ビロウな話で恐縮です日記

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ひさびさに読書報告

2012年02月21日 06時33分08秒 | 読書
過日のキノベスイベントにいらしていただいたみなさま、
どうもありがとうございました。
その際、「日記の更新はしないんかい、ごるぁ」「おすすめBLとかないんかい、おるぁ」(うそです。みなさまとても紳士淑女的に、吾輩のプレッシャーにならぬようにと気づかってくださいながら、もっと遠回しな口調をなさいました。不甲斐ないことで、本当に面目なし!)というご下問がいくつかあったため、いっちょひさびさに読書報告(BL漫画限定)をしようかと思い立ちました。

あいかわらず、ものすごく(BL漫画を)読んではいる。あまり自慢できることではないが、洗濯とか掃除とかをそっちのけにしてまで読んでいる。締め切りもしばしばそっちのけ。締め切りこなせず腹切りの危機だ。
しかしですね、意識を透過しちゃう作品が多いのも残念ながら事実で、一冊を読み終えた感想が、「あれ、いま私、寝てたのかな」だったこともある(つまり、あまりにつまらな……げふげふ)。そしてそういう作品にかぎって、二冊も三冊も買ってしまうのですよ!(意識を透過しちゃうので、すでに買って読んだことすら忘れてしまう) タイトルを見ても内容を思い出せないBL漫画が複数冊ずつ並んでる本棚を見ると、負の遺産を無理やり相続させられたみたいに絶望的な気分になるですだよ!
だけど私、最近悟りをひらきました。私は、私を通り抜けた、ていうか、透過した男たち(もとい、BL漫画)すべてを愛そう、と。噛んでも噛んでも味わいが出ないスルメで、「なんだこりゃ、ゴムか!」って思ったとしても、それは私の噛みかたがたりなかったか、まちがっていたかなのだ。またべつのたとえをすれば、人間(ひいては、人間が生みだした漫画)を憎むよりは愛する道を選びたいと念じて生きているのではないか自分よ、ということなのだ。なんかだんだん壮大というよりは壮絶な覚悟になってきたが、とにかく、漫画読者道に捧げた身であるからには、どんなに意識透過性の高いBL漫画に出くわそうとも、粛々と受け止める努力をしよう。そういう境地に至ったのである。努力云々では受け止められないほどつまらな(げふげふ)から、意識を透過しちゃうわけなんですけども。もはや宗教的試練に近い境地なんじゃないか、これは。と思うことも多々ある。

だが、(漫画の)神は決して、我々をお見捨てにはならない!
なんだかんだ言っても、おもしろい作品が月に何冊もあるのだから、やっぱりすごいよなBL……。
この一週間ほどに読んだ新作のなかだけで選んでも、以下の三冊を私はおもしろいと感じました。同好の士のご参考になれば幸いです。趣味がちがったら、ごめんちゃいだ。

『イベリコ豚と恋と椿。』(SHOOWA・海王社)。
すごく待ちわびていたSHOOWA氏の新刊。高校生(ヤンキー風味)の話なんだが、いつの時代のどこの街なのかちょっとよくわからない、不思議な浮遊感がある。そのわからなさこそが、まごうことなき「現在」感を醸しだしてもいる(どの街へ行っても、ほとんど差異のない風景が広がっており、しかしひとの営みがそこからたしかに感じられもする、という現在を反映している、とでも言おうか)。一見粗いようでいて、その実ものすごく的確な描線も、人物が帯びる絶妙の色気も、大変好みだ。私はむろん、源路(年下攻・無口)が好きだ。いつも立ててる彼の前髪が自室で下りてた瞬間、私のなかでなにか(主に理性など)がはじけた。かなうことなら、かっこよくて腕っぷしの強い男子高校生に三日ほど生まれ変わりたい。かっこよくて腕っぷしの強い男子高校生は、いろいろ大変なことも多かろうと思うので、三日でいい。頼む、(漫画の)神よ! できれば試験期間中に生まれ変わるのは避けさせてください。あ、でも、かっこよくて腕っぷしの強い男子高校生は、試験の出来不出来など露ほども気にせぬのかもしれんな。
自身の問題の根っこが見えた。もう、実際的に生まれ変われるか否かはどうでもいい。(漫画の)神よ、試験や締め切りといったちっちゃなこと(?)を気にしない、かっこよくて腕っぷしの強い男子高校生的精神を我に宿らせたまえ……!

