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名盤 『Faith』とその後のジョージ・マイケル 

2011年04月27日 | お気に入りアルバム
 09年6月にFavアルバムの紹介で、一度ジョージ・マイケルの『Faith』をUpしていましたが、待望のリマスター盤を含むSpecial Editionが発売されましたのでまた『Faith』とジョージ・マイケルについて語りたいと思います。
時代は曲単位のダウンロードの時代なのかもしれませんが、やはり音楽はアルバムという言葉に象徴されるように、アルバムをじっくり聞くのが楽しい。そういうコンセプトをもったCDアルバムが減ってきたのでCDの購入も減少しているのかもしれません。80年代は、そんな魅力的なアルバムが多かった。
 その1枚が、ジョージ・マイケルの『Faith』です。87年10月に発表されています。87年という年は、統一感のあるコンセプト的なすばらしいアルバムが多く発表された。
 87年のグラミー賞のアルバム部門は激戦です。

〈 87年度最優秀アルバムノミネート >

ヨシュア・トゥリー       / U2
BAD               / マイケル・ジャクソン
サイン・オブ・ザ・タイムズ  / Prince
ホイットニー2       / ホイットニー・ヒューストン
トリオ            / ドリー・パートン、リンダ・ロンシュタット&エミル―・ハリス

 『トリオ』はカントリー系のアルバムなのでおさえていませんが、他の4枚はリアルタイムに購入しました。受賞はU2です。たしかに『The Joshua Tree』は、ブライアン・イーノとU2が組み独特の色をもったコンセプトもしっかりとした素晴らしいアルバム。個人的には、超CreativeなんだけどPOPなプリンスにとってほしかった。『BAD』は、魅力的なキャッチーな曲は満載ですが、ちょっとアート性が低い気がする。Whitney2もPOPすぎるかな。Whitneyは1stの方が断然Creativeでいい。
 87年発売のジョージの『Faith』が、ここにノミネートされていないのは、グラミーの年度の区切りが10月だからです(87年度は、86年10月-87年9月の期間に発表された作品が対象になります)。ですから『Faith』は翌年の88年度のノミネートになり、この年も混戦ですが(87年ほどではない)見事に最優秀アルバムを受賞しています。同じEpicに所属したマイケル・ジャクソンとかぶらない様に翌年にしたのかもしれませんが、それで正解だったと思います。87年度にノミネートされていたら受賞できなかったかもしれません。いや87年度でも、MJ、プリンス、U2を抑えて受賞していたかもしれません。それほど質の高い作品が『Faith』です。
 マイケル・ジャクソンは、黒人アーティストでありながら、R&Bの枠を超えて、ロック、ポップでも受け入れられた。それがKing Of Popと呼ばれる所以。一方、ジョージ・マイケルはワム時代から白人アイドルとして人気を博した。ビジュアルもよかったし、やはりジョージ・マイケルのライターとしての才能が半端じゃなかった。
 しかし、彼はブラックミュージック(R&B、ソウル、ゴスペル)を心から愛していた。このジョージのソロデビュー作『Faith』は、その溢れんばかりの思いも感じます。そしてそれがR&Bチャートでも受け入れられた。「One More Try」はシングルでもR&Bで1位を獲得。アルバムも白人ソロアーティストとして、初めて1位を獲得します。白人層がマイケル・ジャクソンの「Beat It」を受け入れたように、ジョージのソウルも黒人層の心をつかんだ。(こうして書くと西寺郷太氏のライナーノーツとかぶるな~。まーそんな斬新な事を述べてるわけではなく、普通にみたら誰もがそう思う)
 さらに、88年のアメリカン・ミュージック・アワードでは、『BAD』のシングルヒットが続くマイケル・ジャクソン、それから『Don’t Be Cruel』で大ブレイクしたボビー・ブラウンというブラックスーパースターを抑えてジョージが最優秀R&B男性アーティストと、最優秀R&Bアルバムを受賞している。R&Bをリスペクトしている彼は、「どんな賞よりもうれしい」ってスピーチしていました。まさに彼もKing Of Popと呼ばれるにふさわしい。
 87年に発表された、マイケル・ジャクソンの『BAD』→ワル、ジョージ・マイケル『Faith』→誠実→いい子とアルバムのタイトルも対照的と言われていた。もともとジョージのアルバムは『Kissing A Fool』というタイトルだったようなのですが、最終的に『Faith』に変わっています。この辺もレコード会社の戦略なのかもしれません。
 チャート的にも、MJの『BAD』は1枚のアルバムから5枚のビルボード1位を獲得した唯一のアルバムですが、『Faith』もそれにせまる勢いでした。

I Want Your Sex   2位
Faith       1位
Father Figure   1位
One More Try    1位
Monkey       1位
Kissing A Fool   5位

