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The Fall -落下の王国-(06) 映像の魔術師 ターセム・シン監督が織りなすお伽話 (前編)

2011年02月25日 | 映画・ドラマ
 ブルーレイを買った最初の作品はMJの『This Is It』ですが、ブルーレイ機器を購入したら、最初に買おうと思っていた映画がこの『The Fall』でした。それはとてもアーティスティックでとても美しい作品だからです。ワンカット、ワンカットがアートです。
 この作品は、インド出身のターセムによる作品。初監督のハリウッド作品は、ジェニファー・ロペス主演のサイコサスペンス映画『ザ・セル』(00)でした。あの作品の映像美、人の精神世界を映像化した世界観に魅了されました。(けっこうえぐいシーンもありましたが。アーティスティックなエグさ?でした。)
 そしてこの『The Fall』ははターセム入魂の作品のように思います。
 構想26年、そして撮影に4年をかける。ターセムは、music video監督、CM監督からこの業界に入ったようで、仕事で世界各地を巡りながら自分のイメージにあうロケ地を探していたといいます。さらにこの作品の主人公である少年or少女に出会うまで7年かかったと。ターセムのイメージどおりの少女がこのティアンカ(ルーマニア)。正直なとこ、美少女!って感じではないですがめちゃ愛嬌がある。この女の子なしでこの物語は成立しません。



 CG全盛の時代で、ほんの一部の処理でCGを使っているようですが、ほぼオールロケ。そしてその舞台となるのが世界遺産を中心とした世界各地の美しく、神秘的な場所。世界遺産ですから、ロケーションは素晴らしいに決まっている。しかし、ただそこで撮ればいいと安易な話ではありません。これらの場所と物語を見事に融合させているとこにターセム監督の凄さを感じます。



 そしてこの作品のもうひとつの重要な要素は、衣装デザインを担当した石岡瑛子女史。日本が世界に誇るデザイナー。(フランシスコ・コッポラ監督の『ドラキュラ』でアカデミー受賞)北京オリンピックの衣装も担当した。あの開会式は相当素晴らしかった。石岡氏自身も、自分を起用するのはある意味リスキーだということもいっています。そのデザインは、圧倒的なCreativeさをほこりますが、それが強烈しすぎて作品から浮いてしまう怖さがあると。しかし、ターセム氏と石岡氏の相性は抜群です。『ザ・セル』でもターセルワールドと石岡ワールドは溶け込んでいました。そしてこの作品でも素晴らしい世界観を生み出している。



 石岡氏を起用するには、普通ならかなりのギャラがかかると思うのですが、石岡氏は、金は二の次で、ターセム監督の熱意と、作品のコンセプトに共鳴して参加したと。めっちゃおっとこまえ!女性の年齢をオープンにするのもなんですが、おいくつかなと思ったら1939年生まれじゃないですかぁ。このCreativeさは何???すごい!こないだもちょうどNHKで石岡氏の特集があり、舞台『スパイダーマン』の衣装担当をしてまたまた腕をふるっていた。この方がSpecialなのかもしれませんが、脳ってその気になれば認知症など無縁なのかも。意欲と努力が大事なのか。にしてもこの枯れることのない創造力の源は何なのだろう。
 この作品は、多分赤字だと思います。通常の映画制作で、4年もかけるというのはかなりの非効率。周囲の理解と忍耐なしでは成立しないでしょう。ターセム自身の私財も投じたといいます。もうちょっとプロモーションに金をかけたらよかったかもしれませんが。ただ儲けるために制作したという気もしません。ターセム監督も、自身の魂の作品に一人でも多くの人に感じるものをもってもらえたらというのが願いのように思います。
 そして起用された俳優陣も素晴らしい。Storyは、きかせ物語です。それは病院の中で始まります。そこに入院している夢破れた青年(リー・ペイス)とその彼を慕って病室にやってくる少女(ティアンカ)にきかせる“おとぎ話”です。



 そして彼の話す物語が映像化され進行していきます。その物語は、実は手段なのです。彼は、ある物を手に入れるために少女に物語をきかせ気を引き、利用しようとしているのです。少女はそのことを知りません。夢中で彼の物語を聞きます。小さい娘に話すので童話のようにも思えますが、子供向けの童話ではありません。そして物語と現実がクロスしていくのです。
 この作品に起用された前述のほぼ無名の2人が素晴らしい。この少女の演技には実はすごい隠し事があります。そこは作品の、監督インタビューなどを見てください。私も驚きました。それをわかった上でもう一度この作品を見るとまたちがった視点で見れます。
 最初に述べましたが、とてもアーティスティック。オープニングから素晴らしいです。主人公の青年の映画の撮影でのスタントシーンの事故シーンから始まりますが、モノクロ画面でベートーヴェンの交響曲第7番の第2楽章Allegretto(不滅のアレグレット)が静かに流れだします。(ニコラス・ケイジ主演のSF映画『ノウイング』でも使われていた)ベートーヴェンの曲ってあまり好みのクラシックではないのですが、この曲は気に入りました。
 後編は、物語の舞台となったロケ地を紹介したいと思います。ひとつでも行ってみたい!

 
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