蓬 窓 閑 話

「休みのない海」を改題。初心に帰れで、
10年ほど前、gooブログを始めたときのタイトル。
蓬屋をもじったもの。

ローマの噴水

2019年07月10日 | 言葉の散歩道
  ローマの噴水    ボルゲーゼ
             リルケ

 古びた まるい大理石の水盤のなかから
 二つの皿が 一つは他の上に聳え
 上の皿から水が静かに流れ落ちる
 それを待ち受けている下の水は

 静かにつぶやいている上の水に 黙って
 言わば掌をまるめて杯にしたように
 そっと緑の苔と暗い底に映っている青空を
 未知のものであるかのように さし示す

 そして静かに その美しい皿のなかで
 なんの郷愁もなく 幾重にも波紋を描いて ひろがりながら
 ただ、時おり夢見てでもいるように 一滴ずつ

 垂れ下がっている苔を伝ってしたたり落ちる
 移ろってゆくその皿の姿をそっと
 下から微笑ませている最後の水鏡のうえに

       (堀口大學訳)

 ブロ友さんが、リルケの詩集を探したと仰ったので、私も探してみた。
 好きな詩の一つで、付箋が貼ってあった。
 リルケが見たであろうボルゲーゼの噴水の写真、ネットより借用。

      

 
 そこで、噴水の形から思い出したのが、トリクルダウンという言葉。
    
 無粋ながら、経済界で使われているようで、富裕層が富めば、滴は下へ降りていくはず。
 なのに、上部が内部留保でがっちりため込んでいるので、下へは降りてきていないというお話。