銃声に微動だにしなかった」みたいにつぶやくところかな。
ここですでに、テシクの凄みを感じてるロワンなのでした。

テシクが、ナイフで脅されて財布を出すところも好き。
あの財布でナイフを挟み取ってしまうのよね。

この冒頭のしゃしゃしゃっと描かれるふたりの様子が、
今後の展開を期待させてくれます。
映画の導入部として、とても良い。

ひるがえって悪役のマンソク兄弟ねー。
こいつらの極悪非道っぷり、常軌を逸した外道っぷりはハンパない。
やくざの社長にバシバシほっぺた張られてる兄貴は一見ザコ的存在かと思いきや、
顔に似合わぬクレイジーな言動でぐいぐい来ます。

その弟は、絵に描いたようなヘンタイ極道で、
ドルチェ&ガッバーナで決めながら狂気を振りまいてくれます。


戌年生まれの犬野郎♪っていう悪態をついて楽しそう。

兄弟愛は強いところが、こういう悪党のお約束だね。

麻薬課の刑事たちは、狂言回し的存在に過ぎず、あまり活躍はしません。
毎度毎度、すべてことが終わってしまってからの登場だもん。
チーム長とその部下(雨上がりの蛍原さん似)、好きなコンビなんですけどねぇ。残念。

もちろん、核となる少女ソミは、孤独な魂を抱える存在。
不幸な境遇でも、ネイルアートに慰めを見いだして生きている。
劣悪な環境でも、曲がらず、腐らず、心を殺すことなく。
彼女の存在は、やはりテシクの光なんだな、と思いますね。
彼を照らしてくれる光、ではなくて、暗闇で揺れるろうそくの炎のような光、かな。


不覚にもこのシーンでは泣かされたぜ。

彼は仕事上の関係で、妻とおなかの子を亡くしており、
そのせいもあってソミを大切に思っています。
何日か会っていないだけで顔も忘れてしまいそうになるソミを助けるのは、
妻子への贖罪という意味合いが大きいのでしょう。
そして自分を慕っていたソミを傷つけた償い。

それが愛かと聞かれても、わからない。
ただ彼女を見捨て、忘れて生きることはできないテシク。
世捨て人のように生きてきたつもりのテシクに、
知らない間に生きる意味を与えてくれていたソミなのだと思います。

筋立て自体はすごくわかりやすいし、
最後の眼球はソミじゃない、というのも観ている人にはわかっているので、
もう、テシクの怒りと哀しみをハラハラしながら眺めている終盤。
あ~、最後無事なソミを見つけてそのまま微笑みながら死んじゃうんだなー、テシク、とか
思っていたのですが、そこんとこは裏切られました。

ちゃんとソミの無事を確かめ、
しかも独り立ちするようしっかり約束してテシクも生きている、と。
申し訳ないが、テシクは死んじゃった方がよかったんじゃないか、映画として。

防弾ガラスを執拗に打ち続けて、
「最後の一発が残っている」と、兄貴を撃ち殺しましたけど、
カートリッジひとつちゃんと残ってるじゃないですか。
あれは興ざめだったなー。
2発残して兄貴を殺し、最後の1発で自死するかも……の流れが、ベタだが望ましい。

ラスト、
「おじさん……泣いてるの?」というソミのセリフに、
きちんとテシクの泣き顔で終幕、というのが、いかにも韓国映画なのかなー。
いや、言うほど観てないですけど、情緒のありようがちょっと違うな、と思いました。

眼球ホルマリン漬けを拾って、無防備に泣いちゃいますからね、テシク。
泣くのか、ここで。
共に熱い涙を流すべきなんだろうか?と悩みましたが、
どう考えてもソミのじゃないからな。

