ちょっとずつではありますが、書く元気が出てきたのでここでひとつ。
これはまだ私がアルジェリアにいた頃の話。
アラビア語を教えてもらっていた地元のアルジェリア人の彼女は、どんなに辛いことがあっても陽気で好奇心旺盛の女性サヒーラ(仮名)。ある日私は彼女と一緒に買い物に出かけた。
私にアラビア語を教えてくれるときに、彼女のお家に行くとすぐにいつもの勉強部屋に通してくれる。
「マリコ、ここの机に座って。良い子にしてるのよ。すぐ戻ってくるから。」
と、息子(13歳)が使用していると思しき机に座らされ、私は小学生かいな?と毎回勘違いしてしまう衝動に駆られる。
さてその日レッスンを終えた私たちは、彼女のお家から程近いスーク(マーケット)に買い物に行ったのだが、さすがアルジェリア、ここでもまた面白いことに遭遇する。
裁縫も出来る彼女と、衣装の手直しを手伝ってもらっていた私は、必要な裁縫用具の探し物をしてお店を見て回ることになる。すると不思議や不思議、アルジェリアでもさすがにマーケットだからか、予想外にどんどん必要なものが見つかってくる。
何がきっかけでの癖なのか、大都会の東京でもいつも所持金は数えられるほどしか持ってない私。アルジェリアでもそんなにお金を持ち歩くことがないのは、例外ではなかったその日。そんな日に限って今日買っておかねば!という必需品を端から買っていっていると、今度は所持金が少なくなってきた。
アルジェリアのお店(もしくは一般的にイスラム教国ではその光景が当たり前なのだろう)の店番は、どんなお店でも大体は男性なのである。
生地のお店、文房具を売っているお店、行く先々で店主と話し込んでは笑顔を武器に、値引きして品物を購入していくサヒーラ(って私の頼んでる買い物ですが)。
そしてある1軒のお店で立ち止まった私たち。衣装関係で使用するブラを探すことにはなっていたその日、もう見つからないかもと半ば諦めかけだったところに出くわしたその1軒、いやその1ブラ。2人でひそひそとこういうのが必要だよねって話をするも、店員はもちろん男性。
しかも所持金はもうほとんど無に等しい。
すると何やらそのお店の兄ちゃんと何だか親しそうに会を始めるサヒーラ。近所だし、顔見知りなのかな、と思ってその場をプラプラする私。
しばらくすると満面の笑みでサヒーラ、私に一言こういう。
「マリコー。品物を持っていきなってお兄ちゃん言ってくれたよー。」
いや、でももうお金足りないってば。
事情を聞くとお店の兄さん
「あー。いいよいいよー持っていきなよー。お代は後でいいからさ」
って。
聞くところによるとサヒーラ、別にお店のお兄ちゃんと全然知り合いでも何でもないみたい。
「お代は後でいいよ」って・・・。
もちろん私は誇れる(?)日本人。サヒーラだってとても信頼の出来るしっかりしたお人。物を持ち帰っちゃ品物の代金を払わねぇなんてこった、絶対に犯さねーがお前さん、いいのか商売そんなんで?
中国製であろう激安でアルジェリアのスークに売ってあるブラ1つ購入する金も持ち合わせない日本人といい、赤の他人を頭から信用している下着屋の兄ちゃんといい。世の中これで回ってるところもあるんだーねぇ、このご時勢。
ちょっと良心は迷ったけれど、私も騙すつもりはほとほとなかったのでお言葉に甘えてその日は品物を持って帰らさせていただきましたよ。
アルジェリアって、ある意味とっても平和で純朴な人たちが多い国だと再認識。
彼らが海外に出かけたときって、騙されちゃうんじゃないかいな、と、お姉さんは心配だ。
ちなみにバンクーバー冬季オリンピック、アルジェリア人代表、1人いるのはご存知ですか(ちと意外だが)。サッカーのアフリカカップでも4強に残ったみたいだし、何か理解不能な可能性を秘めたところであるのも満更ではないかも?
誤解のないようお知らせまでに、ブラのお代は、後日、サヒーラに頼んで払いに行ってもらいました。