アラブ首長国連邦を筆頭に、中東には実にたくさんの人々が出稼ぎに来ている。
ドバイにはたくさんのインド人やパキスタン人。イラン人もいるらしいし、アブダビにはインド人はもちろん、フィリピン人も多いらしい。サウジアラビアにもたくさんのインド人、フィリピン人、レバノンにだってフィリピン人やアフリカ諸国からもたくさんの人たちが出稼ぎに来ている。
となると私もその1人になるのかどうか…その位置づけはいまいちよく分からないけど。(だって選択肢があった上で自分の意思で来てるから)
以前アルジェリアで踊っていた時に、同じホテルで働くマネージャークラスのインド人のおじさんが私に言った。日本人は海外に出稼ぎに出る必要はないから。なるほどそうか、とやけに納得したことを思い出す。
さて、これは前回例の靴を探しに出かけたある日のこと。
Al Mawal Restaurantがあり、私も滞在しているヒルトン・アブダビから一番近いショッピングモールに、マリーナ・モールというところがある。1キロぐらいの道のりなのだけれど、時間帯によっては暑さと湿気で歩くのが困難に感じることも。
そこでの買い物が終わってさて帰ろうと思った私は、ホテルのコンシェルジュの人たちが、ホテルとマリーナ・モール間を行き来しているシャトルバスのことを話していたことを思い出す。そのときもらった時刻表を片手に、時間帯もちょうど良く、シャトルバスに乗ることに決める。
が、モールに来るときはタクシーを使ったので(3ディルハム=100円ぐらい)、バスの乗り場が分からない。モールの案内所で聞くも、その人たちもどうやら知らないらしい。
弱ったな。最悪タクシーに乗って帰ればいいのだけど、なんだか意地でもシャトルバスに乗りたくなった。
そこで私はそれらしきバスの運転手にちょっと聞いてみる。ちなみに彼はインド人。
これ、ヒルトンのバス?・・・ではないよね?と。
するとそのおじさん、私の行き先を詳しく聞き(ヒルトンはアブダビに3つあるから)ヒルトンアブダビなら乗せていってあげると言う。もっと聞いてみると、そのバスは豪華客船のお客さんを、港から観光名所やショッピングモールに連れていく用途らしく、そうこうしているうちにも人がどんどん乗ってくる。
結局私は助手席に陣取り、ヒッチハイク成功。
短い道のりの間、何の疑問も持たずにおじさんと電話番号を交換する。
というのもおじさん、今後どこかでタクシーが捕まらなかったりしたら電話していいよ、とのこと。仕事中じゃなければ迎えに行ってあげるから、と。それはラッキーと思うのは一般的な考え方ではないのかも、と思ったのはそれから5日ほど経ってから。
インド人のおじさんに会ったその日から数日後、アブダビの別のレストランで踊るブラジル人ダンサーの友達と町をほっつきまわった後、タクシーを捕まえようと思うが、午後7時、空のタクシーが一台も見つからない。見つかってもメーターを使おうとしないぼったくりタクシーばかり。
私達だって仕事がなければ、じゃあご飯を食べてお茶でもした後にまたタクシーの運を試そうか、ってな具合になるのだけれど、我々の仕事は皆の夕食時にフル稼働。食事なんかしてタクシーを待ってる場合じゃないのだから。
他の手立てがなく、仕方なく思い立った私はそのおじさんに電話をしてみる。
場所を教えるとおじさん、快く来てくれた。おじさんの運転するそのマイクロバスに2人乗り込み、まずは友達をお家へ、そして私はヒルトンへ連れて行ってもらう。
友達を降ろしてバスを運転するおじさんと2人きりになった時、少しだけれど不安がよぎる。
しまった。考えてなかったけど、大丈夫だよね・・・。
渋滞のひどいアブダビの夜、バスを運転するおじさん、会話の中で日本についてあらゆる話を聞いてくる。日本にインド人は多いかどうか。自分が日本に行ったら私に保証人になってくれるかどうか。
・・・。
結局そこなのね。
決しておじさん、悪い人じゃないのだけど、そこからの話は当たり障りのないようそっち系の話題には触れないよう流しまくる長い帰り道。
ホテルで降りる間際、おじさんの手に、気前良い額のお金を渡す。私に出来るのはこれくらいのことだから。
怖いもの知らずの性格、私は一体いくつになったら学ぶんだろう。
良い人なんだけど、でももうおじさんには電話しないだろうな。。。と思う。