ばったばったと敵のザコキャラを倒して行くテシクですが、
一発で頸動脈を切り裂く、なんて離れ業はなくて、
自分もちょっとずつやられながらも、相手の脇、足の腱、手首なんかをぴゅっぴゅっと
切っていく様子が、動物ののようで、強い印象を残しました。
※と、感じてたけど逆か。は一瞬で殺すんだもんね。
あの、ぴゅっ、ぶしゅっ、っていう静かな殺しのシーンをもう1回みたいなぁ。

ロワンも、こんなさばきを見せられちゃあ、銃なんか使えない。使いたくない。
使ってたらテシクはやられちゃってたと思うけど。
ロワンの性癖が仇になりましたなぁ。
でもこの人美しいわ~。彼自身がナイフのような人だわ~。
最後はテシクの言葉通り、手に噛みつかれて、どうにもならなくて死んでしまいました。
テシクの意外な泥臭さ、憎悪が、にじみ出た終わりだったな。

駄菓子屋のおじいちゃんが叙情担当、というか、
「子どもは万引きしながら大きくなるんだ」っていう懐の深さがいい味を出してた。
あやうく、最後、ソミの後見人を頼まれるのかと思った。

「ひとりで生きていけるな?」
「うん」
っていうのは、レオンとマチルダが交わせなかった言葉だと思う。
レオンのかわりに残された鉢植えが、マチルダにそう問いかけ、
彼女はそれを寄宿舎の庭に植え替えることで、返事をしたわけだ。
この映画は、そこを言わせた。
ラストシーンのみならず、わりと「感情」に関しては、わかりやすい映画だった。
そのへんが支持された理由かもね。

髪を切る前と切った後では、なんかテシクの印象が別人~。
いっきに老け込んだ、というか、もちろん「アジョシ」でいいです、な雰囲気に。
ウォンビンいいわ~。
無双すぎる気もするけど、許せる。



あのドチにナイフを突き立ててくじり上げて吐かすシーンも好きだし、
鬼畜弟の腿に釘をビスビス打ち込むシーンも好き。
テシクだから。
ソミに関する感情のチャンネルだけは開いていて、あとは死んでんのね。

大事な人質殺しちゃって、どうやってソミを返してもらうつもりだったんでしょうね?
手持ちのカードがなんもないまま敵地に乗り込んじゃって。
そのへんが「ストーリーがなぁ……」と惜しまれる点でしょうか。

結論としては、ずっと気になっていたので、観る事ができてよかった、と。
複雑なストーリーに頭を悩ますことなく、
テシクの妙技と、血しぶきと、彼の情動、
映画の間とか雰囲気を味わえて楽しかったな、という感想です。
ウォンビンが超絶かっこいいし。
正直、本来の監督の希望通りおじさん配役だったら微妙だったと思うな。

大人のみならず、子どもの臓器売買とか、残酷なシーンもありましたが、
性的な虐待描写はなし。
それでも、もちろん観ていて気分のいいものではありません。
ただ、「映画なんだから、そういうエンタメにならない要素は入れてほしくない」
とか言うのはちょっと違うかな、という気が、わたしはします。
大人たちがあんなドロドロぐちゃぐちゃに殺し合ったり、
酷い目にあわされるような世界を描いていて、子どもだけは無垢で無事でいられますよ、なんて嘘でしょ。
大人のぐちゃぐちゃドロドロは楽しんでおいて、
そういう可能性は描くなっていうのはズルイような気がする。
多少居心地の悪い部分がないと、かえって危険な映画になっちゃうんじゃ?
それはそれ、と割り切るのが大人なんでしょうかねぇ。

ほんとだったら(って虚構の世界でいうのもおかしいけど)
ソミだって目を抜かれて死体になってたっておかしくなかったわけで。
ただロワンの紳士っぷりと、絆創膏ペタリのおかげで生きてただけで。
十分、そこはファンタジーで救済してくれてる映画だと思いますね。

「秋の童話」以来のウォンビンファンだったら、ひっくり返るような内容だったと思いますが、
もし身近にそんな奥様がいて、「アジョシ観ようかな」なんて言い出したら、
全力で止めてあげてくださいね。


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