心の休憩室 パート2

何度か中断していますが、書きたいことがでてくると復帰しています。

般若心経その5 (釈迦の仏教と大乗仏教)

2023-03-15 17:29:51 | 般若心経

【般若心経その5】

 

般若心経の訳に入る前に、「釈迦の仏教」と

大乗仏教の違いを説明します。

 

釈迦入滅後数百年の時を経るうちに、釈迦の

時代の教えをかなり異なる形で解釈し、

独自の路線を打ち出すグループが多数登場

しはじめた。

 

仏教は「考え方に多少の違いはあっても、

他の集団との協調性を保っているならば

同じ仲間として認める」という決まりを

作ったので、すさまじい多様性が生まれた。

 

これによって生まれたのが大乗仏教で、

般若教の他に法華経、維摩経、華厳経などがある。

 

大乗仏教には「仏の力を信じて崇めれば

救われる」という思いがある。

 

しかし、「釈迦の仏教」は「自力で修行し、

自分で煩悩を滅し、自力で自分を救う」ことを

求めている。

 

寄って、大乗仏教と「釈迦の仏教」の考え方は異なる。

*****

 

般若心経は「釈迦の教えを否定することによって、

釈迦を越えようとしている経典」と言える。

*****

 

般若心経は玄奘三蔵法師の訳であるが、

短いバージョンの小本と長いバージョンの

大本の二種類がある。

 

大本には

・出だしの部分(序分、じょぶん)

・本文(正宗分、しょうしゅうぶん)

・結びの言葉(流通分、るずうぶん)

があるが、

小本には序分と流通分が無い。

 

262文字の般若心経は小本である。

*****

【大本の序分に書かれた内容】

あるとき釈迦は、王舎城という町の

霊鷲山という山で、多くの弟子や菩薩たちと

ともにいて、一人、深い禅定(ぜんじょう)

(瞑想状態)に入っておられました。

 

その折、舎利子がその場の集まりの中にいた

観音様に「般若波羅蜜多を修行するには

どうしたらよいのですか?」と尋ねました。

 

すると観音様は次のように言いました。

*****

【大本の流通分に書かれた内容】

それまで瞑想に入っていた釈迦は、その状態から

出ると、観音菩薩が述べたことに対して、

「その通り、素晴らしい」と称賛しました。

 

すると、その場に集っていた大勢の聴衆は

みな歓喜して、その言葉を承りました。

*****

 

つまり、小本に書かれていることは、

舎利子の質問に対する観音様の答えである。

(舎利子は釈迦の一番弟子)

 

また、観音様の答えに対して、釈迦が

「素晴らしい」と称賛したことが重要である。

*****

般若波羅蜜多(智慧の完成)は六波羅密多の一つである。

 

六波羅密多:菩薩に課せられた六種類の実践徳目

①布施波羅密多、②持戒波羅密多、③忍辱波羅密多、

④精進波羅密多、⑤禅定波羅密多、⑥智慧(般若)波羅密多

①~⑤は⑥を得るための手段である。

*****

上の序分を理解して、小本を読むと理解しやすい。

 

(その6に続く)


般若心経その4 (釈迦の仏教3)

2023-03-14 17:15:49 | 般若心経

【般若心経その4】

 

***釈迦の仏教その3***

釈迦の仏教の続きです。

 

「五蘊(ごうん)」や「十二処」や「十八界」によって

この世の在り方を正しく認識することができたら、

次は「苦となにか?」を理解することです。

 

そこで、出てくるのが次の八苦です。

生苦:生まれたことや生きていること自体が苦しみ

老苦:老いていくことの苦しみ

病苦:病気になる苦しみ

死苦:死は必ずやってくるという苦しみ

 

愛別離苦 (あいべつりく):

愛する人といつかは別れがやってくる苦しみ

 

怨憎会苦 (おんぞうえく):

腹が立つ憎い人間と会わないといけない苦しみ

 

求不得苦 (ぐふとくく):

求めるものが手に入らない苦しみ

 

五蘊盛苦 (ごうんじょうく):

私たちの心と体(≒五蘊)が苦しみを生む原因だということ

 

「四苦八苦」という言い方をしますが、

四苦は生老病死の4つの苦です。

*****

 

次に、四諦(したい)と呼ばれる4種の基本的な

真理がでてきます。迷いと悟りとの因果を

苦・集・滅・道の四つに分けて説明したものです。

 

四諦(したい)とは、

苦諦:

この世は自分の思い通りにならず苦しみばかりという真理

 

集諦:

苦しみばかりであるのは、自分の欲望や煩悩が原因という真理

 

滅諦:

自分の欲望や煩悩を消し去り、正しい行動をすれば

苦しみから解放されるという真理

 

道諦:

