いまさら韓ドラ!

韓国ドラマの感想をネタバレしながら書いています。旧作メイン

私は王である

2015年01月30日 | 韓国映画
ビョンさまの「王になった男」観ちゃったからね、
次はジフニの「私は王である」観るしかないでしょ!
ということで視聴しました。

なんか気楽で笑えてちょっと泣ける映画が観たかったので、
ちょうどいいかな、と。

ええ!気楽に観ましたとも!

正直脱力だよ、こんちきしょー!


〈あらすじ〉

長子の放蕩ぶりが目に余るということで、
突如、時期国王に任命された三男坊忠寧(チュンニョン)は大弱り。
本が大好きで体が弱く、自分が次期国王になるなんて考えられない……。
気弱な王子は一念発起し、とうとう宮殿を逃げ出すことに。
ところが、宮殿に潜り込もうとやってきたチュンニョンそっくりの奴卑ドクチルと
鉢合わせをしてしまい、ふたりは入れ替わることに。

野望を持った悪徳官僚も現れて、事態は複雑化。
最後はいったいどうなるの?


とまあ、こんな感じのお話なんですが、
最後はどうなるの?ってこうなるに決まってんじゃねーか!

そこはいいんです。

物語のベースは、「王子と乞食」
入れ替わったふたりが様々な体験をして少し賢くなり、
それぞれ元の世界へ帰って行くというお話ですからね。
わかってて観ているんですから、問題ナッシング。
逆に、結末が予想できるからこその安定感のある視聴タイムだったのですが……。

チェ・ジフンのファンとしても物足りないし、
コメディで大笑いしたい人にもあまりおすすめしませんね。
ふふふ、とほほえんで、少ししんみりして、
みんなが最後しあわせになる映画が観たい方には、悪くないんじゃないですかね。

あまり期待せずにのんびり視聴がよいと思いますよ。

なんか辛口っていうか、あんまり褒めどころのない感想になっちゃうので、
「ええ?わたし楽しかったのに!」という方は、これ以降お読みにならないでください。
わたしも楽しくなかったわけじゃないの。
ちゃんと楽しかったのよ、細かい部分が。
ただ、あ~、残念だな~って部分が多かっただけ。
期待し過ぎちゃったのかもね。

では、以下ネタバレしつつ感想です。




映画冒頭の跳び蹴りで、思いっきりコメディだと宣言しているので、
はちゃめちゃぶりは気になりません。
それどころか、よし、そのはっちゃけぶりを楽しもう!と身構えたのに肩すかし。
脚本と演出がいまいちなのかなぁ。
コメディでそこがいまいちだったら全部いまいちなんじゃないのかなぁ。

ははは、うふふ、と笑えるシチュエーションはあるんだよ。
ただ、つなぎが中途半端な印象。
コメディってさ、ドカンと大笑いして、観客にその笑いが残っているうちに
次のシーンへ転換、っていうテンポが欲しいじゃない。
なんか蛇足みたいな変な間(つけたし笑い)みたいなのが全部にくっついてる。
ははは、の後に一呼吸するひまができちゃってる気がする。
笑い自体も、わっはっはっは!っていう大笑いはできなかったし。
個人的主観です。後から考えて、ほんわかコメディってジャンルもありなのかな、と思った。

めっちゃかっこつけてた近衛兵士がめっちゃ弱い、とか。
チュンニョンの女の趣味は微妙、とか。
めっちゃかっこつけてた元大臣がおちゃめに窃盗しちゃう、とか。
ちょっと楽しいシーンはちょこちょこあるんだけどね。
大爆笑とはほど遠かったかな~。

問題は、

どっちつかず

ということだと思うのですよ。

常時とは異なるシチュエーションに放り込まれたふたりの男、チュンニョンとドクチル。
どっちも描こうとするから印象が散漫になってます。

わかるんですよ、画的には、宮殿の中にいるドクチルの方が画になる。
だからそっちも描きたくなるのはわかる。
だけど、ドクチル自身は最後の最後までドクチルで、
人間の中身としての成長は無いわけ。
卑しい身分の人が高貴な身分を演じるのは大変だね、面白いね、という表層で終わっちゃう。

もちろん重要なのは世の中に放り出された箱入り息子チュンニョンの方なので、
そっちの内的成長は描きたいのだけど、いかんせんほこりっぽくて汚い画になりがち。
しかも設定が中途半端。
奴卑として連行されて逃げ出して、旅の途中でしいたげられた父子と出会って、という
流れ者が出会うシチュエーションなので、薄い。
感情移入するところまで気持ちが乗らない。
悲惨だな、かわいそうだな、というこちらも表面的な感情しかわかない。