 ワムは、ジョージ・マイケルとアンドリュー・リッジリーのコンビで結成され、83年にデビュー。

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 その抜群のPOPさと2人のビジュアルでアイドル的なイメージが一般的だったと思います。「ラスト・クリスマス」や「ケアレス・ウィスパー」(本人的には失敗曲らしいですが)などは日本でも受けたキャッチーさ。そんなアイドルイメージが強かったので、ジョージ・マイケルがシンガーソングライターというのは見落としがちです。彼は3拍子揃ってる。曲がいい。サウンドがいい。ボーカルがいい。ワムは2人組でしたが、実質、ジョージ・マイケルの才能で成り立っていた。アンドリュー・リッジリーはオマケみたいな言い方がよくされていました。ジョージ的には、アンドリューの存在はすごく大きかったそうですが。やはり二人のビジュアルというかバランスはいい。



 ワム、というかジョージ・マイケルは、85年にすでに頂点を極めています。85年のビルボード年間1位の「ケアレス・ウィスパー」はワム Featuring George MIchaelですから。3位もワムの「ウキウキ・ウェイク・ミー・アップ」です。ワムの活動も頂点を迎え、ジョージも大人のアーティストへと変化する時期がきたのは必然です。
 ソロアルバム制作に際して、ジョージは若者だけでなく、いわゆる大人のリスナーもとりこむアルバムを製作します。トラックもジョージ自身で作り上げていきます。この辺は、プリンスの『サイン・オブ・ザ・タイムズ』の感触にも似てる。マイケル・ジャクソン的にこの感触を感じるのは95年の『HISTORY』。
 そういう意味では、当時話題となった「I Want Your Sex」がアイドルのイメージを払拭し、アーティストとして見るようになったきっかけにはなったようです。マイケル・ジャクソンも、それまでの優等生的なイメージから、あえて『BAD』というアルバムで悪ぶり、あらたなスタイルを図った。
 以前にも『Faith』は[お気に入りアルバム]のとこで語ったので、細かいとこは言及しませんが、デジタルリマスターを待ち望んでいたのでうれしいです。Special Editionということで前回紹介した、ジャム&ルイスによる「Monkey」のレアなExtended Remixも収録されていて文句なしです。「Kissng A Fool」のインストもひそかにいい。

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 おれ的には一生モンの曲「Father Figure」も元々録音はよかったですが、さらにシンセの音がクリアになっています。「One More Try」はさらにシンセの重なりの深さがわかる。一番メリハリの良さを感じたのが7曲目の「Look At Your Hands」。エンディングを「Last Request」(I Want YourSex Part3)でしめるもいい。この手法ってちょっとジャム&ルイス風。ミディアムやバラードは抜群の出来です。『Faith』の弱点をいえば、ダンスTrack。そこをジョージ自身もわかっているから、Jam&LewisにRemixを依頼した。その辺の視点もさすがです。
 本来『Faith』は、全10曲です。日本で発売された『Faith』は、9曲目の「Kising A Fool」と10曲目ラストの「A Last Request」の間に、おまけなんでしょうが、アルバムの流れとは関係ない「Hard Day」のRemixが入ってて流れを台無しにしています。(ほんと日本のレコード会社、たまにこういうセンスのない事するんだよな)今回のRemasterバージョンは本来の『Faith』の10曲です。今回の発売にあたって、8曲目の「Monkey」は、Jam&Lewisのバージョンに差し替えてもよかったなのにと思いましたが、ジョージ的には満足できなかった仕上がりでも自分の作ったTrackに愛着があるのかもしれません。ただここにJam&Lewis Proの「Monkey」を入れ、アルバムを聴くとさらなる完成度の高さを感じます。
 アルバムから、先に登場したのが前述の「I Want Your Sex」。あえて大胆なこの曲をもってきたのも、これまでのイメージからの脱却の意味合いもあったのでしょう。大胆なリリックとテーマで論争を引き起こします。歌詞でセックスを連発。それが影響して、英国では放送禁止、シングルのセールスだけ見ると1位でしたが(ミリオンシングルだし)エアープレイが少ないのが影響して2位どまりとなります。
 今回のSpecial Editionには、当時を振り返るジョージのインタビューもあってこれもかなり興味深い。「I Want Your Sex」は確信犯的な作品だったと。さらに「セックスしようぜ!」みたいなノリでうけもねらっていたと。けっこうふざけてた部分もあったんだな~。
 ジョージ的には、ここまで批判されるとは思わなかったみたいですが。英国はジェントルマンの国ですから。Princeがこういう曲を歌ってももうそういうキャラがしみこんでるから違和感ないけど、この前までアイドルだったジョージが、セックス推奨ソングみたいなのを歌ってたのはインパクトあった。当時は、「これはけっしてセックスを軽々しく歌ったものではない。セックスはMake Love、愛を確かめあう行為、自然な事だ」って感じの事も言ってたくせに。シーンの反応は、ジョージの受け狙いを超えたものだった感じ。まーどっちにしろこんなにセックス連発してる曲も知らんわ。あと、サウンド的にはプリンスの影響をモロにうけた曲という告白も驚いた。
 さらに『ビバリーヒルズコップ2』のサントラに収録という形式もとられます。これはジョージ的には、かなりの妥協だったようです。ある意味屈辱的な思いももった感じ。そして今後、自分の信念に沿わないことなら妥協することはやめようという思いを持つことになったといいます。
 『Faith』は88年度を制します。アルバムチャートでも年間1位。シングル「Faith」も年間1位。そしてグラミーの最優秀アルバムも受賞。『Faith』は世界的に1,500万枚のセールスを記録します。
 この後、ジョージは、アーティストしての創造性と、レコード会社の商業性の衝突の中で苦境にたたされます。プリンスや、MJもそうだけど天才アーティストはやっぱその辺でレコード会社と衝突しますよね。
 