正しい行動とは八正道であるという真理

*****

 

では、八正道(はっしょうどう)は何かと言うと、

 

正見 (しょうけん):

・正しいものの見方・考え方を持つこと

・偏った見方(自己中心的な考え等)で物事を見ないこと

 

正思惟 (しょうしゆい):

・怒りや憎しみ等の感情にとらわれず、正しい考え方で判断をすること

・偏った考え方をせず善悪を正しく見極めること

 

正語 (しょうご):

・嘘や悪口、二枚舌は言わず、正しい言葉を発すること

・正しい言葉遣いをすること

 

正業 (しょうごう):

・殺生や盗みなど道にそれたことはせず、正しく生きること

・煩悩のままの行動を慎むこと

 

正命 (しょうみょう):

・規則正しい生活を送ること

 

正精進 (しょうしょうじん):

・正しい努力をすること

 

正念(しょうねん):

・正しい志、意識を持つこと

 

正定(しょうじょう):

正しい心の状態を保つこと

*****

 

「生きる苦しみを消すための道」を示すのが、

上記の四諦と八正道です。

*****

 

(その5につづく)

 

 

 


般若心経その3 (釈迦の仏教2)

2023-03-13 17:40:24 | 般若心経

【般若心経その3】

 

***釈迦の仏教その2***

釈迦の仏教の続きです。

 

次に、この世を「認識するもの」と「認識されるもの」に分けると、

前者は五根(感覚器官)、後者は五境(五根の対象)となる。

 

******

【五根】、【五境】、【十二処】

 

五根(感覚器官)とは、

 ① 眼 (げん)

 ② 耳 (に)

 ③ 鼻 (び)

 ④ 舌 (ぜつ)

 ⑤ 身 (しん)

 

五境(五根の対象)とは、

 ① 色 (しき)

 ② 声 (しょう)

 ③ 香 (こう)

 ④ 味 (み)

 ⑤ 触 (そく)

 

また、「こころ」も感覚器官と考えると「意(心)」となる。

「意」によって認識されるものが「」である。

 

よって、六根と六境は以下となる。

六根=五根+意(い)

  眼(げん)、耳(に)、鼻(び)、舌(ぜつ)、身(しん)、意(い)

六境=五境+識(しき)

 色(しき)、声(しょう)、香(こう)、味(み)、触(そく)、識(しき)

 

つまり、この世は以下の十二処の構成要素の

集合体でできていると言える。

十二処=六根+六境

 

五蘊と比較すると、

意と識が、五蘊の「受想行識」に相当し、

残りの五根と五境が、五蘊の「色」に相当する。

 

よって、五蘊の「色」は、五境の「色」より、

ずっと意味が広いと言える。

*****

【十八界】

 

さらに、「認識するもの」と「認識されるもの」に

「認識そのもの」を加えると、「認識そのもの」は

以下の六識となる。

 

六識(意が作用し、その結果生じる認識)

 ① 眼識 (げんしき)

 ② 耳識 (にしき)

 ③ 鼻識 (びしき)

 ④ 舌識 (ぜつしき)

 ⑤ 身識 (しんしき)

 ⑥ 意識 (いしき)

 

よって、この世は以下の十八界の構成要素の

集合体でできていると言える。

十八界=十二処+六識

眼(げん)、耳(に)、鼻(び)、舌(ぜつ)、身(しん)、意(い)

色(しき)、声(しょう)、香(こう)、味(み)、触(そく)、識(しき)

眼識 (げんしき)、耳識 (にしき)、鼻識 (びしき)、

舌識 (ぜつしき)、身識 (しんしき)、意識 (いしき)

*****

釈迦の考え方をまとめると以下となる。

「自分」という絶対的存在が実在すると

考えるのは錯覚で、存在するのは「五蘊」や

「十二処」や「十八界」の構成要素の集合体

だけである。

 

このように考えると、この世の本当の

在り方を正しく認識することができる。

*****

 

(その4に続く)


般若心経その2 (釈迦の仏教1)

2023-03-12 17:17:01 | 般若心経

【般若心経その2】

 

釈迦が仏教を始めたのが紀元前450年ごろ。

般若心経のサンスクリット原典ができたのは

紀元後2~4世紀で、玄奘が漢訳したのは

661年のようです。

 

般若心経は大乗仏教の一つですが、大乗仏教の

世界観は、釈迦の世界観と異なります。

そのため、大乗仏教や般若心経を理解するためには、

まず、釈迦の仏教について理解する必要があります。

 

そこで、第2回~第4回では、釈迦の仏教について説明します。

 

***釈迦の仏教その1***

 

仏教は約2500年前にゴータマ・シッダッタに

よって生み出された。

 