どうせ物語はベタなんだから、とことんベタでもいいと思うんですよ。

たとえばね、宮殿を出た世子は、最下層の人々に混じって生活する。
そこにはもちろん貧困やきつい労働はあるけれど、
本の世界では味わえない喜びだったり、
人間同士の慈しみあいだったり、まさに「生きる」という実感がある。
その美しさや尊さを感じていく中で世子は成長してゆくのだが、
どうにもならないつらい出来事が起こり、とうとう世子は王となる決意をする。

とかさ。

ありがちだよ?ありがちだけど、世子が開眼するためには「同情」だけじゃダメだと思うのよ。
そこに「共感」がなくては。

慣れない最下層の生活に溶け込んで受け入れられていく過程で、
コメディ要素は十分入れられると思うの。
だって宮殿でドクチルが馴染んでいく様子はちゃんと描けてるんだもの。

ドクチルの馴染んでいく感じは描けてるのに、人間的成長は無い。
チュンニョンの成長は描くのに、馴染んでいく感じは描けてない。
結局どっちつかずで、どっちにも気持ちがついていかない。
そういう点が、すごくもったいないと思う。
ドクチルパートは思いっきりばっさり切って、チュンニョンに焦点をあてて欲しかったなぁ。

せっかくふたりの男がいるのに、この人たちの交歓は無いんだもん。
王子と乞食がお互い納得ずくで身分を取り替えたわけでもないし、
ラスト直前にばったり会って急いで服を替えただけ。
これもつまらんね。
実はなんかあったかもしれないが、見せてくれなきゃわかんない。

最後のシーンは、「お互いが本来の居場所に帰った」ことがはっきりわかりますが、
それも演技力とかのおかげじゃなくて、
「そうじゃなきゃ話がまとまらないから」という話の都合上わかるというだけ。

チェ・ジフンの演技力が無いと言っているわけではありませんよ。
十分できてるんだけど、それを生かす見せ場がないだけ。
もったいないでしょう。
映画「アンティーク」では、コミカルな演技と重たい演技と両方みせてくれて、
十分力はあるし、魅力的な人だと思うんですけどね、わたしはね、ファンだからね。

なんか愚痴ばっかりになっちゃったな、ごめんなさい。

唯一良かったなーと思うのは、冒頭のシーン。
粗野で無知だけど、お嬢さんを愛していてグイグイせまっていく色気のあるドクチルは最高。

ん、それは言い過ぎか。
少女を救おうと飛び出していったシーンも悪くなかったか。
でもラストの大演説は説得力が足らーん!(そこまでくる過程の積み上げが薄いから)

明の使者もヤなやつだったが、彼を謝らせて王がニコニコして謝罪を受け入れて、っていうのも蛇足。
「孔子は中国の偉人だぞ」とブツブツ言わせてたのが救いか。
あのセリフのおかげで、かろうじて「ギャグです」みたいな雰囲気が出てる。
どっかんどっかん大砲打ち込んでたシーンも、
「やっつけたいのは悪人だけなんだけどな……」というセリフがあるので、
かろうじて「わかっててやってるはちゃめちゃです」というエクスキューズが出てる。
監督、なにがしかの政治批判も入れ込んでるつもりなのかな?
よくわかんないけど。

ああなんでこんな文句ばっかなんだ!
ごめんね!
でもなんだかんだ最後までちゃんと観たんだよ!
スタッフロールまでちゃんと!

だいたい奴卑の娘がなんで「父上」「母上」とか言ってんの?
反逆罪で奴隷にされた設定なのか?そうは見えないぞ!
字幕、これでいいのか?!

とはいえ、

けして後味は悪くない映画です。

(ここまで言っといてなんだという気がしないでもないが)

日曜の午後にぽやんとして観るには良い映画だと思います。

主な登場人物たちはみな愛すべき点のある人々なので。
護衛官ふたりもいいし、王の跳び蹴りも最高だし、不思議な発明家も面白いし、
もちろんチュンニョンの正室も不細工だけどかわいいし、
そのへんの人物造形は好きだったです。

くれぐれも「王になった男」とは比べないで!
目指すところが違う映画だから!



最新の画像もっと見る

コメントを投稿