LISTEN WITHOUT PREJUDICE Volume One
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 90年、2ndアルバム『Listen Without Prejudice Vol1』が発表されます。世界は『Faith』part2的な感じを期待していたと思うのですが、よりアーティスト性を高めたアコ―スティックな作品。名盤だと思いますが、『Faith』の感触はない。自分の音楽のみで勝負したいために、シングルでPVに出演しない方針等がレコード会社と衝突します(Praying For Timeは1位に輝きますが)。2ndが『Faith』に遠く及ばないセールスを記録するとエピックはジョージを非難し、ジョージも自分の信念を曲げなかった。両者の争いは法廷に持ち込まれ、泥沼化。長い裁判にも発展していった。この期間も、ジョージにとっては損失だったと思う。実際、今もUSAにおいてはジョージ・マイケルのプロモーションは積極的にされていない感じです。
 ジョージ・マイケルは、『Faith』の後、どこまで登りつめるのかと思いましたが、正直、『Faith』をこえる作品はない。その後出ている3枚のアルバムももちろん完成度は高いですが、『Faith』ほどの輝きがない。ボーカルも『Faith』の頃が最高。力強いし、ソフトさもある。そしてソウル。ジョージ自身も『Faith』時のボーカルは最高の状態だったと言い切っています。ゲイモードが高くなってから、なんか力強さがなくなったんだよな~。言われてみると96年の3rd『Older』のジャケってゲイっぽい。
 
オールダー
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 エピックソニーとの裁判も、最終的にはジョージの負けとなりますが、和解が成立し音楽活動が再開され『Older』を発表。このアルバムからの先行シングル、「Jesus To A Child」は美しいバラードですが、亡き友人、愛した友人の追悼曲でした。この曲で、ジョージがゲイだったと知るのです。彼が、ゲイと知ってショックでした。それで彼の音楽が嫌いになる事はないのですが、彼のリリックとかがしっくりこなくなって。「One More Try」も年上の女性への想いが好きだったのに、ジョージは、アニキをイメージしていたのか?とか。ワムのアンドリューをお荷物と思わなかったのは好きだったからなのか?とか。ただドキュメンタリー映画『ジョージ・マイケル-素顔の告白-』を見る限りそんな関係は感じなかったので、彼とは純粋な友情かと。ジョージ、『Faith』の頃かっこよかった。めちゃもてたと思うけど。女性には全然興味なかったのか~とかいろいろ思うわけですよ。
  でも『Faith』の頃は、まだそんなにハードゲイではなかったのではと思います。普通に女性も好きだった気が。欧米でゲイが多いのって、女性が強いから、繊細な男性の方に癒される的な事を聞いたことがあります。ジョージも、なにかをきっかけに女性不信になりゲイに向かったのかも。前にもいいいましたが、愛があれば恋愛は自由でいいと思う。でもおれ感覚が普通だから、男と男ってのが気持ち悪くて。そういうおれも一時期、ゲイ疑惑があったのですが・・・20代のころ、おっさんにゲイバーに連れてかれたことあるし。普通にかっこいい兄ちゃんと爺さんがカップルだったのを見て衝撃を受けたことを覚えています。でもおもろい人ばっかりでかなり楽しかった。必死に「ぼくはノーマルですから」って言ったけど。
 『Older』は『Faith』とはちがう成熟したジョージ・マイケルのアーティスト性を感じる名盤だと思います。ただボーカルがソフトすぎるんですよね。もちろんうまいんですけど。おれの求めるボーカルではないんです。
 98年、公衆わいせつの現行犯(男性に対しての…ただ警察の囮捜査だったようなのですが)逮捕されるという事件がおきます。この辺から、音楽的なものではなくジョージの奇行が目立つNEWSを多く目にするようになる。

レディース・アンド・ジェントルマン...ザ・ベスト・オブ・ジョージ・マイケル
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 このアルバムはベスト盤で、新曲も収録されています。それがまたいい。スティーヴィー・ワンダーのカバー「As」でMary・J・ブライジとの共演、ProducerはBabyface。わいせつ事件を自虐的に歌にした「Outside」の出来もいい。
 ただこの頃から、ジョージ・マイケルの精神的な危うさを感じました。なんかインタビューを見てても躁鬱っぽい雰囲気感じるんですよね。
 
ペイシェンス
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ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル

 04年の4th『Patience』以来新作はとまっています。こないだも薬物事件でリアルに収監されていたようで、まだ精神的な不安定さを感じます。
 しかしジョージ・マイケルの才能は半端じゃない。『Faith』は20代の感性とボーカルで作った傑作。今、48歳となった、それこそどん底も味わったジョージ・マイケルが作る大人の感性も見たい。この『Faith』の再発を機に、再び彼のアーティスト魂が復活するのを願っています。



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