ゴータマは29歳で出家し、何年にもわたる

艱難辛苦の修行の末に悟りを開き、

ブッダとか釈迦とか釈迦牟尼と呼ばれる

ようになった。

 

*****

 

釈迦の教えは、

「私たちが生きているこの世界は、無限の苦しみに

満ちていて、どこまでも私たちを悩ませ続けるが、

その避けがたい苦しみをなんとか消し去って、

究極の安楽状態である涅槃を目指しなさい」

ということである。

 

つまり釈迦が生み出した仏教は、

自分の心の苦しみを自分の力で解決する、

「自己救済」の宗教である。

 

次に苦しみを消し去るためには、この世の本当の

在り方を正しく認識する必要がある。

 

*****

 

つまり、正しい道を歩むためには、初めに

正しい地図を手に入れておかねばならない。

私たちは「自分」という絶対的存在が実在すると

考えているが、それは錯覚である。

 

自分自身などというものはどこにもなく、

あるのは、

五蘊(五種類の構成要素)の集合体だけである。

 

*****

【五蘊】

五蘊(ごうん)とは以下の5つである。

 ①  色(しき):我々をなしているものの外側の要素すべて

 ② 受(じゅ):外界からの刺激を感じ取る感受の働き

 ③ 想(そう):物事を様々に組み立てて考える構想作用

 ④ 行(ぎょう):何かをしたいと考える意思の働きやその他の心的作用

 ⑤ 識(しき):心のあらゆる作用のベースとなる認識する働き

 

①は肉体、②~⑤は心的作用(心)にあたる。

広い意味では「色」は「全ての物質」にあたる。

*****

 

(その3に続く)


般若心経その1 (全文と読み方)

2023-03-11 17:57:41 | 般若心経

【般若心経その1】

あるきっかけがあって、般若心経に興味を持ったので

本を読んでみたら、いろんなことを学ぶことができたので、

学んだことをこれから数回にわけて紹介します。

 

第1回は、全文と読み方です。

般若心経の唱え方を練習するには、下のサイトが

よさそうな感じがします。

【十回復唱】般若心経・癒し 瞑想 暗記 作業などに

読経のすすめ:3分54秒(般若心経のみをお唱え致します。)

 

「仏説 摩訶般若波羅蜜多心経」

ぶっせつ  まかはんにゃはらみつたしんぎょう

*****

観自在菩薩 かんじざいぼさつ

行深般若波羅蜜多時 ぎょうじんはんにゃはらみたじ

照見五蘊皆空 しょうけんごうんかいくう

度一切苦厄 どいっさいくやく

*****

舎利子 しゃりし

色不異空 空不異色 しきふいくう くうふいしき

色即是空 空即是色 しきそくぜくう くうそくぜしき

受想行識 亦復如是 じゅそうぎょうしき やくぶにょぜ

*****

舎利子 しゃりし 

是諸法空相 ぜしょほうくうそう 

不生不滅 不垢不浄 不増不減 ふしょうふめつ ふくふじょう ふぞうふげん

*****

是故空中無色 ぜこくうちゅうむしき

無受想行識 むじゅそうぎょうしき

無眼耳鼻舌身意 むげんにびぜつしんい

無色声香味触法 むしきしょうこうみそくほう

無眼界乃至無意識界 むげんかいないしむいしきかい

*****

無無明 むむみょう

亦無無明尽 やくむむみょうじん

乃至無老死 ないしむろうし

亦無老死尽 やくむろうしじん

無苦集滅道 むくしゅうめつどう

無智亦無得 むちゃくむとく

*****

以無所得故 いむしょとくこ

菩提薩埵 依般若波羅蜜多故 ぼだいさった えはんにゃはらみったこ

心無罜礙 無罜礙故 しんむけいげ むけいげこ

無有恐怖 遠離一切顛倒夢想 むうくふ おんりいっさいでんどうむそう

究竟涅槃 くぎょうねはん

*****

三世諸仏 さんぜしょぶつ

依般若波羅蜜多故 えはんにゃはらみったこ

得阿耨多羅三藐三菩提 とくあのくたらさんみゃくさんぼだい

*****

故知般若波羅蜜多 こちはんにゃはらみった

是大神呪 是大明呪 ぜだいじんしゅ ぜだいみょうしゅ

是無上呪 是無等等呪 ぜむじょうしゅ ぜむとうどうしゅ

能除一切苦 のうじょいっさいく

真実不虚 しんじつふこ

*****

故説般若波羅蜜多呪 こせつはんにゃはらみったしゅ

即説呪曰 そくせつしゅわつ

羯諦羯諦波羅羯諦 ぎゃていぎゃていはらぎゃてい

波羅僧羯諦 はらそうぎゃてい

菩提薩婆訶 ぼじそわか

般若心経 はんにゃしんぎょう

*****

 

(その2に続く)