『ご主人さまペロペロ』(吉池マスコ・オークラ出版)。
不穏なタイトルだが、大丈夫だ(たぶん)。あまりにもBLを読みすぎたので、自分の大丈夫の基準が本当に大丈夫なのか、やや不安だが。吉池マスコ氏は、安定した漫画文法と独特の話法を擁した実力派だ。今作も非常におもしろく、犬、猫、うさぎがなぜか人間になってしまい、それぞれの飼い主と恋愛模様を繰り広げる。
と書くと、同じく実力派の田中鈴木『like a dog,as a dog』(幻冬舎)という名作を思い出すかたもいらっしゃるかもしれないが、切ない面も打ちだされた『like a dog~』に比べ、『ご主人さまペロペロ』は断然コメディ寄りだ。しかし、登場人物(元犬、元猫、元うさぎ含め)の性格は、きっちりと描写されている。実力派はなにを描いても、各自の持ち味を活かし、独自の名作を紡ぐものなのだなと改めてシャッポを脱ぐ。あ、もちろん、吉池マスコ氏はコメディばかりではなく切ない話も描いているし、田中鈴木氏にもコメディタッチの作品がある。実力派は、なんでも描けるということか……! ぎりぎりぎり(歯ぎしり)。(文章の)神よ……、と祈ろうとしたが、祈ったところでどうにもならぬと重々わかっているので、やめておこう。ぐすんぐすん。
さて、「なぜか」人間になってしまい、と書いた。犬のバッハと、猫のミー子(雄)は、それぞれのご主人さまの生命の危機を救わんと人間に変化したのだが、うさぎのきなこ(雄)は、ご主人さまが女性とエッチするのに嫉妬して人間に変化したのである。大胆な法則無視……! なんやねん、どうなっとるねん、この世界は! と、思わず妙な関西弁でツッコミを入れてしまった。いや、おもしろいので、法則などあってなきがごとしであっても、全然無問題だ。強い思いが変化を促すということだ、うん。
私はむろん、元犬のバッハ(攻?・ちょいアホ・一途)が好きだ。彼が得体の知れぬ「もやもや」を古いスリッパにぶつけるシーンでは、私のなかでなにか(主に萌えゲージなど)がはじけた。あと、犬時代の彼が、散歩途中でウン○をしながら、「今日はちょっと硬……」といきむシーンでは、「犬ってたしかに、用を足すとき、こういうこと考えてそうな顔してるよな」と笑った。各動物の特徴をすごくうまくとらえてるところも、いいなと思う理由だ。

『上司のくせに生意気だ』(天城れの・海王社)。
帯に「ドS新人×嫌われ上司…W眼鏡の公僕ラブ!」と謳われているとおり、よくあるといえばよくある設定の作品だ(こういう設定がよくあるのかBLは、と問われたら、「ええまあ……」ともごもご言って視線をそらすしかないのだが)。しかし、ありそうな設定のなかにも、なんか妙な部分を混入させてくるのが、天城れの氏の持ち味でありいいところだ。今作では、主人公二人は桃穴市の市役所に勤めている(市の名前を決めた当時の市長や市議会議員や市民は、いったいなにを考えていたのであろうか)。市役所で「ゆるキャラ」を作ることになり、「ももあ~な」というキャラクターが生みだされた。このキャラクターが「ゆるキャラ」の名に恥じぬ傑作な形状をしているのだ(桃の形にリボンと目と口がついていて、口は「米」型)。強いていえば、「桃形×(キ○ィちゃん+ミッ○ィー)÷2+ひと目に触れてはならぬ部分」といった感じで、かわいいんだか気持ち悪いんだか……。「ももあ~な」の形状を活かしたグッズもさまざまに考案され、特にウエットティッシュとなった「ももあ~な」を見た瞬間、私のなかでなにか(主に物欲など)がはじけた。「ももあ~な」の口(というか、尻穴)から出てくる、ウエットティッシュ! ウエットティッシュにさしたる思い入れもない身であるが、これは買わねばならんと本能が告げている。いますぐ桃穴市に走らなければ……! てなわけで、ちりばめられた「ももあ~な」グッズを眺めるだけでも楽しいです(もちろん、お話も楽しいです)。細かい部分まで手抜きせず、丁寧に作品と向きあっている作者の姿勢がうかがわれて、好感度大だ。

結論として、やっぱり漫画読者道に邁進して悔いなし、だ!